出発②
「準備は出来たか?」
食後、各々旅支度をし玄関に集合した。
空間魔法に荷物や食料を入れているので、見た目は手ぶらだ。
「うん、大丈夫。あ、依頼が来た時の為に人形に転送魔法かけといたよ。何年かは平気だと思う」
「わかった」
古城にいる人形達はカシムの魔力が尽きない限り動き続ける仕組みになっている。
これで行き違いという要らぬ誤解を受ける心配がなくなった。
念の為、古城には視認阻害魔法をかけておく。
しばらく帰らないとはいえ、留守を荒らされたらたまったもんじゃない。
大事な物にも念入りにかけた。
「では、行こう」
「うん!」
古城を背に二人は歩き出した。
少女は名残惜しげに後ろを振り返る。
ずっとここで暮らしてきた。
それなりに愛着もある。
(カシムを魔王にしたら帰ってくるからね)
リリアムは前を向き、少し先を歩く男に追いつく為小走りをした。
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森を抜け、現在人間領と魔族領の境目。
ちょうどいい原っぱがあるので、休憩がてら昼食を取る事にした。
人形に作らせたサンドイッチ。
彩り豊かな野菜や塩漬けの肉がふんだんに使われていて具沢山だ。
いつも美味しい料理を作ってくれるので、二人は空間魔法内に余る程入れてきた。
カシムのマントを敷物代わりにして座る。
境目だからか魔族領と比べると天気が良い。
涼しげな風が顔を撫でた。
「そういえば、これからどうするか決めているの?」
外だと食べながら喋っていても注意されない事を知っているので、この後について聞いてみた。
「人間や魔族は見つけ次第、半殺しにしようと思っている」
突然の物騒な発言に少女はゴホゴホとむせる。
近くにあったコップを手に取り、中身を口へ流し込む。
「は…はぁー?!何で半殺しにしようとか考えちゃったの??!!」
「皆、自分より強い者に憧れや尊敬を抱くものであろう?」
「確かにカシムみたいな悪魔族ならそうかもしれないけど、別の種族はそんな事されたら尊敬どころか戦になっちゃうよ」
「そ、そうなのか……」
心なしかしょんぼりして見える。
リリアムは小さく溜息をつき、肩をすくめた。
「じゃあ、まず人間領と魔族領、どっちから先に攻略しようか決めよっか」
「うむ。だが、両方の違いがわからない」
「これからわかりやすく説明するよ」
人間領はその名の通り人間しか住んでいない。
勉学に優れており、思いやりの心を持っている。
仲間意識も強い。
その反面、詐欺や誘拐などで金品を巻き上げる様なずる賢いところもある。
魔族領は人間以外の者が住んでおり、土地もその分広大である。
人魚や鳥人、獣人、悪魔等様々な人種が存在している。
一様に共通しているのは、力が全てだという事。
力といっても人種毎にその定義は違う。
自分が一番。
「………という感じなんだけど、どっちにする?」
説明を終え、首をコテンと傾げた。




