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強者≠勝者?勝者≒強者?

次の日の朝に対決ルールは発表された。


開催は本日より3日後の朝。

フォスター家の庭にて、対面でスタート。

武器は殺傷能力が排除されていれば何でも良い。


武器は赤い塗料をつけて使用する。

対戦時に相手に武器を介して赤い塗料をつければ勝ち。

ただし剣を振るなどして塗料の飛沫を当てる等の

実戦で実現できない方法は認めない。


パラはルールを確認後に家を出て行った。

秘密の訓練らしい。

兄二人もいないことからパラに付いたのだろう。


ヤンダムはソータの訓練に付き合った。

ソータのその行動に意外性を感じて、ヤンダムに問うた。


「やりたいようにすればいい、と思っている。

俺もやりたいようにするだけだ」

ヤンダムの素っ気ない回答を、なぜか面白いと納得できたソータは

次いでパラ対策をヤンダムに尋ねるた。


「策に気をつけろ」

彼は少し思案してからそう答えたが、ソータにしても

パラがただ向かってくるとは思っていなかった。


あっという間に時は流れて、対決の朝を迎えた。

会場である庭に立ちパラを待つソータ。

その周りにはヨウゼンらがも審判として立っている。


「おそくなりましたぁ」

パラが小走りにやってきた。

右手には槍を、左手には弓を持っている。


「あ、今日はこれは使いません」

パラは弓を壁に立てかけると、代わりに竹刀を取って背中にしばりつけた。

彼女はソータの正面に立つとゆっくりと槍を構えた。


槍といっても刃がないため、実際は棍のようなものでその先端は赤く染まっていた。

突きしか使わないということか?

ソータは疑問に思ったが、表情には出さずに竹刀を構えた。


「では始め」

ヨウゼンの声にパラが先に反応した。

ソータに向けて突きを連続で繰り出す。


兄二人と訓練したのだろう。

突きの形は様になっていた。


しかしもう慣れた。


ソータは一本調子な槍の繰り出しを完全に見切った。

胸元を狙って伸びた槍の先を左手で止めた。

左手一本だが、パラが押しても引いてもビクともしなかった。


このまま一気に近づいて、と考える間もなかった。

「はっ!」

パラは気合と共に槍にひねりを咥える。

槍はソータが握っている付近で、カチリと音を立てると

握っている部分をソータの手に残して分離した。


「いぃっ!」

ソータは自らの手に残った槍の一部を見て声を上げた。

よもやこんなギミックが施してあるとは。


少し短くなった槍でパラは再度突きを連続させる。

新しい先端も赤く染まっていて、当たれば印がつくように作られていた。


後ろに下がりながら何とか突きを受け流すソータ。


あんなギミックがある以上、握って止める訳にはいかない。

パラが突きばかりなのは、振り上げや振り下ろしでギミックを壊さない

ためでもあったのか。


ソータは突きを躱して下を潜り、竹刀で下から上に槍をはじき上げた。

その衝撃にパラは槍を手放してしまう。

今一度距離をつめようとするが、そこに更なる罠が襲う。


彼の左足が地面に引っ掛かりバランスを崩した。

落とし穴か!

というにはかなり小さいものだが、ソータの足を引っかけるには充分なものだった。


バランスを崩す彼の頭上にパラの竹刀が見えた。

彼女はソータが穴に嵌るや、槍を捨て背中から竹刀を抜いて振り下ろした。


このままでは当たる。

ソータは穴に嵌っていない右足に力を込めて、強引に起き上がる。

上から降り下ろされるパラの一撃を全身のばねで下から迎え撃つ。


パラの竹刀は手から離れて空を舞った。

彼女自身もその衝撃に負けて、たたらをふんで尻もちをついてしまった。


ソータは体勢を持ち直して、尻もちをついたパラの前に立ちふさがる。

その瞬間飛んでいった竹刀は彼女の後方に落ちた。


ソータはパラに竹刀を向ける。

パラは悲しげに微笑むとをソータに左手を差し出した。

ソータは一瞬だけヨウゼンの方に視線を向けた。

これで終了だと思い込んでしまった。


「あ、バカ」

ヤンダムは思わず声に出してしまった。

1対1でのよそ見など、どんな状況でも油断以外の何物でもない。


パラは左手を伸ばしたままで言った。

「ごめんね」


刹那、彼女の裾から飛び出すモノがあった。

それは違わずソータの額に当たる。

防ぐことも躱すこともできなかった。


ぽこんと間の抜けた音を立てて、ソータの額に当たったものは

小さい矢だった。

鏃の代わりに赤い塗料のついたハンコがついており、

ソータの額には見事な赤丸が付いた。


「・・・勝負あり」

ヨウゼンは憮然として結果を告げた。

その肩は震えていた。

どうやら笑いをこらえているようだ。


実際トウマは腹を抱えてわらっている。

「納得できません!こんなおもちゃで!」

その状況に怒り心頭なのはソータだ。

額にへばりついていた矢を地面に叩きつけると、

ヨウゼンに不平を唱えて近寄る。


ヤンダムがソータの前に立ちふさがった。

その目には怒りが宿っている。

「あれが毒矢なら、お前は死んでいた。

お前は負けるべくして負けたのだ」


「確かにお前はパラより強い。でも勝ったのはパラだ」

そう言うヨウゼンはもう笑っていなかった。


ソータは思わずパラを見た。

目が合い、パラはソータに笑顔を向けた。

申し訳なさそうで悲しげで、彼の知るいつもの笑顔とは全く違った。


ソータは堪えられず、その場から逃げ出した。

その姿を見てヨウゼンが微笑む。

「青春だねぇ」

「何をゆるいことを。あんなことでは困りますな」

ヤンダムが憮然と反論する。

笑いをこらえているのではなく、本当に不満そうだ。


「そこはねぇ。ま、餅は餅屋に任せるよ」

ヨウゼンは後を追うパラの後ろ姿を見ながら悠然と応えた。

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