黒魔について
傭兵ギルドでは黒魔についての講義も行われた。
黒魔のことは親からも教わる機会があるほど、日常生活の中に現れる危険として周知されている。
「黒魔は黒い柱から出現する。この黒い柱とは空から降ってくるのだ」と、講師となった教官は説明した。
「ほんとうに空から落ちてくるんですか?」
生徒の一人が尋ねると講師の男は頷いた。
「そうだ。おれは見たことがある。──空の雲に穴があき、そこから黒い光の柱が落ちてくるのを。黒い柱と呼んでいる物は鈍い光を放っていて、一部が赤や青などの光の筋を発している。この柱が地上に突き刺さると、そこから黒魔や黒獣が続々と出現する」
黒い柱が出現した場合、傭兵はこの柱に向かって攻撃を開始するのだ。出現する敵を倒しながら柱に接近し、柱の中に潜入してコアを破壊すれば、黒い柱は消滅するのだ。
「中に入ってコアを破壊したら、戻って来れないのですか?」
「そんなことはない、ちゃんと戻って来られるぞ。理屈は知らんが、コアを破壊すると光に包まれ、地上に戻されるのだそうだ」
そう説明して、講師はさらに柱の内部についても話しはじめる。
「柱の内部はそれほど広くはない。それに階層もだいたい三階から五階くらいの物が多いとされている。柱の中にも黒魔は出現するので、それらを倒しながらコアを探し出し、破壊するのが我々の使命だ」
講師は黒魔の特徴について書かれた、大きな紙を黒板に貼った。そこには黒魔の形状や大きさについて記されていた。
黒魔の多くは人型で、人間と変わらぬ大きさのものから、大きなものになると人の三倍ほどの巨体をもつものも現れる。
大きな腕をもつもの。触手をもつもの。翼をもつもの。中には下半身が獣の足であったり、虫の脚であったり、蛇であったりするものも出現するのだ。
これらの黒魔の多くは角を生やしていることが多く、武器を手にして現れる黒魔も存在する。
講師は話を変えて、侵蝕迷宮についても簡単な説明をしはじめた。
「侵蝕迷宮もこの黒い柱と共通するものだと考えられている。ただ侵蝕迷宮から黒魔が外に出ることはなく、迷宮内には黒魔よりも黒獣や黒蟲が多く出現する。
侵蝕迷宮も突然出現し、その場にとどまってしまうのだが、こちらは時間が経つと自然消滅してしまうものが多い」
この迷宮は大きいものは大きいが、小さいものになると奥行きのある洞窟くらいの規模しかないこともあるのだった。
黒魔に関する問題はまだまだ謎が多く、この侵略者に対してヴィアラースの人々は、神の加護の力を使って戦う以外のすべをもたないのである。




