洗礼の儀式
この仲良し(?)四人のほかにも、数人の子供たちが洗礼の儀式に参加していた。
年老いた神官が祭壇の前に立ち、大きな銀の器から水を金の柄杓ですくい取り、それを小さな銀製の水差しに移し替え、補佐役の若い修道女にそれを預けた。
横一列に並んだ子供たちの前に立つと、神官はつぎのような言葉を口にした。
「これから君たちは大いなる神の加護を与えられます。──が、ときに神は子供らに試練を与えるため、加護を授けない場合があります。そうしたことになってもめげてはいけません。それが神から与えられた人生の指標なのですから。
与えられるだけでなく、与える者になりなさい。
求めるだけでなく、自ら獲得する者になりなさい。
……それでは、儀式をはじめましょう」
老いた神官はひとつ間をおいてから子供たちに近づき、修道女から水差しを受け取ると、子供に口を開けるよう言った。
子供が口を開け、上を向いて待っていると、神官は長い差し口から子供の口の中に水をそそいだ。
水を飲み込むと、子供の体を包む淡い光が発生した。
その光が子供の手に集約するように消え去ると、子供の手の甲にだいだい色の紋章が浮かび上がった。
「この子供は神イシュルの加護を与えられた」
神官が言うと、子供の家族から歓声があがる。
こうして子供たちが加護の儀式を受けていたが、三人目が加護なしという結果が出て、つぎに水差しから水をそそがれる子供を不安にさせた。
この結果が前に出て、安心した子供がいた。
それはベイオンだった。
(九人の中の一人が加護なしなら、もうほかに加護を与えられないやつは出ないだろ)
少年は事前に計算していたのだ。加護なしの子供が出る割合は俗に、多くても二割だと言われている。
ベイオンが独力で調べたところによると、十人のうち一人、ないしは加護なしとなった者は出ないことが多かったのだ。
ベイオンがアルトを見てにやりと笑みを浮かべて見せたが、アルトはその顔を見ても不安になるばかりだった。
(加護なしだったらどうしよう……)
加護が与えられなかった子供の両親は悲嘆の声をあげることはしなかったが、それは神の判定に非難の声をあげるのと同義なので禁じられているのだ。
しかし神の加護を与えられなかった子供の目には涙が浮かんでいた。
そうして六人目の、セリスの順番が回ってきた。




