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5校連合チームで挑む甲子園 〜160cm台の怪物二刀流、全国を震わせる〜  作者: ウエス 端
決勝

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第86話 油断と揺さぶり

 バシィーーンッ!!


「ウヒョーッ! ものごっつう手応えのある感触っタイ!!」


 真自由学園との決勝戦、3回裏にウチが2点を返して3−4と1点差に詰め寄った矢先の4回表。


 相手6番バッターの春山(はるやま)に初球の真ん中高めストレートをジャストミートされてしまった。


 正直言えばナメてた。前の打席ではパワフルだが大振りのスイングで軽く三球三振に仕留めたから。


 だが今回は明確な違いがあった。分かってたはずなのに……。


 3回裏の攻撃でオレが放ったセンターオーバーの大飛球にギリギリで追いつき、フェンスにぶつかりながらスーパーキャッチしたのがこの男なのだ。


 そしてファインプレーをした選手が直後の打席で勢いに乗ってヒットやホームランを打つ、というのは高校野球に限らずよく目にする光景。


 春山も例に漏れず、勢いそのままに173キロで高めにノビるストレートを捉えて……ああ、打球はもうバックスクリーンに消えていった。


「いやっほーい! それじゃ、いつものやつ披露せねばならんばい!」


 いつものやつだと? もうすぐホームベースなのに何を……あっ!!


「ヒョイッと側転からの……クルリンパッ! てか! 決まったばい!!」


「でたー! 春山のバク転ホームインパフォーマンス!」

「今日も良いもん見せてもらったぜー!」


 すげーな。計ったようにホームベース上にピッタリ着地しやがった。相手側スタンドは大盛り上がりだ。


 実際、全身バネって感じの高い跳躍からきれいに1回転して、そこらの体操選手顔負けの見事な技だったよ。


 後でウチの原塚さん……元体操選手だった人に聞いてみたら、身体能力が凄いので余裕をもって技を決められると高評価だった。


 それはともかく球審からヤツに、次は控えるようにと注意があった。これはこれで屈辱だな……もう2度と打たせるかっての。


 この鬱憤、晴らさでおくべきか……!


「うりゃあああっ!!」


 ズバンッ!!


「ストライク! バッターアウト!」


 ふうっ。後続は3人連続で三球三振に仕留めてやった。


 しかし試合は中盤に入るというのに3−5と2点ビハインドに戻っちまった。兎に角少しでも早く追いつきたいな。


◇


「ストライク! バッターアウト!」


 4回裏の攻撃はあっさり三者凡退で終わった。ちくしょう、追い上げムードだったのに……。


 3回裏から登板している相手側3人目のピッチャー野弘(のひろ)の超早いテンポと緩急の投球術にウチのバッターたちは翻弄されたのだ。


 だが次の回は誰か塁に出ればオレに回ってくる。同点に、いや一気に逆転するチャンスが来るかも。


 だからこそ、この5回表は失点を絶対に避けなければならない。


 そんなオレたちに立ちはだかるのは。


「そろそろアイツの出番……ここで追加点を取ってダメ押しといきたいぞいや!」


 真自由学園の1番バッターでありこの回先頭の『当たり屋』金盛(かなもり)だ。


 さて今回はどうやって打ち取るべきか。ベース近くギリギリに立って覆いかぶさるように構えるから、内角に投げにくい。


 かといって外角一辺倒はちょっと。狙いが絞れるとバットに当てやすいし、ヒットにならなくても粘られるだけで厄介だ。


 当てないように細心の注意を払って内角へ投げる……内容的には地味だがこれが最善手のはず。


 というわけでプレートを踏む位置を一塁側から三塁側へとさりげなく変えて。


 初球は内角膝上を狙い撃つ!


「うりゃあああっ!!」


「こ、これは……ヤバいぞいや!」


 ズバンッ!!


「ストライク!」


 うっしゃああ! 見事にコーナーギリギリを射抜いてやった!


 そしてプレートの位置変更が効果的だった。


 左ピッチャーが右打者へクロスで投げ込む角度がつかなくなるというデメリットはあるが、避けながら当たりにいくというヤツの得意技がやりづらくなったのは間違いない。


 これでこの勝負もらった。続けて内角をガンガン攻めてやる。


 強気に2球目を投げようとした瞬間の出来事だった。


「ならばこういう打ち方もあるがいや!」


 ブオッ! と効果音が聞こえてきそうな勢いで金盛は左足をベースの上に振り上げた。


「うわっ!!」


「どこ投げてんだオージロウ!」


 投げたあと聞こえてきたのはバックネットにガシャーンとボールが当たった音であった。


「ボール! カウント1−1!」


「おおっ! なんか知らんがピッチャーがいきなり大暴投だ!」

「ヘイヘイ! ウチの金盛にビビってるぜアイツ!」


 ちくしょう、相手側スタンドとはいえ言いたい放題言いやがって。


 それにしても、やられた……!


 金盛はあの元MLBバッターが昔やってた『振り子打法』の如く、いやそれ以上に大きく左足をベース上に振り上げたのだ。


 それだけのことで普段なら気にしなかっただろう。


 だけど『一度当ててしまった』相手なので、オレにとっては十分過ぎるプレッシャーであった。


 しかも不意打ちで、投げる瞬間に咄嗟に投げるコースを変えようとしてああなってしまったのだ。


 クソッ。あんなやり方に負けてたまるか!


 そう意気込んで3球目を投げたはいいものの。


「ボール!」


 完全にリズムを狂わされた……そして最終的には。


「ボール! フォアボール!」


「ラッキー! ピッチャーが勝手に崩れたぞいや!」


 何が勝手にだよ、わかって仕掛けたくせに!


 でもそのプレッシャーを跳ね返せなかった……オレもまだまだ精神的に未熟だなぁ。


 そしてまだ落ち着きが戻りきらないオレに真自由学園は畳み掛けてくる。


「痛ぇぇっ! じゃっどん、なんとかバットを吹き飛ばされずに送りバント成功したっど!」


 2番の福到(ふくとう)がすかさず送りバントでランナーを2塁に進めてきた。


 ここで規格外のパワーと変則的な『仰け反り広角打法』で振り遅れながらも外野フェンスまで打球を弾き返す男、3番ナギータを左打席に迎えることになったのである。



<あとがき>

読んでいただいてありがとうございます

次回更新は10月9日(金)の予定です

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