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5校連合チームで挑む甲子園 〜160cm台の怪物二刀流、全国を震わせる〜  作者: ウエス 端
準決勝

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第65話 観察と考察

「ノブやん! 無闇にバット振らん方がエエで! じっくり見て、仕留める時は一発でやらんと!」


「……なるほど。まあ、なんとかやってみるわ、カズっち!」


 浪速筋(なにわすじ)高校の『回収屋』串島(くしじま)がベンチへと下がりながら話しかけてる声が聞こえてきた。


 相手は次打者の4番バッター『浪速筋の◯カベン』こと阿波(あわ)だ。


 いったい何を……といっても、この場で会話することなんて相手ピッチャーをどう攻略するか、しかない。


 内容から察するに『狙い球を絞ってそのコースを見逃すな』ってことなんだろうけど。


 阿波の横幅が大きな体格はそのパワーと長打力を物語っているが……ボールへの反応速度は串島に、スイングスピードはハリーや頭崎(かしらざき)に比べると幾分か落ちる。


 つまりオレの170キロ台ストレートを投げ込めば、ヤツのスイングではまともに捉えられない。


 そして前の打席でそれは既に証明済み。


 阿波が打つとすれば……外角を広角打法で逆方向に飛ばすことは可能かな。


 それが分かりきっている以上は、内角攻めでボールの威力で押し込むだけだ。パワー勝負なら負けはしない……ふふふ。


 さて、改めて状況を整理しよう。


 この6回表の浪速筋(なにわすじ)高校の攻撃で1点を勝ち越されてスコアは1−2。


 串島がしぶとく放った内野ゴロで3塁ランナーのハリーの生還を許した……串島との読み合いで負けてバットに当てられちまったのだ。


 その代わりツーアウトでランナーなし。ここで相手の攻撃を切ってしまえば裏のウチの攻撃で反撃ムードが出てくる。


 というわけでそろそろ初球を投げよう。しょーたのサインは……これはお互いに認識が一致している。


 ランナーはもういないから、プレートから右足を後ろに引いて、ノーワインドアップから力感のないフォームに移って。


 右足を踏み込んで体重を前に……そこから左手をムチの先のようにビシッと振り抜く!


「うりゃあああっ!!」


「え〜! 内角高めが速すぎるわ、ついていかれへん!」


 ズバンッ!!


「ストライク!」


「おっしゃ、イケる! バッター全然ついていけてない!」

「サクッと三振に仕留めて流れを取り戻そう!」

「こりゃアカンわ。当たれば飛ぶんやけどな〜」


 じっくり見るために見送った……というよりは手が出なかったというのが正しい。


 それなら、このままの勢いで押し切ってやるぜ!


 ズバンッ!!


「ストライク! カウント0−2!」


 うっしゃ! 2球目も内角高めに171キロストレートが決まった。


 阿波は今回もスイングせずにジーッとボールを睨んでいたが、結局はそのまま見送ったのだ。


「何をやってんねん! 振らな当たらんど!」

「1点取ったからって満足せんとガンガン行かなアカンで!」


 ひええっ。相手側スタンドから容赦ない罵声が。


 それだけ地元の期待が高いんだろうけど大変だな。全国制覇を狙う強豪校4番ってのは。


 ならばこれで終わらせて楽にしてあげよう。


 3球目は……指先に力を込めて、これでもかと回転をかけたコイツを振らせる!


「うりゃあああっ!!」


「また内角高め、せやけど……どやああっ!!」


 バコッ!!


「ファウル!!」


 なんだと!?


 当ててきやがった……やや振り遅れてカスっただけの、キャッチャー後方へわずかに方向を変えただけのファウルだけど。


 何より驚いたのは、高めからノビてホップするボール球……釣り球を当てたってことだ。


 追い込まれてるから途中まではストライクに見えたボールを振るしかないとはいえ、軌道が見えているってことになる。


 でもまだ押している状況には変わりない。このまま……しかししょーたは少し要求を変えてきた。


 慎重過ぎるのもどうかと思いつつ投げた4球目は、内角ひざ元へのボール球だ!


「これならイケるで……どやああっ!!」


 バコォーーンッ!!


 バカな! レフト側、つまり逆方向へ打ち返して、かなりのハードヒット……まさか!


「ファウル!」


 ホッ。レフト側ポールの手前でググっとファウルゾーンへ切れていってくれた。


「なんや、やればできるやん!」

「次はスタンドに入れてや〜!」

「オージロウ! 遊んでないでさっさと仕留めろ!」


 遊んでねーよ。今まではついてこれなかったのに、なんで急に……。


 仕方がない、次は外角へ……いやいや、絶対にそれを待ってるに違いない。


 だけどヤツが内角を弾き返せるようになった原因がわからねーと対処のしようがない。


 思い当たるのは、最初に串島が言ってたこと……そうか。そういう意味で言ってたんだな。


 それなら急にタイミングを合わせられるようになった説明がつく。


「ならばこれで行こうかな〜!」


「……ッ!!」


 余裕が出てきていた阿波の顔つきが変わった。


 外角へ要求するかと思ってたしょーたも察してくれたようで……遠慮なく投げられる。


 ランナーはいないけどセットポジションをとったオレは、目いっぱい焦らしつつ、スッと右足を踏み込んで。


 クイックモーションでコンパクトに……だけど指先に力を込めながら左腕を鞭の先端のごとくビシッと振り抜いていく!


「うりゃあああっ!!!」


「内角高め……タイミングが! こうなりゃヤケや、どやあああっ!!!」


 ズバンッ!!!


「ストライク! バッターアウト!」


「うっしゃああ! 171キロストレートがドスッと決まったああ!!」

「裏で一気に逆転だあー!」

「アカンかったか……もう1点取っときたかったなあ!」


 スタンドの騒然とした雰囲気の中、オレは意気揚々とベンチへと引き上げた。


 うーん。相手の策を読み切って仕留めたこの三振……きんもちいい〜っ!!


 阿波が2球目まで何をじっくり観察していたか。それはオレの投球モーションからどこでタイミングを合わせるのが自分に最も合っているか、だった。


 普通はピッチャーが足を上げるあたりで始動して下ろすタイミングと合わせるんだけど。


 それだと振り遅れるから……どの箇所かはわからないけど、ノーワインドアップなら動きが多いから最適なタイミングを見つけたのだろう。


 オレもすぐにはフォームを修正できないから、セットでクイックモーションでタイミングを取りづらくした。それだけのことなんだ。


 まあ、次の打席ではまた探り合いになるだろうけど、そのときはその時さ。


 それよりも、ここからはウチのターンだぜ!



<あとがき>

いつも読んでいただいてありがとうございます

次回更新は7月31日(金)の予定です

よろしくお願いします

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