セリスの加護
鑑定士はすぐにセリスの加護を調べはじめた。
彼女の肩に現れた紋章に手をかざし、目を閉じて集中すると、ぶつぶつとまるで自動的に言葉を紡ぐかのようにしゃべり出す。
「アスールの加護。その力は武の技に関する卓越した習熟能力を秘め、優れた戦闘能力を授かる。アスールの加護の中でも格の高い『勇士の道標』と呼ばれる加護を授かっているね。
身体能力の強化に、戦いの感覚を研ぎ澄ませる力。まさに黒魔との戦いのために授けられる能力と言えるね」
鑑定士が口にした黒魔とは、黒鬼などとも呼ばれる人間の敵対者のことで、この怪物たちは突如として現れる黒い柱から続々と出現する。
この世界「ヴィアラース」では人間同士の争いもあるが、多くの人々にとって危険な黒魔の存在は、どの国にとっても共通の敵なのである。
「知っていると思うが、アスールの戦士に選ばれた者は戦いの中で戦いの技を覚えることがある。だから日々の訓練や戦闘経験を積むことを勧めるよ。
鑑定士の中ではアスールの戦士にかける定番の言葉があるんだ。それは『黒魔を打ち払う戦士は戦いの中で己を磨き、やがて英雄となる』というものだ。君がそのような英雄になる日を願っているよ」
セリスは男の言葉に自信ありげに頷いて見せた。
少女の願いはまさに黒魔との戦いの中で活躍することだったのだ。
彼女の父もいまでこそ近衛兵として王に仕え、王城を守護する役目を負っているが、以前の彼は黒魔との戦いで名を馳せ、若き英雄と呼ばれていた。
セリスはそんな父に強い憧れを抱いていた。
いつか自分も勇敢に戦う戦士になろうと決意し、十歳になる前から剣の稽古をしていたくらいだった。
そんな彼女がアスールの加護を得た。
「勇士の道標」──その呼び名を聞いたとき、セリスにとってそれは神からのお告げそのものであり、彼女が迷うことなく目指すべき目標を与えられたのだと感じていた。




