訓練を開始する三人
翌朝アルトは不思議な夢を見て目覚めた。
どんな内容だったかはほとんど覚えていなかったが、大きな白い石のテーブルをはさんで、見知らぬ人たち数名と会話したのを覚えていた。
どういうわけかその人たちは淡い光を放っており、姿形がぼんやりとしかわからなかったのが印象的だったので、覚えていたのだ。
「変な夢」
昨日は帰るなり気を紛らわせようと、腕立て伏せや屈伸などの運動をして疲れたので、そんなおかしな夢を見たんだろうと思うことにして、ベッドから起きあがった。
「メアに会いに行ってみようかな」
昨日はあのまま別れてしまったが、まだ泣いているなんてことはないだろう。彼女はすぎたことをくよくよしたりする性格でないことは知っていた。
朝食を食べて休んでいると、誰かがドアノッカーをたたいた。
「は──い」
玄関の近くまで来ていたアルトがドアを開けると、そこにはセリスとメアが立っていた。
「おはよう」
「う、うん。おはよう二人とも。──朝からどうしたの?」
昨日のことをどう言ったものかと悩んでいると、セリスは親指で後方を指さすしぐさをする。
「さあ、いくわよ」
「え?」
セリスは強引にアルトをつれ出すと、メアとともに走り出す。
「ほら、訓練よ。訓練」
「ぇえ〜~?」
いきなり走らされたアルトは不平を口にしようとしたが、腕を引っ張られまま傭兵ギルドの訓練場まで走らされたのだった。
こうして三人の特訓がはじまった。
それもこの日だけではない。
これから彼らは毎日のように訓練場での訓練と、教育部屋──町の区画ごとにいくつかある、文字や計算などを学ぶ小さな教室──を行き来する生活がはじまったのだ。
セリスは問答無用でアルトを付き合わせることに決めていた。
メアはもう了承済みで、彼女は積極的にギルドの訓練に参加する意志を持っていた。
三人で冒険の旅に出るという目標は、メアなりに思うところがあったのだろう。
セリスはアルトに正式に傭兵ギルドへの参加を願い出て、幼なじみ三人で小隊を組もうと訴えた。
「わかったよ……お父さんにも話してみる」
と、アルトも決意したのだった。
アルトたちが訓練場で稽古を重ねているとき、アルトの家にある工房を訪ねた人がいた。
それは洗礼式で儀式を執り行った、年老いた神官のホッブスだった。
「お話し、よろしいですかな」
神官は神妙な面もちで、アルトの父に話しかけた。




