ベイオンに会いに行こう
アルトとセリスが素振りをしているところへメアがやって来た。彼女は小さな編み籠を手にしていて、にこにこと手を振りながら二人に近づいて行く。
「もぉ──、二人とも家にいないから探しちゃったぁ」
「ごめんごめん。ちょっとアルト相手に訓練したくなったのよ」
「わたしだって剣を使えるよぉ〜」
「メアは剣よりも槍や棒のほうが得意じゃないか」
少年が言うと少女はまんざらでもない顔をする。
なぜかはわからないがメアは長物の扱いが上手で、棒を持たせるとかなり手強いと、近所の悪ガキどものあいだで有名だった。
以前に悪ガキ二人組みを成敗したときも、彼女は長い棒を振り回して悪ガキをぶちのめしたのだ。
おっとりしたしゃべり方と見た目をしているが、セリスと訓練をつづけてきた彼女はそれなりの実力を持っているのだ。
「これからベイオンのところに行って、みんなでお菓子を食べよう」と、メアは持って来た編み籠の中身を見せる。
「どうしてベイオンのところに? 彼のことはそっとしておいたほうがいいんじゃない?」
「うん──、けどいつまでも落ち込んでいるっていうから、わたしたちでなぐさめてあげようよ」
「なぐさめをすなおに受け入れる奴じゃないって言ってるんだけど」
こんな具合にメアとセリスの言い合いがはじまってしまった。
メアはそれなりにベイオンと仲がいい(と彼女は思っている)が、セリスとは水と油の関係だった。
なぜ自分の両親があいつの家族と仲がいいのかまったく理解できない、と口々にセリスが言っているくらいだ。
それでもメアはめげずに彼女を誘って、ベイオンの家に行こうと訴えた。
「わたしたち、幼なじみでしょぉ」
甘えた声で言うメアにセリスは内心、舌打ちをしたい気分だった。
「……わかったわよ」
行けばいいんでしょと、ぶっきら棒に言うと歩き出したセリス。そのあとにメアとアルトがつづいていった。
三人はベイオンの家に向かう道すがら、少年についていろいろと話したが、加護を授からなかった彼の心を測りかねていた。
メアが近所のうわさ好きのおばさんから聞いたのは、ベイオンが洗礼式のあと姿が見えないということだった。
そこから少年がふさぎ込んでしまったのだとか、ずっと部屋に籠もって泣いているのだとか、勝手な臆測が語られはじめているのを知った。
「勝ち気なベイオンちゃんのことだから、加護をもらえなかったのが悔しかったのねぇ……」と話してくれたおばさんは、どこか「いい気味だ」とでも言い出しそうな顔をしていたが、メアは気づかなかった。
ベイオン少年は子供以外にも、いくらかの大人から鼻つまみ者として扱われているのだった。




