謎めいた加護
三人は店を出た。
真剣な表情のまま黙り込んでしまったアルトは、何かを必死に考えているようだった。
少年が聖なる短刀とされた商品を手にしたとき、彼の頭にはそれが本物でないと判別できた。それは鑑定の力だと少年は感じていた。
(ぼくの与えられた加護の能力は、鑑定だったのか?)
けどそれならば鑑定士に見抜けないものだろうか。鑑定の加護を持つ人はそれなりの数がいる。
それに鑑定の力を持つ人はオルニスの加護、つまり知恵の神の加護を受けた人のはずだった。
「ねえ、どうしたの?」
店の外で立ち尽くしたアルトを心配してメアが声をかけた。
「あ……、いや。なんでもないよ」
「うそ、ぜったい何かあったでしょぉ」
メアが幼なじみ特権を行使して、彼から根掘り葉掘り聞き出そうとしていると、その横からセリスが言った。
「まあ待って。ここはそっとしておきましょうメア。アルトは加護について何か気づいたことがあるのかもしれないし」
彼女にはわかっていたのだ。少年の変化が、加護の能力に気づいたものだということに。
それがどういった能力の発現だったのかセリスにはわからないが、ただの「鑑定」というだけではないはずだと、少女も考えてるようだった。
幸運の神であるヘレイスが、虹色の光を発するほどの加護を与えたアルトが、鑑定の能力を与えられただけ、などということはありえないとセリスは踏んでいた。
謎めいた神様であるヘレイス。人間を試すような性格をしていると言われる幸運の神。その神様が特別な光を示して与えた加護。
そこまで考えてセリスは、アルトの加護について詮索するのを止めようと思った。
特別な力を与えられた可能性がある友人のことは気にかかるが、ヘレイスはその加護を探る者に不幸を送り込んでくるかもしれない。
少女はそんな想像をし、アルトが抱えてしまった幸運の神の加護について、言葉を用いて探るのは危険だと考えた。
「さあ私の家に戻って、会食のつづきをしましょうよ。母が焼き菓子を作って待っているから」
その言葉にメアはよろこび、早く戻ろうと口にしはじめた。すっかりアルトの異変について考えるのをやめてしまった様子だ。
セリスは悩んでいる少年の背中を軽くたたくと、「行きましょう」と優しく彼の背中を押した。




