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5校連合チームで挑む甲子園 〜160cm台の怪物二刀流、全国を震わせる〜  作者: ウエス 端
決勝

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第83話 あっちを向いてみる

 3回表、真自由学園の攻撃中。


 先頭の福到(ふくとう)を三振に仕留めてホッとしたのも束の間……3番バッターの悠岐屋(ゆうきや) 凪太(なぎた)、通称ナギータが左打席に入ろうとしている。


 コイツにも前の打席で打たれた借りを返さねえとな。などと考えていたら、真自由学園側スタンドのブラスバンドがアップテンポな曲を奏で始めた。


 えーと、聞いたことはあるけどなんだったかな。


 思い出そうと唸っていたらナギータが左打席に入りながら話しかけてきた。


「おっ! ピンクソレルZ(ゼータ)の最新曲来たっちゃ! じゃけえ、このアップテンポな曲がおれっちの闘争心を激しく刺激するんじゃあ!」


 そうそれ。やっと喉につっかえたものが取れたようなスッキリ感!


 ちなみにピンクソレルZとは女子4人組の人気アイドルユニットで、ナギータはそのファンらしい。


「おいオージロウ! さっさと投げえや! この曲が終わらんうちにホームラン打たんといけんのじゃ、おれっちは!」


 この野郎、よくもヌケヌケと!


 って熱くなっちゃだめだ。真自由学園はオレが高めと低めに投げる時のクセか何かを見つけたらしいので、下手に投げると粘られる。


 いや、このナギータについては本当に致命傷になりかねない。


 ヤツは速いボールに押されても、後ろの軸足に体重を残して仰け反るような体勢から広角に打ち返せるのだ。


 つまり、打つポイントも後ろにずらせるから振り遅れてもボールを捉えやすくなる。


 前の打席で打たれたのも、その独特な打法とそれで詰まらずに弾き返せる規格外のパワーがあるから。


 というわけで、とりあえず投げられるのはバッターのズボンのベルト付近の高さ……普通なら打ち頃のコースだ。


 だけど球威で押していくには、少しでも高さがわかるタイミングが遅い方がいい。それじゃあ初球はこれで行くぜ……。


 内角ベルト付近の高さに渾身のストレートで空振りを狙う!


「うりゃあああっ!!」


「おっと、投球フォームでわからんかったのぉ〜。だが、逆に言えば高めでも低めでもない……じゃけえええっ!!」


 ガコッ!!


「ファウル!」


「うおおー! 今日最速の171キロ出たあー!」

「でもナギータも負けじとバットに当ててる!」


 クソッ。クセが出ないのを『それ以外』と早くも認識してしまったか。


 これじゃあどこ投げたって事前にある程度のコースをイメージされてしまう。ましてやナギータ……。


 せめてクセがわかればどうにかなるのに。


 そう言えばノーワインドアップでもセットアップでも関係なしに当てられてる。


 ということは……一旦軸足をプレートから外して、セットポジションで構え直す。


 そして2球目の要求はボールゾーンに……しょーたのヤツ、勝負を避けるつもりか。


 まあいい、ここはそれに従おう。というわけで外角低め……。


 ズバンッ!!


「ボール! カウント1−1!」


「おっ、ピッチャー逃げ腰じゃねーか?」

「ナギータ、ガツンとでけえの頼むぞ!」


 スタンドから色々聞こえてくるけど好きに言わせておけばいいさ。


 次は……内角高めボールゾーンか。でもここは悪いけど。


「うりゃあああ!!」


「高めじゃけえええっ!!」


 バコーンッ!!


「ファウル! カウント1−2!」


 高めのノビるボールにも付いてきた。タイミングが合ってきてる……次は本当にヤバいかも。


 だがこれではっきりした。クセが具体的に何かはわからんが、その出処は……右足を上げてから左腕をテイクバックする寸前。


 おそらく顔だろう。ヤツは高め低め関係なくその瞬間に腕をピクッと反応させてた。


 ならば最後は……もう一度プレートを外してノーワインドアップに戻して。


 バッターに正対してから始動して、一度後ろに引いた右足を上げた瞬間……。


「何だアイツ、顔だけ後ろ向けてる!」

「あっち向いてホイかよ!?」


 ふふふ。スタンドがどよめいている。おそらくナギータも……。


 そこからすぐにコンパクトなテイクバックに移り、右足を踏み出しつつ顔を前に回して。


 一気に左腕を投げ下ろす!


「うりゃあああっ!!!」


「……クソッ、コースが読めんかった。じゃけえええっ!!」


 ズバンッ!!


「ストライク! バッターアウト!」


「おっしゃあああー! あっち向いてホイ投法で空振り三振に仕留めたー!」

「あ、あんなやり方でバッターを惑わせるなんて」


 ふう。同じような投法をやってたという少し昔のプロ野球のピッチャーの話を思い出して咄嗟にやってみたが、上手くいった。


 とりあえずこの回はこれで凌ぐか。といっても次は4番の喜与間(きよま)……簡単な相手じゃない。



<あとがき>

読んでいただいてありがとうございます

次回更新は9月28日(月)の予定です

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