空裂斬
セリスのほうが主人公ぽいことをしている。
訓練場の砂の上で二人が木剣をかまえた。
セリスとアンデムの戦闘訓練は、それを見守る少年少女たちも緊張するほど緊迫感があった。
戦技を使用してもいい訓練は、教官が認めたときに限られていた。というのも、治癒魔法を使える治癒師がいないと危険だからだ。
メイカムの町にも治癒魔法を使える者はいるが人数もすくなく、さらに使用できる回数にも限りがあるのだ。
セリスは緊張していないのか、ゆっくりとまばたきしながら「そっちのタイミングでどうぞ」と、少年に告げた。
「そうかよ!」
アンデムは気合いとともに前に出て、鋭い攻撃をくり出した。
同年代の少年の中でも瞬発力のある彼の攻撃を、セリスはいとも簡単に回避してみせる。
問題は空裂斬だ──、少女はその瞬間を気を張って待っていた。
踏み込んできた少年を遠ざけるために、彼女は剣に剣をぶつけて少年の体を押し返す。
腕力でも体の使い方でもアンデムを上回るセリス。
うしろに転ばされそうになった少年とは逆に、セリスは自分からうしろに下がると、手招きをして空裂斬を使うよう挑発する。
「はぁあぁぁっ!」
木剣を振り上げ、やたらと大きなかまえから剣を振り下ろすアンデム。
その剣の軌道から白い斬線がすばやく飛翔した。
加護の力が少年の斬撃に力を与え、空気を引き裂く刃を形作った。
「フッ!」
正面から飛んできた斬撃をセリスは手にした木剣を薙ぎ払い、空裂斬の斬撃を打ち砕いた。
「ぉおおっ」
周囲の子供たちから歓声があがる。
決してアンデムの攻撃が遅かったわけではなかった。かなりの速さで迫ってきた斬撃を、少女は鋭い薙ぎ払いでたたき斬ったのだ。
「う、うそだっ……くそっ、くそォッ!!」
アンデムは怒りをあらわにし、二発の空裂斬を十字の形にななめに放ったが、先ほどよりも速度は落ちていた。
少女はその攻撃を圧倒的な速度の斬り上げと振り下ろしで打ち消すと、息を切らした少年はがっくりと地面にひざをついた。
「空裂斬を使えるだけでは黒魔は倒せないわよ」
冷たい声で言うと、うなだれる少年を残し、セリスはその場をあとにした。




