与えられた加護は
セリスの加護は肩に現れた。
真紅の紋章が出たのを鏡を使ってセリスはその紋章を見せられた。少女はそれを鏡越しに確認し、わずかだがほほ笑んだ。
「ほら、ぼくの言ったとおりだろ」と、となりに立っているアルトに小声で言うベイオン。
列の最後に並んでいたアルトは緊張していて、セリスが与えられた加護がなんなのかもわからないくらいだった。
どうもアルト少年は、こういうときに臆病になってしまうきらいがあるようだ。
つぎに洗礼を受けたメアは生命の神イシュルの加護を授かっていた。
彼女の紋章は胸元に現れ、やはり鏡でそれを確認した少女はアルトのほうを見て、「だいじょうぶ」という感じで笑顔を見せた。
つぎはベイオンの番だった。
余裕の表情でどの神の加護が得られるかと待っていたベイオンの体を小さな光が包み──、そして光が消えた。
「え」
「君は加護を与えられなかった」
神官は無情にもその言葉を口にした。
ベイオンは声をあげて反論しようとしたが、神官の鋭い視線を受け、大粒の涙をぼろぼろとこぼすだけで、ぐっとこらえるしかなかった。
少年の両親からもため息に似た声がもれたが、悲嘆の声にならぬよう努めたのだろう。夫婦は互いに抱き合って、大丈夫だと父親がささやいていた。
いよいよアルトの番が回ってきた。
八人のうち二人が加護なしと出たからといって、少年の心から不安が消えることはなかった。
緊張した面持ちで顔を上げ、口を開いた少年の口の中に水がそそがれると、アルトはそれを飲み込んだ。
八人が発した光とは異なる、まばゆい輝きが少年を包み込む。
きらめく光の粒が周囲を舞い、幻想的な虹色に近い光が溶けるようにしてアルトの手に集約されていった。
周囲の人々から驚きの声がつぎつぎにもれる。
「おお、君は……!」
神官は歓喜の声をもらしていた。
老いた神官は震える手で少年の手をつかむと、小さな手のひらを見て声を上げた。
「この子供は神ヘレイスの加護を与えられた」




