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神の黄金と黒い神剣 〜少年と少女の英雄譚〜  作者: 荒野ヒロ
黒き来訪者

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少年少女の決断

「何かあったのかなぁ」

 外に出ていたメアはアルトの姿を見つけると、少年に近寄ってそう尋ねた。

「ぼくにもわからないよ。けど、確かに騒々しいね」

 そんな話をしていると、大通りのほうで爆発が起こった。それは激しい衝撃で、近くにある建物の壁が崩れるほどの威力があった。黒魔が攻撃魔法を使用したらしい。


「戦いだ! 誰かが町の中で戦っているんだ!」

「そんなぁ。誰が、何と戦ってるいるのぉ?」

「わからない、わからないけど……!」

 突然の町の混乱状態を前にしてアルトもメアも、自分たちがどうすべきか必死に考えようとしていた。


「アルト! メア!」

 そこへセリスが必死の形相で走って来た。

 彼女は革の胸当てや籠手、金属の肩当てを右肩に着け、腰から下げた短剣の柄に手をかけている。まるで戦いに向かう格好だ。


「どうやら大通りに黒い柱が出現したようよ」

「え!? まさか」

 セリスはどうやら傭兵ギルドに召集された傭兵から話を聞いていたようだ。

 町に残っている傭兵や戦える男たちが、町の中心部に集まりはじめているらしい。


「ど、どうするのぉ……?」

「そうね、メアは武器になる物は何かないの? できれば金属の棒や槍がいいでしょう」

「え!? まさか、戦闘に加わるつもりじゃないよね?」

「柱には近寄らない。私たちは自分たちの身を守ることを第一に考えつつ、市街地に黒獣や黒蟲が入り込まないよう見張っていましょう」

「み、見張ると言っても……」

 アルトは周囲を見回しながら、暗い道に動くものがないのを確認する。

「柱から離れて活動する個体もいるかもいれない。もしそういう敵を見つけたら、傭兵に知らせなければ。もしくは……」

 彼女の視線の先には、狭い道の先に見える大通りを走って行く、傭兵たちの姿があった。

 彼らは黒い柱に向かっているのだろう。


「もしくは、私たちの手で倒さなければ」

 町に残っている傭兵はすくないらしい。セリスは走って行く傭兵たちを見ながら、そう考えていた。

 自分たちにできることは、周囲を警戒しておくことだ。

 黒い柱の攻略は大人たちに任せ、私たちは柱から出現する獣や蟲による被害を出させないようにする。そんなふうに少女は考えたが、もっと自分にはやれることがあるんじゃないかという想いもあって、短剣の柄をにぎる手にぐっと力が入っていた。


 町中に黒い柱が落ちたなどという話は聞いたことがなく、セリスだけでなくアルトもメアも、どうすればいいかわからなくなっていた。

 いざというときのために訓練を重ねてきたというのに、実際に危険が迫ると、思うように体も頭も動かなくなってしまう。

 アルトはそんな自分にいらつきを覚えた。


(ここで勇気を出さなきゃ、いつ出すっていうんだ!)


 少年は心の中で自分のほほをたたき、ぐっと下腹部に力を入れると、セリスの顔を見た。

「よし、まずは傭兵ギルドに行こう。メアの武器を借りられるかも」

 アルトが提案するとセリスは黙って頷(うなず)いた。

「そうだねぇ、行こう!」

 はりきって言ったメアだが、その声はいつもと違って元気がなかった。

 彼女も健気にふるまっているが、怯えているのだ。


「私たちにできることをしましょう。もし町中に黒魔や黒獣が出るようなことになったら、そのときは覚悟を決めましょう」

 セリスは自分に言い聞かせるように、しっかりと言葉を口にしていた。

「うん」

 二人の幼なじみも彼女の言葉に賛同し、細い路地に入って行った。その先にある傭兵ギルドに早足で向かって行く。

 三人の子供たちは、危険を覚悟してその選択をしたのである。

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