ウェルクの最後の指導を終えて
ウェルクとの訓練は夕暮れよりもずっと前に終了した。彼はすぐに別の街に向かう予定があるのだ。
「みんな、この数日で学んだこと、経験したことを忘れないほしい。この
数日間で自分がどれだけ強くなったか、それを実感することが大事だ。そうした経験が、もっと強くなろうという気持ちの原動力になるからね」
彼は最後に子供たちにそのようなアドバイスを残し、メイカムの町から去って行った。
訓練場から出て行く彼を見送りながら、子供たちはそれぞれの感謝の言葉を口にして別れを惜しんだ。
特別訓練が終わっても、少年少女の訓練は午後の半ばまでつづけられた。
セリスのまわりにはいつも以上に多くの子供たちが集まり、ウェルクから一本取った少女との戦闘訓練を求める子供も何人かいた。
「いいわよ、やりましょう」
彼女は少年少女と連戦をくり広げ、そのすべてに勝利した。
そんな闘いの中で彼女はまた、自分に合った戦闘スタイルを思いついたようだ。
訓練が終わると、彼女は二人の幼なじみにこう宣言した。
「私は明日と明後日の訓練は休みます。二人はそれぞれのやるべきことに取り組んで」
「セリスは何をするのぉ?」
「私は防具を作ろと思ってるの」
「え、防具を? いちから?」
「作ると言っても、そんな大がかりなものじゃないから。すでにある金属板や革を使って籠手を作ろうと思うの」
「籠手だけならそんなにかからないか」
「そうね。できればアルトのお父さんに協力してもらおうと考えてる」
「え、お父さんに? そりゃあ防具も作れる鍛冶職人だけど、どうかな……」
「なら、アルトも手伝ってよ」
「う──ん、まあぼくは別にいいけど」
と、こんな具合で二人はアルトの家に行くことになった。メアは家に帰って、母親と内職をする予定があるらしく、元気よく帰って行った。
「本当に彼女はお母さん大好きっ子よね」
「まあ、お父さんはいないからね」
「それを差し引いたとしてもよ」
「それはまあ、そうかもしれない」
「けど、メアのお母様には言いたいことがあります」
セリスは急に真剣な口調になった。
「え、なに。怖い」
「だって最近の彼女──メアのことね。ほら、あれでしょ……」
「あれ?」
「すこし太り気味じゃない? 減量させないと」
「そうかな? 前からあんな感じじゃなかったっけ」
アルトの言葉に少女はあんぐりと口を開けた。
「あなた……、私が太ったときも、そんなふうに答えるわけじゃないわよね」
「え!? ど、どうなのかな」
「太ってきたのに、見て見ぬふりなんてやめてよね! 私がもし太ってきても『前からあんな感じだった』なんて言わせないからね。太ってきたと思ったら、すぐに言いなさいよ!」
「は、はいっ」
彼女の気迫に圧されて少年は背筋を伸ばして返事をしたのだった。
「と、とにかく。メアのお母さんに食事制限をお願いしたほうがよさそうね。このままじゃ私たちが十四になるころには、彼女はいまの二倍くらいの大きさになってしまう」
「そんな。畑に放置されたかぼちゃじゃないんだから」
アルトの言葉にセリスは吹き出した。
「だったら、そうなる前に収穫しないとね」




