技能「打ち砕くもの」
高度な戦闘技能をもつ二人の闘いを目の当たりにしたセリスは、表面上は落ち着き払っていたが胸の内は高鳴っていた。
いつかあんなふうに闘えるようになってみせる。その決意を静かに胸に刻み込むように、彼女は胸元に手をあてた。
「すごかったねぇ」
メアが驚きの声をあげてアルトに言ったが、少年は「そうだね」と返事しつつ、目の前で起きたことについて集中すべきだったと思いなおしていた。
(頭の中に見える技能表示にばかり集中して、二人の闘いがあまりわからなかった)
けれど、まったく外部のことが認識できていないわけではない。
頭の中のことと、視覚を通じて得られる情報は分けて考えられている。その気になれば、技能を確認しながら周囲のことに気を配ることだってできるはずだった。
ただ今回は新しい発見をしたために、そちらにばかり注意が向いてしまったのだ。
(失敗したなぁ)
などと反省しながらも、彼は技能表示を頭の中で展開してみた。
するとそこに、新たな項目が付け加わっていたのだ。
「打ち砕くもの」
その技能の説明を見ると、「外部に向けて衝撃を放出する力」とだけあった。
(ぼうっと見ていただけだったのに、それでも技能として得られるんだ)
少年の意志とは関係なく、肉体が視認した能力を獲得できるのか、彼はまた新しい力を得ていたのだ。
「ミルダさんが使った盾から衝撃を打ち出すみたいな攻撃。あれって戦技でしょ? すごいわね。ウェルクさんが吹き飛ばされたときは、一瞬ウェルクさんが負けたのかと思ったわ」
「そ、そうだね」
セリスが興奮気味に言ってきたが、少年は覚えていなかったので、相づちを打つだけになってしまう。
その日の訓練はそこで終了し、明日またウェルクが指導に参加すると話された。
「私は明日と明後日の訓練に参加します。共にできる時間は短いですが、私がみんなの傭兵としての将来になんらかの貢献ができるならうれしいです。
あと2日。共にがんばりましょう」
ミルダとイサリアはすでに訓練場を去って、宿屋のほうに向かったらしい。彼女たちは明日にはメイカムの町を去る予定なのだ。
すばらしいお手本を前にした少年少女は、さらなる飛躍を期待しながら明日からの訓練にも身が入るだろう。
「剣と盾の戦い方も学ぼうかな」
などとセリスが言い出すくらいに、ミルダの戦い方も洗練されたものだった。
ウェルクがくり出した空裂斬を盾で弾き、そこから一気に前進していく姿は、少女に新たな戦い方への興味を抱かせるのに十分な迫力をもっていた。
「片手で金属の剣を振れるくらいの腕力をつけないとだね」
「わたしなら片手で鉄の剣も振れるよぉ」
「メアは加護を得てから、さらに腕っぷしが強くなったよね」
あまり女の子に言うことではないが、少年は幼なじみの力をすなおな気持ちで褒めた。
「えへへぇ~」少女のほうもすなおな気持ちで幼なじみの言葉を受け入れ、よろこんでいるようだった。
ウェルクが訓練に参加するのは残り二日間。
「あと二日。あの人から強くなるために取り組みについて、学べるだけ学びましょう」
「うん」
幼なじみ三人は別れぎわにそう話し、セリスの言葉にほかの二人も頷いてみせたのだった。




