若き英雄の実力
セリスはウェルクの実力を測りかねていた。
彼女の加護の力による洞察力をもってしても、彼の力に対して特別なものを感じなかったようだ。
「まあいいわ。やってみればわかる」
彼女はもちまえの男気を発揮して、ウェルクに稽古をつけてもらおうと考えたが、ひとまず様子を見ることにしたようだ。
まずは訓練生たちに戦闘訓練を再開させたギルド長は、子供たちの様子を見ながらウェルクとひそかに言葉を交わしていた。
「いかがですかな。ほかの街の様子と比べて」
「そうですね、悪くないと感じます。標準的な水準以上の能力をもった子供が多いようですし。──あの子ですか? お話ししていた『傭兵になるべく生まれた子』というのは」
ウェルクはそう言って、銀髪のポニーテールをなびかせている少女をそれとなく指し示す。──それはセリスだった。
「ええ。それにあの娘のそばにいる二人の子供たちも、彼女に追いつこうと必死にがんばっているようですな」
「いいことです、良い模範がそばにあるというのは。緊張感のある環境と優れた戦友。それが戦う者にとってどうしても必要になりますから」
「ですな」
ウェルクの視線の先にあるのはセリスではなく、なぜかアルトだったが、そのことにギルド長は気づかなかった。
(ということは、あの男の子が「光の加護」を与えられた少年か)
彼はギルド長から誘いを受けたときに、その子供についても聞かされていた。優れた傭兵候補と、神から虹色に光る祝福を受けた子供がいると。
そのどちらも彼には期待以上のものを感じていた。
彼はいくつかの国をわたり歩く活動範囲の広い傭兵だったが、その理由のひとつが傭兵を育てることにあった。
ウェルクはまだ年若い傭兵だが、すでに二つの黒い柱を攻略し。さらに三つの侵蝕迷宮をくぐり抜けるほどの実績を示していた。
それでもなお彼は、黒魔に対する危機感を強くもっていた。あの謎めいた存在と対峙するたびに、異質な不安感が彼の中に積もっていくように。
(奴らはただの怪物なんかじゃない)
その不安感がなんなのかは彼自身にもわからなかったが、黒魔の一部はなんらかの目的をもって侵略してきていると感じているのだった。
あの敵に対抗するには強い戦力。個の力と多くの人材が必要だとつねづね思っているのだ。
ウェルクは少年から目をはなし「傭兵になるべく生まれた子」とまで評された少女に目を向けると、そちらに近づいて行った。




