アルトを選んだ理由
ベイオンの家を出て二人の友だちを追いかけようとしたセリスだったが、すでに二人の姿は見当たらなくなっていた。
メアを早くなぐさめてやりたいと思うと同時に、彼女はやはりアルトを旅の同行者としてつれて行きたいと思うようになった。
彼女が彼を冒険に誘ったのは、彼の芯の強さにあった。
気弱なところもある少年だが、仲間を守るためなら積極的に行動に移す部分があるのだ。
ときにはまわりを驚かせるくらいに向こう見ずな行動に出るアルト。
そんな少年だからこそ彼女は信頼を寄せているのだ。
「それにアルトはメアのことを……」
アルトにも話していないが、彼女はメアのことも世界を旅する冒険に誘おうと思っていた。
この三人なら巡礼の旅でもなんでもこなせるだろうと、彼女にしてはめずらしく、そんなふうに楽観的に考えていた。
彼女は今回の件で、新しい芽吹きのようなものを感じていた。
「アルトはメアが好きなのかしら」
メアのためにあそこまで怒ったのだ。きっと彼女のことが好きなのに違いない。彼女はそんなふうに考えてほほ笑んだ。あの二人ならきっといつまでも仲良くやっていける。
──恋愛というものにまだまだうといセリスたち。
十歳の少年少女たちの関係性が、夏を前にした季節に大きな変化を迎えようとしていた。
メアは怒って出て行ったアルトを探していた。
なぜだかは彼女自身にもわからなかったが、ともかく彼に会って、もう泣いていないと教えたかった。
そして、なぜベイオンはあんなにも自分に怒っていたのかを知りたかった。きっとアルトなら答えてくれるはず。
彼女にとって幼なじみの中でも一番身近な存在だったアルト。その彼の姿を探していたはずの彼女だが、彼女が向かっている先は、彼がいる公園とは逆の方向だった。
「アルトぉ〜~ど〜~こぉ〜~?」
少女はまた泣き出しそうになっていた。
しかし彼女が進んで行く方向に彼の姿はなく、とぼとぼと少女は自分の家に向かって歩いて行くのだった。
二人の幼なじみを探していたセリスは、メアとアルトの家へとつながる道で、少女の姿を見つけた。
「メア、待って」
うしろからセリスが声をかけると、ビスケットを食べながら泣きべそをかいているメアと目が合った。
「ぷっ」思わず吹き出したセリス。
めそめそとしながらも、自分の食欲に正直な彼女らしいとでも思ったのだろうか。
「なによぉ〜」
「お菓子を食べるだけの元気があるなら平気そうね」
二人は対照的な笑顔で笑い合うと、友人が作ったお菓子をひとつもらい、二人は仲良く談笑をはじめたのだった。
「ねえメア。私と世界を旅して回らない?」
「世界を? いいよぉ〜」
「や、やけにあっさり了承するわね」
さすがのセリスも、ぼんやりとした幼なじみの即答に困惑したようだ。
「だって傭兵になるって言ってたから。それって、この町の傭兵になるって意味じゃないでしょぉ?」
「ま、まあね……」
妙なところで鋭くなる友人に彼女は戸惑うばかりだった。
「それなら明日から訓練ね。メアは棒術か槍術。アルトと私は剣の稽古をしなくちゃ。十四歳まで毎日訓練よ!」
「えぇ〜~毎日ぃ? ──アルトもいっしょに世界を旅するのぉ?」
「そうよ。まだ了解は得てないけど、必ずいっしょに冒険の旅につれ出してみせるわ」
「冒険かぁ〜」
「冒険よ」
そう女の子たちは話して、くすくすと笑い合っていた。




