表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5校連合チームで挑む甲子園 〜160cm台の怪物二刀流、全国を震わせる〜  作者: ウエス 端
準決勝

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
54/58

第53話 クラッチヒッター

「きゃあ〜〜!! クシジマくーん、こっち向いて〜!!」

「今日もユニフォーム姿がキマってる〜!!」

「あたしを貴方の彼女にしてくださーい!!」


 ひええっ!!


 準決勝の対戦相手、浪速筋なにわすじ高校の串島が右打席に立った瞬間だった。


 球場のあちこちから女子たちの黄色い声援ってやつが聞こえてきて、それはもう耳をつんざく程の大音量が球場内に充満したのだ。


 スゲー人気だなコイツ。特に女子から。


 今年だけでなく去年の春と夏も甲子園に出場してるから、一般人の知名度も高いんだろうけど。


 ハリーと頭崎かしらざきにはこんなの無かったし……やはりあの甘いマスクが違いを生み出してる。


 でもヤツの本性を知ってるオレとしてはなんだかなあ、と思うのだが。


 今時はSNSとかでヤツの評判も目に入るはずだけど、みんな見てないのか。


 それとも知ってる上で、やはりキケンな匂いのするイケメンというのに惹きつけられるのだろうか。


 むしろヤツに対して姉ちゃんみたいな反応を示す方が変わってるのかもしれない。


 などと考えに耽りながらマウンドの足場を固め直してると、串島がいきなり宣言してきた。


「俺は『真ん中低め』を狙ってやな。三遊間にタイムリーヒット打ったるで〜!」


 なんだとコノヤロー!


 オレのストレートは軽く打てるとでも言うつもりか?


 しかも甘いコースに投げる前提で……。


 ナメやがって。オレは球速が速いだけじゃなくコントロールも一級品なんだぞ……って自分で言ってて恥ずかしくなってきた。


 それはともかく簡単には失投しない自信はある。わざわざ狙ってると言ってる場所に投げたりしねーよ。


 ということは、つまりハッタリ……言葉による揺さぶりってやつだな。


 串島はいわゆる『クラッチヒッター』、得点圏にランナーがいる場面で勝負強くヒットを放って打点を稼ぐタイプだ。


 データだけだとそれしかわからんが……こうやって直に相対すると、こういう記録には残らない部分も見えてくる。


 だが残念だったな。オレにはそんなチャチなやり方は効かねえってのを見せてやるよ!


 行くぜ初球!


「うりゃあああっ!!」


「そこやっ!!」


 バコッ!!


「ファウル!」


「いきなり当ててきたぞアイツ!」

「ああーん! もうちょっとだったのに〜!」


「アカンな〜。振り抜けたらセンター前に打てそうやったのに、ミスショットやわ〜!」


 クソッ。やっぱりハッタリだったか。


 初球はしょーたのお得意の配球である外角低め。


 それを読まれた可能性もあるけど、立ち上がりでまだイマイチとはいえ球威と球速で押し切れると思ったのに。


 串島のヤロー、内角は来ないと確信してかなりベース寄りに立ち位置を変えて踏み込んできたのだ。


 串島の狙いは内角を投げにくくすること。


 左ピッチャーが右バッターの内角を狙った場合に一番怖いのは、コントロールミスとかシュート回転で真ん中寄りにボールが入っちゃうパターン。


 それを狙うって言ってるも同然の宣言なのだからこうなる。やっぱわかってても、クロスに相手の身体の近くへ投げるのは神経を使うのだ。


 そしてよく考えたら串島たちは速球に慣れてる……相手ピッチャーの頭崎はオレと並ぶ169キロ右腕なのだから。


 そしてここからは露骨にベース寄りギリギリでかぶさるように構えてきやがった。


 串島は空手もやってるってことで、オレのボールに当たっても怖くないとでもいうのだろうか。


 しょーたも配球に悩んでるな……狙いがわかってる以上は内角でのけぞらせたいところだけど、当てるのも甘く入るのも避けたいに決まってる。


 だが……ようやく出てきたサインに頷いてセットポジションに入って。


 3塁ランナーの動きを警戒しつつも、2球目を投げ込む。


 内角低めだ! うりゃああ!!


「おっと! 当たりそう!!」


 ズバンッ!!


「……ストライク! カウント0−2!」


「おおーっ! 今度はオージロウが押し返した!」

「ちょっと! クシジマくんのスラリとした脚に当てたらピッチャー許さないから!!」


 ひいっ! 女子の観客たちから非難を浴びせられて凹みそうだ。


 でも足元だし串島はちゃんと避けてるんだから問題ないだろ。というかストライクゾーンに入ってる以上、避けないと当たり損だもんな。


 まあなんにしてもこれで追い込んだ。


 ここまでの状況からするとスクイズは無さそうだけど、しょーたはどうするつもりか……。


 それでも3球目は念のためウエストしてカウント1−2。


 さっきはツーストライクからエンドランを仕掛けてきたチームだからあり得なくはない。いい判断のリードだと思う。


 もう一度ウエストするのか……いや違う要求だ。


 4球目は三振を狙いに行く。真ん中高めからホップしてノビるストレートで釣り球だ!


 ズバンッ!!


「ボール! カウント2−2!」


 余裕で見送られてしまった。読まれてたか。


 次は……と考えているところで串島がまた呟いてきた。


「せっかく俺を追い込んどるのに、そのあと逃げ腰になってるやん。なんやおもんないな〜!」


 あからさまな挑発だ。わかってるけど腹立つなあ。


 しかしここは冷静に。5球目は……それで行こう。


 今度こそ仕留めてやるぜ。外角低めボールからホップしてノビるストライクで見逃し三振になあ!


「うりゃあああっ!!」


「これもアカンな」


 ズバンッ!


「……ボール! カウント3−2!」


 そんな馬鹿な!


 絶対にストライクゾーンをかすめてるはずなのに。その確信がオレにはある。


 串島が自信満々に見送ったのが判定に影響したのだろうか。


 MLBみたいにABSチャレンジがあれば……クソッ。


 あれよあれよという間に今度はこっちが追い込まれた。


 ランナーが3塁にいるから、とにかく内野へ転がされるのも避けたい。三振に仕留めるのがベスト。


 でも高めは見切られてる感があるし、かといって低めを狙うと宣言されてるのにそっちへ投げるのも。


 意表を突いてド真ん中……1回表からそこまでギャンブルしなくても。


 そしてオレとしょーたが選んだ配球は。


「おおっと! 危ないな〜!」


「ボール! フォアボール!」


「結局歩かされたか。まあええわ、あとはノブやんに任せるわ〜!」


 何が歩かされたか、だ。最初からそれを狙ってたくせに。


「何やってんだオージロウ! 追い込んだのに4球連続ボールでみすみす塁に出しやがって!!」

「またクシジマくんに当たりそうに! あのピッチャーキライよ!!」


 あー、散々な歓声が聞こえてくる。


 内角の膝上あたりを狙って投げたストレートは、結局ボールと判定された。


 結局オレたちは串島の術中にまんまとハマってしまった。


 最初のハッタリと、とにかくバットに当ててきた初球。


 あれでストライクゾーンに投げ込みづらくなった。


 今から思えば、恐らく当ててファウルにするのが精一杯だったはずなのに。


 それで当てられて転がされるのを極度に恐れてしまった……というか串島がそういう心境に誘導したのだ。


 精神的に負けた、そう思わされたのはコイツが初めてだ。


 そして串島が『ノブやん』と呼んでた4番バッターをここで迎えることになる……。



<あとがき>

いつも読んでいただいてありがとうございます

次回更新は6月29日(月)の予定です

よろしくお願いします

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ