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5校連合チームで挑む甲子園 〜160cm台の怪物二刀流、全国を震わせる〜  作者: ウエス 端
準決勝

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第54話 浪速筋のド◯ベン

「スゴいな〜オージロウくん。噂以上のゴッツいボールやんか〜、ビックリしたで。あ、俺は前の3人と違って大したことないから、程々によろしゅう頼んます」


「は、はあ。こちらこそよろしくお願いします」


 浪速筋なにわすじ高校との準決勝は1回表で一死一三塁のピンチ。


 ここで4番バッターの阿波あわノブユキを左打席に迎えたのだが。


 確かにここまで登場したハリー、頭崎かしらざき串島くしじまという暴れん坊だったり稀代のワルだったりする連中とは雰囲気からして違う。


 本当に同じ学校の生徒で選手か? ってくらい腰が低くて人懐っこい笑顔を浮かべながら挨拶してくれたのだ。


 と同時にほっとひと安心……やっとマトモな野球の勝負ができそうだ。


 だが、本人が言ってる『大したことない』は真に受けてはいけない。


 背はオレよりは高いものの、先の3人よりはかなり低い。


 しかし身体の横幅がとても大きい。下手したら100キロ近くあるんじゃないか?


 もちろんブヨブヨではなくて、ちょっとお腹が出てるもののガッシリとした筋肉質である。


 そして体格が似てるうえにキャッチャーというのもあるだろうけど、コイツの通称は『浪速筋のド◯ベン』。


 ここまでの高校通算本塁打数が100本を優に超え、その名に相応しい豪打の持ち主なのだ。


 そして何よりも観客たちがコイツに向けた歓声の中身がそれを物語ってる。


 串島の時みたいな黄色い声援は無いけど、とにかくデカい当たりへの期待の大きさが半端ない。


「ノブやん〜! 今日もゴッツいホームラン頼むでぇ〜!」

「お前のパワーなら怪物だろうが軽くフンサイじゃあ〜!」


 うーん、まあいいさ。その声をオレのボールで黙らせてやるまで……ふふふ!


 と少し悪役ムーブを楽しんでからセットポジションについて静止する。


「……コイツ!」


「お〜っと! へへっ、思ったより牽制が素早いやんかオージロウくん!」


「セーフ!」


 ああもう。一塁ランナーの串島がチョロチョロした動きを見せて、うっとうしいのなんの。


 オレが左ピッチャーで、なまじ一塁が正面に見えるだけに余計に苛つかされる。


 オレたちはできればゲッツーでこのピンチを切り抜けたい、つまり盗塁は防ぎたい……コイツ、当然それをわかってて挑発してやがんだ。


 もう一度牽制を入れたが事態は変わらず。まあ、少しはリードを小さくできたけど。


 いつまでもこれを続けるわけにはいかない。


 そろそろバッターへ投げるか。


 ということで、ギリギリまで1塁へと視線を向けておいて。


 そこから素早くキャッチャーミットへと顔を向けてストレートを……んっ!!


「うりゃああっ!」


「うわ”っ! 近い!」


「ボール!」


「またオージロウのコントロールが乱れたぞ!」

「やっぱビビってるんやろ、ウチの打線に!」

 

 ちくしょう、好きなこと言われてる。


 だが、制球を乱して阿波の身体の方へボールが行ってしまったのは事実。


「ちょっとオージロウくん〜。さすがにさっきみたいなん勘弁してや〜。キミのボール、当たったらシャレにならんでホンマ!」


「……ども」


 阿波もさすがに顔をしかめて抗議してきた。


 頭は明確に下げないが、さすがに申し訳ないという意思は示しておく。


 で、この原因は何かというと……1塁ランナーの串島がスタートを切るフリをしてきたのだ。


 もちろんこんなプレーはどこでもやってることであり、普段は気にも留めずにミット目掛けて投げるんだけど。


 串島は、本当に絶妙なタイミングで仕掛けてきたんだよな。


 オレが視線をミットの方へ向けようとする瞬間に、わざと目につくようにちょっと大袈裟な動きをして。


 ここまであからさまに投球を邪魔するような感じで揺さぶられたのは初めてだ。


 でもいつまでも引きずっていられない。気を取り直して2球目を投げるべく、再びセットポジションに入る。


「今度は、そろそろ走ってやろっかな〜!」


 串島のヤロー、聞こえよがしに喋りやがって。


 ……おっと、コイツにばかり気を取られたが、3塁のハリーは……まあ、普通のリードで特に挑発めいたこともしてこない。


 阿波のバッティングの結果に期待してるってところか。当然それなりの信頼感があるから4番を任されてるわけだが。


 それじゃ行くぜ2球目。今度こそミットに意識を集中して投げ込んでやる……。


 視線を早めに向けて、外角低め!


「うりゃあああっ!!」


「速いけどコース丸わかり! どやああっ!!」

 

 バシィーーッ!!


 げえっ!


 左中間へと広角に打ち返された……そういや阿波は広角に打つのが得意ってミーティングで言ってたような。


 なのに早めに顔を向けて、しかも今度は制球を乱さないようにって強く見過ぎてしまった。


 確かにヤツの言う通り、投げる前からコースが読めてしまう……。


 それに身体も早く開いてしまった気がする。だからノビも威力も足りない。


 ヤバい、このままじゃあ……。


「大丈夫だオージロウ! フェンスの手前で落ちてくる! おらああっ!!」


 バシッ! と打球に追いついたセンターの阿戸さんが打球をグラブに収めてくれた!


 あらかじめ深めに守ってたのか。まあ、今のオレの投球じゃ念のためそうするよな。


 そして阿戸さんは踏ん張って懸命にショートの大岡へと返球してくる。


 だが3塁のハリーはタッチアップから悠々とホームへ……。


「とりあえず先制点! 阿波、一応アッパレじゃい!」


「それはどうも。せやけど惜しかった〜!」


 あー。間に合わないとわかっててもやっぱショックだ。打たれ方が納得いかないから余計に。


 一応ホームの後ろにカバーへと走ってきたが、マウンドに戻ろう。


 しかしそこで聞こえてきたのは意外なコールだった。


「アウト!」


 セカンドの方から……なんと、串島が滑り込んでいたのだ。1塁からタッチアップを仕掛けていたらしい。


 しかしボールを収めたグラブを掲げたひょ〜ろくくんと、右腕を上げた塁審の姿も同時に目に入ってきた。


「すげー! みんなよく刺してくれた! 奇跡だぁ!」


 喜ぶオレに、しょーたは呆れたという感じで言い放ってきた。


「ミーティングで言ってただろ。串島はこういう場面で1塁からタッチアップしてきたりとか、積極的な走塁が持ち味だって。だから阿戸さんたちは最初からセカンドへ返球してきてたんだ」


「あ……そうだったのか」


「また話をちゃんと聞いてなかったな」


「すまん」


「どうだオージロウ! オレの強肩っぷりはよぉ〜!」

「しっかりしろよ、エースだろうが!」

「とりあえず最少失点で切り抜けられたです〜!」


「ありがとう、みんな」


 今日ほどチームメートたちを頼もしく思ったことはない。


 最近は独善的だったと自身を反省しつつ、裏の攻撃での反撃に心を向けたのであった。



<あとがき>

いつも読んでいただいてありがとうございます

次回更新は7月1日(水)の予定です

よろしくお願いします

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