三人の誓い
子供にはとくに知っておいてほしい。
可能性はいくらでも「付け足せる」ということを。──もちろん大人でも、それどころか老人であっても、新たな才能を開花させた人はいる──
セリスにライバル意識をむきだしにしていたアンデムも、さすがにおとなしくなった。
というのもあのあと、教官に無断で戦技を使ったことがばれて、セリスとアンデムは厳しく叱られてしまったのだ。
もちろんアンデムのほうが厳しい罰を与えられたが、セリスもそのとばっちりを受けた形で、訓練場にある控え室の掃除をさせられたのだった。
アルトとメアも彼女の手伝いに名乗り出て、いま彼らは二つ目の控え室を掃除していた。
「そういえばアルト。両親から許可はもらえたの?」
「え?」
「ほら、十四になったら旅に出るって話したんでしょう?」
「ああ、うん。好きにしろって言われた」
本当は「神官の夢のお告げ」うんぬんの話があったのだが、そのことは言わずにおいたアルト。両親から許可は出たのには違いないし、変な誤解をされたくなかったのだろう。
「わたしもいいって言われたよぉ〜」
「これで私たちは傭兵仲間よ」
「まだ傭兵ギルドから等級章はもらってないよ」
「もう……自信をもってよね。あなたは私と稽古をして、それなりに鍛えられてるんだから」
彼女の言葉に少年は首をすくめて不満そうな顔をした。いままで一度だって彼女から一本も取れたことがないのだ。そんな顔になるのも頷ける。
確かにアルトは以前よりも強くなった。
しかし戦闘技術、戦う覚悟ともに少年はまだまだ未熟だった。
というよりセリスだけがぶっちぎりで同年代の誰よりも、技術や覚悟を有しているだけなのだが。
「とにかく! 私たちは仲間よ。幼なじみというだけじゃない。互いを助け合い、ともに旅する仲間になったの! だから二人とも傭兵ギルド参入試験に合格するのよ!」
セリスはめずらしく息巻いて言った。ちゃっかりと「自分は受かって当然」という態度を示したわけだが。
「わ、わかったよ。がんばるから……」
「うん、わたしもぉ〜」
こうして三人は共通する目標をかかげたのだった。
試験までは三年ある。子供時代の三年間を目的をもって努力するという活動は、彼らを大きく成長させるはずだ。
教官たちもそうした言葉を口々に言って、いかに子供のころの修行が大切かを説いていた。
だが、子供がそうした努力を自主的にするかというと、多くの場合そうではないのだ。
目標をもって取り組むということ自体が、多感な子供にはむずかしいのだ。あれこれと楽しいこと、雑多なものごとに気を取られるのが子供なのである。
子供も大人と同じで努力を嫌い、楽をすることばかり考えてしまう。
しかし、それでは大人になってから苦労するということを、大人は知っている。
やりたいことを見つけた大人は「子供のころからやっておけば」、といった想いを抱くものだ。
そしてその想いはおおよそ正しい。
子供のころから取り組んでおけば、大人になったときにはより一層、自分の望むものに一所懸命に打ち込むことができるからだ。
子供のころから楽をすることを覚えるより、子供のころから努力することを覚えた者が、結果を残せるのは至極当然の成り行きといえるだろう。
しかし子供はそのことを知らない。
経験したことのない挫折。
ふがいない自分への劣等感。
そうした想いを抱いたことのない子供には、理解することができないのである……
だからこそ才能ある人は幼いころから、周囲から見れば「努力」だと思われることをいとも簡単に行っていたり。あるいは苦悩し、投げ出したくなるような想いになっても、なんらかの理由により弱い自分と闘いながら、懸命に努力をつづけるのである。




