↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5校連合チームで挑む甲子園 〜160cm台の怪物二刀流、全国を震わせる〜  作者: ウエス 端
決勝

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
85/90

第84話 確信を持って投げる

「なるほど、そういう事か。首を痛めたとかそういうわけじゃなかったんだな」


 3回表の真自由学園の攻撃は連続三振でツーアウトに追い込んだのだが。


 3番ナギータへの4球目で咄嗟にやった『あっち向いてホイ投法』を見た古池監督が心配して勝崎さんを伝令として送り込んできたのだ。


 で、その理由……どうやら顔にクセが出てコースが読まれてるから、というのを説明して納得してもらったところだ。


「というわけで心配いらないんでベンチに帰っていいっすよ」


「え〜、せっかく来たんだからもう少しいるよ。それでオージロウとしょーたくんは喜与間(きよま)と柄冬(えふゆ)を抑える自身はあるの?」


「まあたぶん大丈夫っす」

「オージロウ、お前なあ! そんな簡単に言うんじゃねーよ」


「うーん。しょーたくんのリードの方針は?」


「弱点とかまだわかってないし、丁寧にコースを突いていく事くらいしか」


「そんなことより柄冬から感じる『威圧感』をなんとかしねーと。アイツがサークルにいると喜与間の打席でもなんか影響あんだよ」


「そういうのはオージロウの気合の入れ方の問題だろ?」


「いやいやそんなレベルの話じゃねーって!」


「2人ともモメない! じゃあ基本線はギリギリを突いていって、カウントが悪くなったら塁に出して後ろのバッターで勝負する、にしようか。これ以上の失点は避けたいし、ツーアウト取ってるんだから無理しないでいいと思う。それじゃ帰るから!」


 つまり敬遠かよ。そんな面白くないこと誰がやるかってっんだ。


「あの。今回もよろしくお願いします、オージロウさん」


「ん? あ、ああ」


 おっと、喜与間が右打席に入って1年生とは思えぬ落ち着きぶりで一礼してから構えに入る。


 コレなんだよ、そこはかとなく存在感でオレにプレッシャーを与えてくるんだ。


 だけど怯んでばかりもいられない。ヤツの深い懐にまずは一撃お見舞いしてやる。


「うりゃあああっ!!」


 ズバンッ!!


「ストライク!」


「うおおーっ! 内角にズバッと172キロきまった! ありゃバッター手がでねえぞ!」

「そんなの喜与間には関係ねーよ! 今度はお前のデカいやつ頼んだぞー!」


 一度はブラスバンドの曲以外は落ち着いてたスタンドがざわめき始めて、かつて甲子園名物だったらしい真自由学園の人文字が色々なメッセージを出してる。


 それはともかく、喜与間が何を狙ってるのかこっちからは全く見えてこねーんだよな。


 前の打席では外角のボールゾーンに外すボールをあえて狙ってきた。だが今回はそういう油断はしない……全て全力でギリギリを突いていってやる。


「うりゃあああっ!!」


 ズバンッ!!


「ストライク! カウント0−2!」


 外角低めが決まった……ここまではいい。喜与間はここからが問題だ。


 しょーたは……わかってるな。ここは遊び無しで勝負に行こう。


 なあに、顔はできるだけ見えないように投げるからコースは読めないはず。その時点でオレの球速と球威に付いてくるのは難しいのだ。


 3球目は得意のノビのある内角高め。これで終わりだ!


「うりゃあああっ!!」


「これなら合わせられる! そいやっ!」


 パシィーーンッ!!


 う、嘘だろ!?


 またもや軽いスイングで反射的に当ててきた……打球は無情にもセカンドベースを越えてセンター前へとポトリと落ちる。


 こんなの初めてだ。今までの相手はみんな軽く合わせようとしても球威に押されてまともに飛ばせない、それどころか当てようとしても当たらなかったのに。


 軽いスイングでも力負けせず外野まで運んで、余裕で1塁ベースを陥れた喜与間には底しれぬモノを感じて怖いくらいだ。


「ボウズ! なんやオモロいことやっとるけど、そういうんは『付け焼き刃』っていうんやないかな? まあどっちでもええんやけどな」


 次はパンチパーマに額の傷痕という迫力ある姿で左打席に立つ柄冬。


 落ち着いた余裕な話し方がなんとも言えない威圧感を醸し出している。


 またデバフがかかって腕が縮こまった状態で相手の狙ってるボールを投げると、それこそ追撃の1打を食らいかねない。


 こっちも落ち着いて飲み込まれないように、かつ程よく緊張感は保ち続けないといけない。


 こういう相手に勝負を長引かせるのはそれこそ飲み込まれかねない。かといって投げ急いだら余計に……。


 というわけで2球目か3球目に勝負をかけねば。だからこそ初球は大事。


 どうせ狙い球を一振りで捉えようとしてくるのだから、あっち向いてホイ投法は封印だ。ヤツの言う通り中途半端なことはやらない。


 そして思い切った配球でこちらが主導権を握るのだ。


 しょーたの要求には何度も首を振ってこちらの要望に応じさせる。


 その様子を間違いなくジッと見ている柄冬。オレは迷ってるんじゃなくて確固たる意志を持って首を振るのをどう捉えたか。


 そして最大限に集中力を全身にみなぎらせて初球を投げ込む!


「うりゃあああっ!!」


「ど真ん中……そやけど失投やない……!」


 ズバンッ!!


「ストライク!」


 ふう〜。渾身の173キロが決まってひと安心。


 ここで気が抜けそうになるのを必死でこらえて2球目を外角低めへと投げ始める。


「うりゃあああっ!!」


「……」


 ズバンッ!!


「ストライク! カウント0−2!」


 ここまでの経過はスコア上はさっきの喜与間と同じ。だけど手探りではなく、一つ一つに全集中して挑んでいる。


 さあ、次で終わらせる。遊びは無し……これも確信を持ってしょーたのサインに首を振る。


 今回は2、3度振ると察したようで諦めてオレの要望通りに構えてくれた。すまねーな相棒。


 そしてあえてミットだけを見つめて、セットポジションから軸足に溜めた力を踏み出す右足に込めて。


 あえてコンパクトに力まず、されど指先からビシッと音が出るくらい回転をつけながら。


 左腕を一気に振り下ろす!


「うりゃあああっ!!!」


「ホンマにまたど真ん中投げよった……狙い球とは違うけど、そやけどなっ!!!」


 ズバンッ!!!


「ストライク! バッターアウト!」


「きたーー! 今日最速の174キロでズバッと空振りに仕留めたあ!」

「柄冬があんな絶好球とらえられないなんて……なんて気迫だよあのピッチャー!」


 ふい〜っ! 柄冬の重圧半端なかったぜ……。


 だけど確信を持って投げ続けたことで正面からはね返した。自分で自分を褒めてやりたい。


 でもしょーたからはまた怒鳴られそうだ……やれやれ。



<あとがき>

読んでいただいてありがとうございます

次回更新は10月2日(金)の予定です

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。