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帰宅した少年が一人で暮らす一軒家のポストを確認すると、ガサガサとダイレクトメールとともに一通の白い封筒と木箱が入ってることに気付いた。


宛名も差出人の名前もないそれを持って家に入り、早速中を改める。


封筒の中には紙が一枚入っていて、


『幼いハンターへ贈り物だ。上手く使え』


とだけ書いていた。


少年は訝しみながらも、その木箱を手に取る。それから一通り変な術でもかかっていないか調べ、一段落したところで蓋を開けた。


「!?」


なかには綺麗にくり抜かれた眼球がひとつ、コロンと入っていた。


「…なんのイタズラだ?」


そう思いながらそれを手に取る。本物かどうかは、実物を触った事がないのでわからない。しかし、そのゼラチン質の感触はなにか本物だといわせる重さがあった。


「……」


しげしげと手のひらに転がしながら、差出人は誰かと考える。


と、次の瞬間。


眼球が小さく振動した。かと思えば、今まであった質感が消え、瞬く間に霧散した。あっという間の出来事で、少年が呆気に取られていると、自分の右眼に違和感を感じる。すぐにそれは、鋭い痛みへと変わる。まるで細い針に、目を無数に刺されているような耐え難い痛みだ。


少年はその場にくずおれ、身悶えた。


「ッ、クソッ!」


悪態をつきながら右眼を両手で抑える。自分の不用心さに心底腹が立つ。差出人不明のものを、不容易に開けるべきではなかった。一応調べはしても限度がある。


「はあ、はあ」


治まってきた痛みの中、一息つく。おそるおそる辺りを見回すと、ある変化に気付いた。


まわりの景色が、いつもと違って見える。


それまでパソコンの液晶に照らされ薄暗かった自室が、何やらカラフルな色彩をもっている。その光のもとは、部屋の壁際に置かれた、無数の対魔道具からだ。そしてその中には、何やら怪しげな記号まで浮かんで見える。その記号には見覚えがあった。


「これは…」


にわかには信じられないが、いくつもの古文書の中に記された、魔術師がルーンと呼んでいるものだ。


少年は理解した。一体誰が木箱を送ってきたのかはわからないが、これはとんでもない贈り物だ。なるほど、こんな世界が見えている連中がこの世界にはいるのだ。そんな存在に勝てるはずもない。その存在は、人間が息を吸うのと同じように自然に、空気中に存在する魔力の根源をも取り入れ理解しているのだ。とてもじゃないが、ただの人間のハンターである少年が狩れるわけがない。


どうして自分のもとにこんな力が届けられたのかはわからない。ただ、どれほど得体が知れないものであっても、少年は利用するしかないのだ。


そうまでしても、まだアイツを倒せるのかはわからない。それだけ少年が狙う獲物は強い。


不気味な笑みを浮かべながら、少年が付けっぱなしのディスプレイを見やる。


そこに映った画像は、世界最強の吸血鬼、ヴラド・シルヴェストリだった。

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