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 カタカタ、カタカタ


 暗い部屋にぼんやりとした光を放つ一台のパソコン。その前に一人の男が座っている。キーボードをはじく指は早く、彼がどれほど使い慣れているかが伺える。画面上にはいくつものウィンドウにそれぞれ別のSNSサイトが映し出されている。


「フン、人気者は大変だな」


 そう呟いた男はニヤリと微笑んだ。それと同時に、画面上の全てのウィンドウに同じ人物の写真が写る。どれも誰かが撮影した街中の一コマで、隠し撮りや、すれ違い様にとっさに撮ったと思われるものばかりで、決して写りがいいわけではない。男は様々なネット上の書き込みから、その人物のことが書かれている記事だけをピックアップしたのだ。コンピュータというものに指示を出すことは、人間同士で話し合うことよりも簡単だった。


「……上手く人間に紛れてるつもりらしいが。俺にはわかる」


 一番上のウィンドウを画面いっぱいに拡大表示する。


「お前を倒せば、俺の両親の死も無駄ではなかったということになるのか」


 フウ、と一息つく。言っていることは物々しいが、彼の態度はいたって普段と同じだった。それは物心ついたときから徹底して受けた教育の賜物か、はたまた彼自身が持って産まれた性格のためか。どちらにしろ、親の敵を見付けたにしては落ち着いていた。


「お前にはあったこともなければ、別に恨みがあるわけではないけど。これが俺の運命なんだ。悪いな、ヴラド・シルヴェストリ」


 男はパソコンの電源を落として立上がった。部屋の電気をつけると、そこにはありとあらゆる武器が並んでいる。それらは中世を思わせる長剣や弓、鎧や拷問の器具まで様々だ。一部武器ではない日本の怪しげな木の札のようなものも紛れていて、統一感というものがまるでない。


「さて、そろそろ仕掛けるか。顔を知られてない今が一番の好機だろうし」


 またもニヤリと笑みを浮かべる。


 しかし、男は全く予想していなかったところで、偶然にも出会ってしまうのだった。

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