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神の黄金と黒い神剣 〜少年と少女の英雄譚〜  作者: 荒野ヒロ
黒き来訪者

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初めての実戦

 手負いの黒蟲を相手に、セリスを中心とした三人の幼なじみが立ち向かった。

 前に出たセリスを狙って黒蟲はハサミを突き出してきた。「ガチン」と硬い音を立てて閉じたハサミを彼女は横に回避していた。

 その隙を突いてメアが鉄の槍で蟲の胴体をひと突きする。

 平べったい胴体のわき腹あたりを狙った一撃は硬い甲殻を避け、腹部の外皮を貫いた。


「ギュフィィイィッ!」

 踏み込みが浅かったせいか、槍の先端が食い込んだだけだったが、蟲はかなりその攻撃をいやがってるようだった。

「えいえい、えぇィッ!」

 逃げようとする黒蟲にメアが追撃をかけた。

 攻撃が浅かったという感覚があったのか、それともこれ以上相手に行動させてはいけないと考えたのか、前に踏み込みながら烈しい連続突きをくり出す。

 すると黒蟲は横に跳んで追撃を躱(かわ)し、地面に着地するとさらに三人の横へ回り込むように飛び跳ねた。


「キシャァアァァッ!」

 アリに似た頭部が牙をもった口を開いて威嚇する。

 その動きをアルトは予測していた。

 黒蟲の側面に回り込むようにして移動すると、手にした鉄の剣を振り下ろす。

「ガチィンッ」しかしその攻撃は脚に弾かれてしまった。

 少年の攻撃は脚の甲殻に傷をつけたが、その攻撃でも大した傷を負わせることはできなかったのである。


「ダメだッ! 硬すぎる!!」

 あわてて後方に下がるアルト。彼の立っていた場所に蟲の脚が振り下ろされ、杭のごとく尖った脚先が地面をえぐった。

 弱点となりそうな腹部は、蟲が低い姿勢をとることで攻撃ができなくなる。

 ぶんっ、となぎはらわれた腕を躱し、セリスが腕の関節をねらって短剣を振り下ろした。

 できれば刃の中央あたりで斬りつけたいところだろうが、高い位置にある腕をねらうには彼女の身長と剣の長さでは不可能だった。


「ガキィンッ」

 かなり大きく踏み込んで腕の細い箇所に切っ先をぶつけたが、彼女の攻撃も硬い甲殻に傷をつくっただけに終わった。

 しかしかなりの重い一撃だったらしく、黒蟲は彼女の攻撃を恐れるように跳びすさって、少女から距離をとる。


「やっぱり私の力でも硬い甲殻を貫くことはできないようね」

「笛は吹いた、援軍が来るまでもちこたえよう」

 アルトはセリスの近くに寄って剣をかまえる。

 その切っ先はすこし震えていた。

 黒蟲を前にした恐怖か、あるいは初めて経験する実戦の高揚感からか。少年の鼓動は高鳴り、それでいながら頭の中は少年自身が驚くほど冷静でいられた。

 セリスは高揚も恐怖も感じていない様子で、メアに指示を出し横に回り込むよう告げる。

 メアも見た目には戦いに集中しているようだったが、かなり緊張しているらしかった。だが少女の本性的な部分は強い攻撃意思を隠していた。

 もし攻撃の機会(チャンス)があれば、少女は大胆に敵に接近し、鋭い突きをわき腹に突き立ててやるつもりでいるのだ。


 黒蟲は三人の子供に警戒していた。じりじりと横に回り込もうとする子供たちの様子を探り、小さな頭にある大きな眼で相手の動きを追っていた。

「メア! あまり刺激しないで! 危険だよ、近すぎる!」

 アルトが警告すると、少女は二人の幼なじみから離れすぎていることに気づき、ゆっくりと戻って来た。


「このまま時間を稼げれば……」

「そうね。けどそれじゃぁ、私(・)た(・)ち(・)の(・)華(・)々(・)し(・)い(・)初(・)戦(・)にはならないわ」

「え?」

 アルトがセリスの言葉に疑問を投げかけようとしたとき、彼女は一歩前に踏み出していた。

「やっぱりここは私たちで、この黒蟲を倒さないとね」

自信満々のセリスには奥の手があるようで──

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