つまらないので番犬との模擬戦受けてみる。
俺は応接室から出て足早に通路の角を曲がる。
よしっ!! 最高に決まった。
悪役としてのムーブ、侯爵達の最後のあの驚いた顔はとても気持ちの良いものだった。
ニヤケ顔を誰にも見られない為に足早にここまで来たのだ。
勿論『真実の珠』の事も侯爵様が入れ替わっている事も最初から全てわかっていた。なぜなら
「俺には『鑑定』のスキルがあるからな」
そう、部屋に入った直後から俺は『鑑定』を使い自分の思い通りに誘導していた。
真実の珠については嘘はつかず曖昧な事を言って濁す事で対策した。
「それにしてもあのおっさん、強かったな」
途中、目の前で魔力をぶつけられた時は冷や汗を掻いた。一生懸命冷静さを取り繕った。
まあ、普段からルシアの魔力を当てられていた俺からすると朝飯前だったが。
【セバス・チャン】 レベル105
スキル
『影渡』
称号
《クロムレント侯爵の影》
《執事長》 《元A級冒険者》
鑑定で彼を覗いた時は目が飛び出そうになった。かなりの実力者だ。
因みに参考までに俺のレベルは53だ。うん、勝てるはずがないよね。だって仕方ないよね、アイツらとクエストとかダンジョンとか行ったら俺が倒す前に勝手に全部倒すんだもん。レベル上がんないよ。そもそも俺戦闘スキルないし。
アイツら?アイツらはもうバケモンだよ。途中から強くなりすぎて鑑定するのが怖かったから。
でもこれであの2人には俺が只者じゃないって言うのは印象付けれたはず。下手に接触はしてこないだろう。
自然と口角があがる。
これで俺の悪役への道に一歩また近づいた。
「ちょっといいか……って何をやってるんだ貴様」
「っ!?」
びっくりした、いつの間にかヘレナが後ろに立っていた。彼女は不審者を見るような目で俺のことを見ている。
「な、何でもないですよ。 それより何か私に用がありましたか??」
「あぁ、お前に一つ頼みたいことがある」
「何ですか?」
「私と手合わせをしてほしい」
ヘレナは真剣な目でそう懇願してきた。
「お断りします」
なので俺は丁重にお断りした。
「な、何故だっ!」
「何故って私にメリットないですし、それに私戦闘スキル持ってませんから」
「嘘をつけっ! 喰人鬼を一撃で倒したじゃないかっ!!」
「それはそうですけど、戦闘スキルを持っていないのは事実です」
「そんな……。たっ頼むっ!! 一度だけでいいから、そうだ、お前が勝てば何でも一つお願い事を聞いてやるっ!!」
何故そこまでして俺と戦いたいのか。でも勝てば何でも一つお願い事を聞いてもらえるのか……。
俺はニヤリと笑った。
「仕方ないですね」
「な、何だそのいやらしい笑みは……はっ!! エッチなお願いは無しだぞっ!!」
「失礼ですね、勿論わかっていますよ」
誰が好き好んでこんな色気もない番犬の事を抱くかよ。
何やら何かを感じ取ったのかムスッとした様子のヘレナと共に騎士団の訓練場まで移動することにした。
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ヘレナ視点
模擬戦をする前にお互い武器を選んでいる。私は真剣ではないが勿論剣を選ぶ。ふと彼の方を見ると私と同じ剣を手に取っている。
「お前は剣を使えるのか??」
彼が武器を使っている所を見たことがない。不思議に思い私はそう聞いてみた。
「使ったことはないですが持ったことはありますよ。よっと、これでいいか」
彼は適当に剣を選び取り、数回振っているがどこからどうみても素人にしか見えない。
「舐めているのか??」
私が彼に問いただすと
「いえ、私は全ての武器を使ったことはありません。なので何を選んでも一緒です。馬鹿にしている訳ではなくいつでも真剣ですよ。安心してください。どうせ私が勝ちますから」
大した自信だ。本当にイライラする男だ。思い返せば出会った瞬間から気に食わなかった。私が苦戦したモンスターを一瞬で倒したり、お嬢様を利用したり、いつも何を考えているのかわからないし、何より底が見えない恐ろしさを持っている。
わかっている。私が弱かったから嫉妬しているのだ。自分が弱いから、あの時、お嬢様を危険に晒した自分自身の弱さにイラついている。
だからここで絶対にこの男に勝たないといけない。お嬢様の隣に立っていいんだって。まだお嬢様の事を守る資格があるんだって証明したい。
だからここで絶対に負けるわけにはいかないんだ。
次回ヘレナとの模擬戦です。
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