報酬の分配
傭兵ギルドに戻ると、教官は三人の幼なじみと共に受付に向かった。そこで教官が受付嬢とやりとりすると、三人に討伐参加費と黒蟲の討伐報酬が出されたのだった。
「討伐参加報酬が三十ウルガ。鉄甲種討伐報酬が五百ウルガとなります。ご確認ください」と受付嬢は三人に対して硬貨の入った小さな皮袋を差し出す。
「ありがとうございます。教官」
「こちらこそすまなかったな。まだ正式な訓練課程を終えてないおまえたちに任せなければならなくなるとは。防衛体制を改める必要があるかもしれんな」
教官はそんな言葉を残して、ほかの教官と共に二階へ向かって行った。
三人の子供たちはギルドの片隅に向かい、壁ぎわに置かれたベンチに腰かけると、皮袋の中身を確認する。
「大銅貨三枚と小銀貨五枚。私たちの初めての仕事としては悪くない結果ね」
「悪くないどころか最良の結果だよ! だれも怪我せず、これだけの報酬がもらえたんだから」
「うんうん。そうだよぉ〜やったねぇ〜」
少年少女らは思わぬ大金を得てよろこんでいた。
「これをどう分けましょうか。大銅貨はひとり一枚として、問題は小銀貨のほうね」
「ちょうどメアのお母さんに贈り物をしたり、メアが傭兵としてやっていけることを証明しようと言ってたじゃない? だから、こういうのはどうかな」
そう言うと少年は銀貨を一枚だけ手にした。
それを見ていたセリスも彼の意図を読み取り、一枚の銀貨を手に残して、三枚の銀貨をメアに受け取らせた。
「この銀貨三枚でお母さんに何か買ってあげるか。それともメアが傭兵になったときのことを考えて、武器や防具の購入資金として貯めておくか。それはメアが決めるということで」
「え、けどそれじゃぁ……」
「贈り物よりも報酬のお金を見せて、今回の討伐でメアが活躍したことをお母さんに話して、安心させるのがいいと私は思う。
まだ十二歳の私たちだけど、これだけのことを成し遂げる実力があるんだと説明して、十四になったとき安心して傭兵として活動できるんだって、そう思ってもらえるように」
三枚の銀貨と一枚の銅貨を見ながら、メアは考えているようだった。
そのお金は、幼なじみと危険を乗り越えて得たお金であり、その一部を二人の幼なじみは自分にくれるというのだ。
それは金額よりも大きな、彼ら彼女らの思いやりにあふれたお金だった。
「ありがとう、二人ともぉ。今日のことをお母さんに話して、みんながくれたこの銀貨を見せてぇ、それでお母さんを安心させるよぉ。私たちならぁ、黒魔にだって勝てるんだってぇ」
メアは二人の友情に感激し、瞳を潤ませながらほほ笑んだ。
三人はギルドをあとにすると、それぞれの家に帰って行った。
昼を告げる鐘が鳴るのを耳にしたアルトは意気揚々と帰宅して、玄関のドアを開けた。
家の中に入ると玄関の横に汚れた革の背負い袋が置かれていて、それに見覚えのあったアルトは声をあげた。
「あっ、このかばんは……!」
少年が廊下を歩いて行くと、前方にある部屋のほうから「アルトが帰って来たみたいよ」という母の声が聴こえてきた。
リビングに入るとそこには男が少年に背を向ける格好で椅子に座っていて、少年が部屋に入って来ると男は振り向いた。




