小訓練に参加
洗礼式を終えた子供は傭兵ギルドが企画する「小訓練」に参加ができる。
小訓練の「小」とは「子供」や「見習い」の意味があるらしい。
要するに傭兵となる前の準備期間に行う訓練というわけだ。
ギルドに属する傭兵が教官となって、子供たちに戦闘訓練などを教える小訓練は週に何度か開催される。
ここでは当然「戦闘の神アスール」の加護を授かった子供が優遇される傾向が強く、教官たちは熱意をもって彼らを鍛えにかかるのが通例だった。
その子供たちの中でも群を抜く、圧倒的な身体能力と戦闘センスをもつ少女がいるとうわさになった。
前々から傭兵たちのあいだで強い少女がいるという話は出ていたが、小訓練に参加したセリスは、ほかのアスールの加護をもつ少年少女の技量を圧倒していた。
アルトとメアも参加したが、セリスについていくのもやっとだった。──アルトのほうは特に。
メアは初日こそ基礎訓練をこなすだけで苦労している様子だったが二回、三回とこなすほどに慣れていった。彼女の加護によるものか、それとも彼女自身の適応能力の高さゆえかはわからないが。
三人の幼なじみは小訓練のない日も訓練場に集まり、基礎訓練や戦闘訓練を自主練習していた。
それでメアの体力はかなり鍛えられたようだ。
アルトも以前より持久力がつき、戦闘訓練もセリスの相手がそこそこ務まるくらいになっていた。──もっとも彼女はかなり手加減をしていた──
小訓練は運動能力の向上を目指し、町の外にある岩場で行われることもあった。丘を駆け上がったり、足場の悪い岩の上を飛び移って目的地まで早く移動する競争をしたりする野外訓練。
もうひとつは訓練場で行われる戦闘訓練で、こちらは参加した子供たち同士で実戦経験をすることもあった。
そんな訓練の中で、セリスにライバル心を向ける男の子がいた。
「おいセリス、おれと試合をしろ」そんなふうに喧嘩腰に言ってきた少年。
「ええ、いいわよ」
銀等級の傭兵を父にもつ少年は、すくなからず父に鍛えられていたので、強さには自負があったのだろう。
木剣を手に、少女に戦闘訓練を申し込んだのだ。
──結果は少年の惨敗だった。
あらゆる攻撃が躱され、受け流され、しまいには持っていた木剣を弾き飛ばされてしまった少年は、ぐうの音も出ないほどたたきのめされてしまったのである。
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