重い剣を振る訓練
アルトは重い剣の扱いも練習してきており、午前の黒蟲討伐にあたっても問題なく振れていた。
しかし鉄の剣を振り抜いたあとの動きは、はっきり言ってまったく駄目だった。剣の重さに振り回され、攻撃後に大きな隙ができていたのだ。
初めての実戦で緊張せずに戦えていたのは評価できるが、それだけだった。彼が黒蟲に大胆にも斬りかかれたのは、セリスという頼もしい仲間の存在があったせいだった。
彼がしくじってもセリスがなんとかしてくれる。という安心感があったのだ。
「アルトはまず、剣の重さを制御するための体幹を身につけましょう」
セリスはそう言うと手本を見せ、ゆっくりと剣を振り上げ、振り下ろす動きを見せた。
実際は剣の重さを利用して斬るのだとしても、重い剣を扱うに足るだけの腕力も必要だ。
横に薙ぎ払うとセリスは体を軸に剣が大きく弧を描くが。アルトがやるとふらふらとさまよった剣先が、だんだんと下降してしまうのだった。
「ほら、しっかりにぎって」
「は、はい」
「足は肩幅に広げる。振る方向に向かって軸足を踏み込むように!」
幼なじみの厳しい特訓がはじまった。
アルトは剣を薙ぎ払う動きをしながら一歩、また一歩と前進し、右に振っては左に振り。くるりと反転しながら斬り下ろすと、また剣を横薙ぎにする。
セリスは厳しく少年の動きを見つめ、細かな指示をだしていた。
メアは槍を使う訓練生と模擬戦をして、自分に足りないものを探そうと訓練に励んでいる。実戦を経験した彼女もまた、強さを求める意識に変化が現れたようだ。
三人の幼なじみの中には、十四歳を迎えるまでにすこしでも強くなるという気持ちが伝染していた。
一体の黒蟲だけで苦戦しているようでは強い傭兵にはなれない。そんなふうに考えはじめているのだ。
傭兵ギルドの講義では黒い柱から出現する黒蟲や黒魔の数は、数十から百を超える数になると聞いていた。一体を倒して終わり、ではないのだ。
セリスも初めての黒蟲との戦いを経験して、このままではいけないと感じていた。大人になる前にもっと土台を形作らなければならない。持久力をつけ、長く戦いつづけられる体力などを身につけなければ。
彼女もまた幼なじみの二人と同様に、さらなる強さを求め、短剣をすばやく振るうのだった。




