十二歳に成長した少年少女
第二部「黒き来訪者」開幕。
十二歳から十四歳になるまでの期間を想定しています。(ところどころで数ヶ月ぶっとびますが)
幼なじみ三人の成長を見守っていただければ。
いつもと変わらぬ日常が訪れた。
その日常を、あたりまえの日々を、人はそれぞれの生き方ですごしている。
毎日を自堕落にすごす者もいれば、懸命に努力して生きる人もいる。
その違いが人の価値を作り出すとしたならば。
そこには神の加護よりも大切な、自らを祝福することのできる、かけがえのない財産が生まれるのではないだろうか。
アルトは十二歳になった。
彼は身長がすこし伸び、筋肉もついて、細身ながらどこかたくましい印象を感じさせた。
さび色をしていた髪は赤みがかった色に変わり、日の光をあびるとだいだい色に燃える火鉢の中の炎のように見えた。
その姿はどこか神話の中に登場する、苛烈な戦いをくぐり抜けた勇者の姿のごとく、勇ましさを感じさせた。
けれども彼はやっぱり彼のままだった。いつもおどおど控えめで、セリスとメアの背後に隠れているイメージが強かった。
少年は自らの加護の力を隠すことに必死で、二年のあいだにいくつかの加護の力を手にしていたが、それをあからさまに使ったことは一度もなかった。
もちろん強くなった部分もある。
以前はおよび腰だった戦闘訓練も、いまでは積極的に参加するくらいに成長していた。
彼のこの二年間は自分の加護の力を隠しながら他者と関わり、自分の加護や心と向き合う時間が多かった。
そこには彼にしかわからぬ悩み──今後に対するさまざまな問題と不安──にあった。
いつまで人に自分の授かった力のことを秘密にできるかという問題と、大事な仲間である二人の幼なじみに隠しごとをしつづけるという想いが、少年を孤独な思案の牢獄に押し込んでしまったのである。
セリスは少女とは思えぬ美しさをかもしだすようになっていた。
傭兵となるべく戦闘訓練を重ねる日々のあいまに、貴族出の母が行う身だしなみや躾の賜物であった。
少女にとって母は美しく厳しい人であり、女性としての手本となるような人であったが。彼女の思うところは美しさよりも強さにあったのだ。
銀色の長い髪を頭のうしろで結った姿が町の中でも目立つようになり、美しい少女剣士がいるという評判が、ほかの町にも鳴りひびくようになったらしい。
彼女は傭兵ギルドの訓練生の中でも別格の強さをもっていたが、いまだに戦技を使って見せたことはなく、彼女のことを「戦いの神の加護を与えられながら戦技を使えない剣士」、などとバカにする子供も一部にはいたが(ギルドでは加護やその技能について詮索したり、言いふらしたりすることを禁止している)、そんなつまらない陰口を寄せつけないほど、彼女の実力と美貌は、とても子供のものとは思えぬほど洗練されていた。
メアは──すこし太った。
いや、ぽっちゃりしてきた。と言うべきなのだろうか。
彼女の家庭はどちらかと言えば貧しく、毎日の食事も質素なものだったのだが。最近、彼女の母が作る編み籠や革靴などが別の街で高値で買い取られるようになったために、じょじょにだが食事の内容も改善されていったようだ。
この取り引き価格の変更にはベイオンの交渉があった。
父親と共に別の街に売り込みに行き、品質の良さを強調し、ほかの製品と比べてみても優れた商品であると証明して、価格を吊り上げることに成功したのだった。
メアとベイオンの仲は完全に修復され、忙しい仕事のあいまに昔のように顔を合わせることもあった。
彼女の淡い緑色の髪は肩の長さで切られ、前髪も切りそろえられているので、彼女のあどけなさがそのまま外面に表れているかのように見えた。




