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5校連合チームで挑む甲子園 〜160cm台の怪物二刀流、全国を震わせる〜  作者: ウエス 端
決勝

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86/89

第85話 意識させられる

「捉えたっぴょ!」


 バシィッ!! とボールをバットの真芯で弾き返した打球音が響きわたった。


 3回裏のウチの攻撃、先頭バッターの近海(ちかみ)が相手ピッチャー箸本(はしもと)の角度のあるストレートをセンター前に打ち返したのだ。


 そして続く中地さんも。


「オージロウのボールに比べりゃ、角度さえ合えばどうってことねえ!」


 またもやバシーンッ! と今度はレフト前に連打で無死一、二塁のチャンスを作ってくれたのだ。


 更に阿戸さんが。


「低めに落ちるスプリットは俺の大好物だぜぇ〜!」


 グワッシーンッ!!


 アッパースイングでカチ上げた打球はレフト線間際のフェンス直撃……!


「これで2点差だっぴょ!」


 近海が悠々とホームイン。3連打で2−4と完全に追い上げムードだ。


「行け〜連合チームぅ! 一気に逆転だ〜!」

「は、箸本が1回しかもたないんて、どうなってんだよ」


 もちろんスタンドの声援の勢いもウチの方に傾いてる。


 3回表の相手の攻撃で中軸を単打一つの無失点で切り抜けたのが流れを変えたのか。苦労して抑えた甲斐があったってもんだ。


 そしてなおもノーアウトでランナーが二、三塁に残ってる。さっきの打球の当たりが良すぎて中地さんは三塁止まりとなったが、次のしょーたも勢いに乗ってホームへ返してくれるに違いない。


「オージロウくん! 仕上げは頼んだよ!」

「ああ、任せてください!」


 古池監督も珍しく勢いに乗って声をかけてきた。仕上げってことはしょーたに何か策を仕掛けさせるのかもしれん。


 それじゃサークルから箸本の軌道をじっくり見ておこう……とバットとヘルメットを持ってベンチを出た瞬間のことだった。


「タイム!」


 もうピッチャー交代かよ。


 まあ、真自由学園は序盤をブルペンデーの如く小刻みに投手を継投して中盤から1年生エース鍬形(くわがた)に繋ぐ、という運用なのでいつものことかもしれんが。


 それにしたって結果的に1回毎に交代する羽目になっちゃってる。


 ウチとしては鍬形を早く引きずり出せると前向きに捉えるべきか。


 などと考えてたら相手側ブルペンから慌ただしく駆けてきた選手が……どうやら左利きのようだ。


 そして場内アナウンスから聞こえてきた名前は『野弘(のひろ)』。データでは確か……小刻み継投要員かつ左のワンポイント、だったかな。


 オレに直接ぶつけるつもりだったんだろうけど、箸本が思ったより早く打たれ始めたので急遽登板となったに違いない。


 なんでかっていうと投球練習を慌ただしくこなしてるんで……どうやら投げる前から勝負は見えている。


「しょーた! 慌てずじっくり様子見ていこう!」


 右打席に入ったところで声をかけると、こっちへ軽く手を上げて応えてから落ち着いて構え始めた。これなら大丈夫だろう。


 さて、初球は……外角にボール球の変化球。警戒してるのはいいけどそのまま自滅しそうだなこりゃ。


 そんな風に相手をナメてしまっていたのがいけなかった。


「ストライク!」

「ストライク! カウント1−2!」


 しょーたが打席で構え直すとほぼ同時にテンポ良く変化球を散らすように投げ込んでくる野弘。


 いつサイン交換してるのかってくらいの早さで……しまった。ヤツは慌ててたんじゃなくて、元から超早いテンポで投げるタイプだったんだ。


 しょーたは元より古池監督も策を仕掛けるタイミングを失ってしまい、チャンスなのに追い込まれたのはしょーたの方だ。


 そしてこちらに考える余裕を与えず投げ込んできた4球目は……。


「うわあっ! は、速いっ!!」


 ズバンッ!!


「ストライク! バッターアウト!」


 なんと真ん中高めのボール気味ストレートを振らされてあっさり三振に終わった。


 どんだけ速いのかと球速表示を見たら149キロ。確かにキレがあったけど今どき150キロ前後なんて高校生でも珍しくはない。


 つまりテンポと緩急という投球術にまんまとハメられちまったわけだ。


「いいぞ野弘ー! いつも通りの手早い火消しはさすがだぜー!」

「な、なにが何だか分からないうちに三振させられるなんて」


 スタンドの雰囲気まで変わり始めてる。思ったよりも手ごわい相手だぜコイツは。


「ドンマイしょーた! 手玉に取られたカタキはオレがとってやるよ」

「……ああ、悪いな。頼むよ」


 さすがに今は返答する気力が湧かないらしい。まあこっちもこれ以上気遣う余裕がないので黙って左打席へと入る。


 できるだけ時間をかけて構えて相手のテンポとリズムを狂わせないと。


 さあ初球は……ってもう投げ始めてる!


 内角低め、ストレートか?


 ズバンッ!!


「……ストライク!」


 ツーシームというかシンカー系のボールかな。コーナーギリギリいっぱいに決まってる。


 コントロールには相当自信があるらしい。そしてオレを打ち取って尚且つ点も与えないという強固な意志を感じた。


「おい、野手が右に寄りすぎてないか?」

「外野手が2人しか……ってライトがほぼ内野じゃん!」


 いつの間にか思い切ったシフトを敷いてやがった。オレにセカンド方向へゴロを打たせるためにセカンドとライトで一二塁間のスペースをカバーして、しかもかなり深めに守ってる。


 で、ショートがセカンドベース付近、サードが三遊間か。センターとレフトもかなり右寄りに移動してた。


 となるとゴロを打たせるようなコースと球種で……考える間もなく2球目が。だがさっきより低い!


 ズバンッ!!


「ストライク! カウント0−2!」


 やられた。キレの良いフォーシームのストレートだ。


 初球のツーシームが印象に残り過ぎた。それにシフトが目に入ってたから余計に……。


 追い込んですぐに勝負をかけてくるのか……考える余裕も与えられず3球目が来る!


 ズバンッ!!


「……ボール!」


 フロントドアのスライダー……いやカットボールかな?


 さっきより微妙に低いのでとにかく見送った。球審の判断がどう出るかだったけど、とりあえず命拾いしたぜ。


 ここまでは球速が速いボールばかりだけどしょーたの時みたいに緩急は使わないのだろうか。


 と思ってると間髪入れず投げてきた4球目は……途中からブレーキがかかってボールが来ない! チェンジアップか!?


 ボールになるか微妙だな……態勢が崩されそうになっても下半身は粘ってバットに当ててやる!


 バッコーンッ!!


 詰まりながらも広角打法でレフトスタンド方向へ大きく打ち返した打球は。


「ファウル!」


 なかなかの緩急だったけど、なんとかついていけた。野弘の球速がもっと速かったら危なかったかも。


 5球目は一転して外角ストレート……なのか? それともバックドアのツーシーム?


 考えてないからギリギリまで引きつけて見極めるしか……!


 ズバンッ!!


 と決まったが誘い球のボール。


 直前でフォーシームのバックスピンだと見切った。


 それにしても予測しづらい配球だな。シフトを敷いてるのに……って、ああそうか。


 シフト自体が意識させることが目的なら……。


 というわけで6球目は腹をくくった。


 相変わらず超早いテンポで投げてくるが……悪いけどもう既に決めてるから!


「思ったよりも粘られたが……これで終わりだ! てえええいっ!!」


「うりゃあああっ!!」


 バシィーーンッ!!


 内角低めから落ち幅の大きなカットボールを広角に左中間へ打ち返した。


 シフトの方向へ打たせるならツーシーム……或いはフロントドアのカットボールだが。


 どっちも先に見せて意識させて、実は狙いは空振り三振に仕留めることだった。


 これでスリーラン、逆転だ……。


「そうはいかんタイ!」


 ドカッ!! とフェンスに身体がぶつかる音が響き渡る。


 相手のセンターが打球に追いついてフェンスギリギリでキャッチしやがった。


 ちくしょう、少し詰まってたのか。


 まあいい、3塁ランナーはタッチアップで悠々と帰ってきて遂に1点差……!


 十分に射程範囲内だ。あと2回は打席が回ってくるはずだからソロホームラン2本で逆転できる。


 これで本格的にピッチングも乗っていけそうだ。



<あとがき>

読んでいただいてありがとうございます

次回更新は10月5日(月)の予定です

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