ウェルクの訓練の評判
その日の訓練が終わると、子供たちのウェルクを見る目が一変していた。
ウェルクが見せた、子供たち五人をいっぺんに相手をする模擬戦をしたことで、子どもたちの彼への評価がぐんと上がったのだ。
その五人の中にはセリスもいたのだが、ウェルクは勝利した。
圧倒的な実力差を見せつけた「北方の若き英雄」に、子供たちは感激したに違いない。
いつか自分もあんな強さを手にしたい。そんな気持ちにさせるだけのものが彼の強さにはあった。
ふんわりとした、どこか頼りなげな見た目とは違い、戦いとなると、彼の強さが本物であると誰もが認めざるを得なかった。
つぎの日もウェルクは子供たちと戦闘訓練をした。
前日のうわさが子供たちに伝わると、午後からはさらに多くの子供が訓練場にやって来て訓練に参加していた。
二日目はアルトとメアもウェルクとの戦闘訓練をした。
ウェルクはこの二人にもかなりの可能性を見いだしたようで、少年少女に今後も練習を重ねていくようにと真剣な様子で語り、彼らの戦闘技術を高めるのに必要な「型」について丁寧に教えていた。
「ウェルクさんって、ほんとうに強い」と、控え室で着替えている少年や少女たちは話し合っている。
「ギルド長がわざわざ足を運んでメイカムに呼んだだけはあるね」
ウェルクが所属しているクラン(団体)は各地を旅して活動をするのだが、現在は活動を休止しているらしい。
年に数回、数日間の休暇が与えられるとクランの規定にあるそうで、ウェルクはその休日を割いて子どもたちの訓練に付き合ってくれているのである。
訓練のあいまにウェルクは子供たちと積極的に交流した。その中で彼の所属するクラン「月光狼」について話すこともあった。
「月光狼の名前の由来? アッシュフェルドにある乾燥地帯に生息する狼のことを『月明かりの狼』と呼ぶ人たちがいて、そこから名付けたとか……。乾燥地帯を徘徊する狼たちは、夜に移動するときに尻尾が光るそうだよ。その光を頼りに仲間たちが集まるところから、クランの名前にしたらしいね」
「月光狼」はアッシュフェルドの中でも古くからある傭兵団のひとつで、団には若者を育成するという文化が強く根づいていた。
そうした環境で育ったウェルクは、同盟関係にある国の傭兵ギルドに招かれれば、協力を惜しまなかった。
共通する敵である黒魔に対処する仲間の必要性は、為政者たちよりも彼ら傭兵のほうが、はるかによく理解しているのである。




