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5校連合チームで挑む甲子園 〜160cm台の怪物二刀流、全国を震わせる〜  作者: ウエス 端
準決勝

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第62話 フォロースルー

「おい! ハリーの構え方、なんか変じゃないか?」

「どうなんだろ……これまでとは違うレベルの相手だから考えがあるんじゃない?」

「あー、たぶんあれだからじゃね?」


 6回表、浪速筋高校の攻撃で先頭バッターのハリーを左打席に迎えたところでスタンドが騒然としている。


 まあ、確かに今までとは構え方が違うけど……結果的に打てればいいのだからオレはとやかく言うつもりはない。


 だけど、あれでまともな打球が打てるのか? とは思う。


 なぜならバットのヘッドを斜め後ろに立て、左手をグリップの上のあたりに添えている。


 天秤打法を縦向けにした感じで、それ自体はおかしくないんだけど……左手は本当に添えているだけ、軽く握ってすらいないのだ。


 意味がわからん。片手打ちでもやるつもりか?


 でもあれは外へ逃げていく変化球を掬い上げるのには効果的だけど……オレはストレートだけだから無意味だ。


「まだ投げんのか! 上級生を待たせるとは、か……いや、さっさと投げいっ!」


 うっせーなコイツも。そこまで言うなら投げてやるよ!


 しょーたが最初に出したサインにすぐ頷いて投球モーションを始める。


 ノーワインドアップからスリークォーターのフォームへと移って。


 余分な力を抜いた踏み込みとできるだけコンパクトにしたテイクバックからスムーズに体重移動して。


 最後は鞭のごとく左腕を振り切る!


「うりゃあああっ!!」


「初球は外角低め……判で押したようにワンパターンじゃのう! かぁーーつッ!!」


 バシィーーッ!!


 マジか! いきなり171キロを捉えてきただと?


 ハリーは離していた左手をグリップへと滑らせ、両手を揃えて力強く速いスイングをしてきた。


 まあ予想の範囲内だったけど、しかし最初からレフトのファウルゾーンへとライナーが飛んでいくのが見えた。


「ダメじゃ! 押し込みが足らなんだ! せっかくコースを読んどったのに!」


 ハリー本人がボヤいた通り、オレの球威がかなりバットを押し込んだ。


 やっぱり左手はバットを握らずに振ったから押し込みが足りないのだ。


 でもヤツがやろうとしていることはなんとなくわかったよ。


 今までのスイングとの最大の違いは『片手フォロースルー』だ。


 前の2打席では両手でしっかり握ったまま振り切ったが、今回からインパクト直後に右腕だけで豪快なフォロースルーをしていた。


 MLBの強打者がよくやるやつだが、あれはスイングが強すぎて両手だと脇腹を痛めてしまうから、とどこかで読んだ記憶がある。


 オオタニさんはやってないから人それぞれなんだろうけど……少なくともハリーは、これでオレのストレートについていけるスイングスピードを手に入れたというのは事実だ。


 でも、現状ではオレがどこを攻めればよいかは明白だ。それは珍しくしょーたも感じてサインはすぐに一致した。


「うりゃあああっ!!」


「次は内角攻めか、単純じゃい! かぁーーつッ!!」


 バコッ!


「ファウル! カウント0−2!」


「ダメやんけ! ハリーのヤツ完全に押し込まれとるで!」

「いいぞオージロウ! やっぱお前が最強だー!」


 スタンドの盛り上がりに差が出てきた。まあ今のを見たらね。


「……やはり押し込みがたらん。こうなったら上手くいくかわからんが、いちかばちかで」


 ハリーは何やらブツブツ独り言を呟いていたが、次にこちらへ顔を向けた時には覚悟を決めた表情へと変わっていた。


 これはなにかあるな。


 嫌な予感しかしない……なんとなくだが真っ向勝負は危険だ。


 なので3球目はこれだ!


「うりゃあああっ!!」


「かー……おっと」


「ボール!」


 真ん中高めの釣り球には引っかからなかった。まあミエミエだもんな。


 それはともかく、今回の変化としては左手の人差し指と中指だけ引っ掛けるようにして一応握っていた。


 つまり、即興で会得した片手フォロースルーだからインパクト直後に上手く離せない、でも押し込む力が不足している。だからこんな中途半端なことやってんだろう。


 でもそんなんじゃ結局力不足か最悪コネて打球が飛んでいかないかのどっちかだ。


 というわけで、怖がらずに勝負すべき。いたずらにカウントを悪くしても体力のムダ。


 ではトドメ……ズバッと得意なコースで切り込んで三振にしとめるとしよう。


 途中までは余分な力を抜いて……最後に鞭のごとく左腕をしならせる!


「うりゃあああっ!!!」


「内角高め……最後は必ずくると思った通り! かぁーーーつッ!!!」


 バシィーーンッ!!


 ば、バカな!


 渾身の171キロをジャストミート……高めにホップしてノビるストレートを!?


「イテテテ! 手が痛いけどそれだけの甲斐はあったようじゃい!」


 ハリーは左手を右手で包みながら走り始めた。いや、駆け足程度……まさかの確信歩きだと?


 まさか本当にライトスタンドへ……。


 ドスッ!


「なんとか追いつきそうだぜ〜! 急に失速して落ちてきやがった!」


 右中間へどこまでも伸びていきそうな強烈なライナーだったが。なぜか失速して芝生にポトリと落ちたのだ。


「まだあれでも押し込みが足らんかったか! 不覚じゃい!」


 余裕だったハリーがダッシュに切り替えて一塁ベースヘ。


 しかし普通なら2塁は狙えてたのに。


 ハリーの油断に助けられてシングルヒットに抑えた……いや、三振に仕留められなかった後悔のほうが強い。


 やはりもう少し慎重に行くべきだったか。ハリーの底力を甘く見すぎた。


 まあ終わったことはともかく、ランナーを置いて頭崎(かしらざき)、串島(くしじま)、阿波(あわ)と強打者を迎えなければならない。



<あとがき>

いつも読んでいただいてありがとうございます

ここでお知らせです。

来週より、誠に勝手ながら週2回(火曜・金曜)更新に変更させていただきます

従って次回更新は7月21日(火)となります

引き続きよろしくお願いします

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