神殿で友人と
メイカムの町にある神殿は簡素で小さかった。
都会と違って町の財政に余裕はない。神殿が建てられるだけメイカムはましなほうだった。神殿が存在せず、大きな街に馬車を乗り継いで行かなければならない村などもあるのだ。
神殿は五柱の神のために建てられており、どの街でもひとつの神殿内に五柱の神の紋章がかかげられている。
「あ──、アルトだぁ」と、少し間延びした女の子の声。
「おはよう、メア」
神殿の前で会ったのは幼なじみのメアレーズ。少女も今年で十歳になるので、洗礼を受けに来たのだ。洗礼は年の中月(六月ごろ)の最後の神無日(日曜日にあたる)にまとめて行われるのが一般的だ。
ちなみに一月は約三十日あり、一週間は七日ある。
「楽しみだねぇ」
「そう──だね。すこし心配でもあるけど」
「え──、なんで?」
「だって……」
変な加護を与えられるかもしれないじゃないか。そう少年は口にしそうになって、その言葉を飲み込んだ。
「メアは幸運の神の加護を受けそうだよね」
「そうかなぁ。わたしは知恵の神様がいいな──」
「え」アルトは危うく少女の両親いる前で「それはないでしょ」と口走りそうになり、やはりその言葉もむりやり飲み込んだのである。
それに知的な子供だからといって、知恵の神が加護を授けるとは限らないのだ。
神殿の中に入ると、そこには二つの家族がすでに席についていた。
木製の長椅子が並べられた一番前の席に、それぞれの家族が座っている。
「セリスはきっと、戦いの神だぜ」と、左の席に座っている目つきの悪い少年が言えば、
「そう」と、セリスと呼ばれた少女は気にも止めていない様子だ。
茶色い髪の少年ベイオンと、銀髪の少女セリスの仲の悪さは誰が見ても明らかだったが、互いの両親は仲が良いのだった。
どちらの家族もアルトやメアの家庭よりも多少裕福な家柄で、セリスの父親は近衛兵を勤めている。
ベイオン少年は大きな商家の息子であり、それを鼻にかけるだけの賢しいところがある、いけ好かない少年だった。
「おう、アルトじゃないか」
「やあベイオン」
「なあ、セリスはどの神様の加護を与えられると思う?」
「ベイオン、そういった予想はしないのが通例じゃないか。洗礼が終わるまでぼくは自分のも、ほかの人の加護についても話すつもりはないよ」
ふん、つまらね──やつ。と、ベイオンは興味をなくした様子でそっぽを向く。
「おはようセリス」
「ええ、おはよう。アルト」
アルトはセリスのななめうしろの席に座り、メアはセリスの真うしろに座った。
四人は仲良さそうに、ときに剣呑な感じで言葉を交わしていた。
アルトはセリスに好意を持っているようだった。
だがそれは異性への関心というよりも、強い人物に対する憧れのようなものかもしれない。
彼女が男子に間違われるほど、男前な性格をしていたせいもあっただろう。




