訓練と勉強の日々
教育部屋=小さな学校のようなもの。私塾や寺子屋(場所によっては神殿が私塾を開いている)をイメージ。
森緑月(七月にあたる)から蒼海月(八月にあたる)の終わりごろまで、三人は教育部屋と訓練場に通い詰めた。
教育部屋では読み書きや計算だけでなく、工作や調理なども行われ、何が得意で何が不得手かを学んでいく少年少女たち。
傭兵ギルドでも、戦技についての講義が行われていた。
それは加護や戦技に特化した学びの時間で、特に傭兵として知っておくべき加護の力について学ぶ時間が設けられていた。
アルトは加護のことよりも、戦技についての講義を興味深く聞いていた。
そこで教わったのは「空裂斬」「貫通破」「衝壊撃」「剛鎧身」「疾迅身」という五つの代表的な戦技(能力)についてだった。
「空裂斬」はアンデムが見せたように、斬撃を飛ばす攻撃だ。
「貫通破」は突く動作に貫通力を上乗せする戦技で、槍を扱う者が身につけることが多い。
「衝壊撃」は攻撃に衝撃を乗せて破壊力を増幅させる戦技で、爆発的な破壊力を秘めるが、下手をすると技をくり出したほうの武器が壊れる可能性があるらしい。
「剛鎧身」は体の表面を金属のように硬くする防御系の戦技で、身動きは遅くなるが、皮膚の上に強靭な保護膜のような物を張って身を守るのだ。
「疾迅身」は瞬発力を上げ、すばやい行動が可能になる技能だ。足の速さだけでなく、攻撃の速度を上げることもできる。
「ほかにも黒魔との戦いで相性がいいのが『光刃剣』だ。これは特別な戦技で、使える者はまれだな」と、教官が説明した。
それは黒魔の硬い装甲も斬り裂く力があり、武器に光の刃を重ねることで威力が格段に増すのだ。
「このほかにもいくつもの戦技がある。一人で複数の戦技を扱えるようになる者も多い。日々の訓練に加え、実戦を経験することが何より大切だ。精進するように」
アルトはここ二ヶ月で「空裂斬」と「貫通破」と「疾迅身」を身につけていた。
空裂斬はアンデムから。貫通破は先輩訓練生のピアナから。疾迅身を教官のゼウラノが使うところを見て習得したのだった。
しかしそれらの戦技の名称は、アルトの頭の中に浮かぶ文字では違う言葉で表されるのだった。
空裂斬は「切り裂くもの」という表記で表された。
貫通破は「貫くもの」。
疾迅身は「速きもの」といった感じだ。
それらの言葉はなぜか意識しようとする前は別の文字や記号に見えていて、読むことができないのだ。しかし文字に集中すると「速きもの」などといった、少年にもわかる言葉で表示されるのだった。
その理由はアルトには理解できなかったが、おそらくその読めない言葉とは神々の言葉で記されているからで、それを少年の理解できる言葉に翻訳されることで、やっと読めるようになるのだ。
(どうしよう……。戦技を身につけたけど、むやみに使わないほうがいいよね)
そんなふうに考えるアルトは、セリスやメアにもないしょにし、周囲にバレないよう気をつけながら訓練に参加していた。




