魔法加工の能力
家に帰ると、工房のほうから金鎚を振るう音が聴こえ、少年は工房を覗いた。
小さな家の小さな庭に、小さな鍛冶工房があるのだ。
アルトは幼少のころからそこで父親の手伝いをすることもあった。
彼の父は武器を造る以外にも、包丁や鍋を造ることすらある、こだわりを持たない職人だった。
魔法印付与という技能を与えられながらも、その加護の力を使ったことはそんなに多くはなかったが、その日はたまたま、傭兵ギルドに所属する傭兵からの依頼で、魔法の力を込めた長剣を造る予定が入っていた。
「アルト、見ていくか」
「うん」
金属の刃に力を込めるには魔力を秘める魔力結晶を使い、それを加工する技術を持った鍛冶師か魔法使いによって、武器に魔法の力が込められるのである。
今回の長剣には斬撃の威力を上げる「斬撃強化」の印を付与することになっていた。
少年の父親は金床の上に長剣を置くと、魔力結晶をにぎって結晶を砕いた。
するとロベルトの手が光をまとった。
その手で金鎚をつかむと、金鎚も光を放ちはじめる。
アルトはその幻想的な光を見ながら、父親が剣に軽く金鎚を振り下ろすのを見守っていた。
その行為はまるで金鎚と剣を使った儀式をしているようだった。
力を入れて金鎚を打ちつけているのではなく、軽く「かちん、かちん」と音がするくらいの力加減で、金鎚で何度か剣の刃をたたいた。
「終わったぞ」
少年は食い入るように、金鎚から剣に光が溶け込んでいくのを見ていた。
銀色の刃の一部に青白い紋様が映し出され、それが光の反射の中で見えたり消えたりしている。
すると少年の中に不思議な感覚が感じられた。
その感覚が新たな加護の技能を獲得したものだと、少年には理解できた。
(加護の能力を使うところを見るだけでいいんだ!)
アルトの驚きは、父親の魔法加工の技能を習得しただけに収まらなかった。
魔法の源である魔力に関する感覚が彼の中に芽生え、自身の中にある魔法の力が具体性をもって彼と結びついたのだ。
鑑定の力のおかげか、自身の体に結びつく魔力をはっきりと捉え、自身が魔法加工という鍛冶技術を習得したことを自覚したのである。
それは彼に、新たに魔法を習得することが可能だと意識させたのだった。




