訓練に励む幼なじみたち
翌日から三人の少年少女はさらに身を入れて訓練に臨んだ。
積極的にウェルクに教えを請い、どうすればよりよくなれるか。どのような動きをするべきか。戦いに入るときに気をつけるべきことは。そうした個々の問題について尋ねた。
「うん、それはね……」
ウェルクも熱心な子供たちに助力を惜しまなかった。
手に手を取り、ときには動きの手本をくり返し見せ、丁寧に教えていた。
休憩時間にも彼らはウェルクのまわりに集まって、傭兵としての心がまえについて教わったり。旅の注意点を聞いたりするほど熱心で、この訓練場にいる誰よりも真剣に自身の成長を望んでいるのを感じさせた。
三人が具体的な目標をもっていることは、ウェルクだけでなくほかの教官たちにも周知のことだった。
ほかの子供たちが「みんながやっているから」といった、漫然とした意識で訓練場に来ているのと違い。セリスを中心とした幼なじみの一団がすでにできあがっているように感じさせた。
「我々も彼女のような子供たちに負けぬよう、日々の精進を忘れずにいきましょう」
教官たちがそう口にするほど、三人の幼なじみたちの努力は子供のそれとは違っていたのだ。
「やぁっ! せいッ!」
「ふっ、はァッ!」
アルトとセリスの模擬戦もだいぶ様になってきた。
二人の戦闘訓練がはじまると、周囲に子供たちが集まって観戦することもあるくらいだった。
セリスは剣と盾を使っての戦い方をすることもあり、またたく間に彼女はその新しい戦い方を習得していった。
いまでは訓練生の誰も彼女に勝てなくなっていた。
訓練教官すら打ち負かしてしまうのではと思われるほど、彼女の強さは大人顔負けの苛烈さをもち。その彼女に追いつこうとするアルトとメアだけが、ほかの子供たちよりも大きな成長を見せはじめていた。
「しかしどうもアルトは覚悟が足りぬ」と、少年を指導した教官のひとりが言った。
「あの子の弱さは、ひとえに意志の弱さのように思う。自信のなさは生来のものなのかはわからないが、あのままではせっかくの努力も花開かぬまま終わるのではないかと、そんなふうに思えてならない」
別の教官もそんなふうに少年を評する。
傭兵は、ときに危険な状況にも果敢に飛び込むだけの心の強さが必要になる。無謀にも思える大胆不敵さが自らを救うこともあるし、その結果が思わぬ成長を促すこともある。
臆病なだけでは命を長らえたとしても、成長にはつながらない。
その先に待つのは己の弱さに失望し、自責の念にかられつづけるだけの、無様な人生に堕するかもしれないのだ。
己に打ち勝てぬ敗北者とは、ときに他者に横暴にふるまい。狂犬のように吠え噛みつく、暴力的で品のない獣と同類になってしまう。
ベイオンが加護を与えられなかった失望から一時的にそうなったように、身近な者に痛烈な罵声をあびせるような、攻撃的な人格へと変貌してしまうこともある。
幸い彼は友人との絆を回復し、正道へと立てなおすだけの分別を残していたので助かったが、もし自らの行いを反省せずにいれば、彼は過ちをくり返すだけの人生を送っていたかもしれない。
悪とは外からやってくるものではなく、おうおうにして自身の心の暗い面から現れるのだ。
そんな話を控え室で聞いていたウェルクは「自分も彼と話してみます」と、少年の今後を心配している様子をみせて立ち上がった。




