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5校連合チームで挑む甲子園 〜160cm台の怪物二刀流、全国を震わせる〜  作者: ウエス 端
準決勝

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第51話 稀代のワル

「ねえオージロウ。この人、知り合いなの?」


 オレと姉ちゃんは、我らが5校連合チームがお世話になっているホテルの近くの橋のたもとで兄ちゃんのことを話し合っていたのだが。


 そこへ不意に男が声をかけてきたのだ。


 まあ、知っていると言えば知ってるけど。


「次の準決勝で対戦する浪速筋なにわすじ高校の選手だよ。確か串島くしじま……さん、だったかな。でもそれだけ。あえて言えば開会式のリハーサルで姿を見かけたけど、喋ってないし」


「じゃあなんで馴れ馴れしく話しかけてきたのかしら。しかもわたしのことを『ちゃん』付けで」


「さあ?」


「ちょっ! なんか俺のこと無視して話進めてへん?」


「なんで気を使わなくちゃなんねえんだよ? お前……いやアンタかな。3年生だろうけど、だからといってほぼ初対面みたいな他人にさ」


「ええ〜っ! そんなツレないこと言わんでもええやん? 俺はキミらと楽しく喋りたいだけなんやけどな〜!」


 『キミら』だぁ?


 嘘つけ。さっきの話しかけ方からみて、結局は姉ちゃんが目当てなんじゃないのか?


 串島は一見すると優男で結構イケメンなんだけど、なんていうか近くで話してるとヤバい匂いがプンプンするんだよな。


 それは今この場にコイツがいるということ自体が示しているのだ。


「っていうか、なんでアンタがこんなトコにいんだよ? 近所の散歩とかならまだしも、練習と試合以外で宿泊施設から離れて外出できない決まりのはずだぜ? 浪速筋高校のホテルは確か大阪市内のはずなのに」


「ええやんそんな、カタいこと言わんでも」


「だけどさあ」


「このへんなあ、俺の親戚ん家があるからたまに遊びに来んねん。だからちょっと気晴らしに来ただけやんか」


「……あっそ。でもオレたちに迷惑かけないでくれよな」


「迷惑なんてかけへんよ。さっきも言った通り、仲良く喋りたいだけ。特に雛子ちゃんと」


 やっぱりコイツ……オレが言う前に姉ちゃんが間髪入れず串島を突き放した。


「貴方に『ちゃん』付け呼びなんて許可した覚えは無いのだけど。そんな礼儀知らずと楽しく会話なんてあり得ないから」


「……ええなあ、その強気な態度。俺の周りに寄ってくる女たちとは違って新鮮やわ」


「何をゴチャゴチャ言ってるのかしら?」


「とにかくやな、もっと落ち着いたトコで……サ店でも入ってゆっくり話そうや。俺、雛子ちゃんのこともっといろいろと知りたいねん」


 串島のヤロー! とうとう本性を現しやがった。


 姉ちゃんに近づいて腕に触ろうとしたので、オレは反射的にヤツの肩を掴んで注意した。


「アンタいい加減にしろよ! オレの姉ちゃんに気安く触んじゃねえ……ぶわあっ!!」


 肩を掴んだ瞬間、串島はこっちに視線を移すこともなくオレの手を払いのけるように腕を振って、ヤツの裏拳が鼻をかすめたのだ。


 それにしても痛ってえ!!


 そんな太い腕じゃないのに、とにかく硬いんだよヤツの皮膚が!


 思わず鼻を両手で押さえると、姉ちゃんが大きな声で叫んだ。


「オージロウ!! 大丈夫なの!?」


「くっ……イテテ」


「あっ……。お前が……オージロウくんがいきなり肩掴んだから、つい」


「……許さない」


「へっ?」


「わたしの弟に手をあげるなんて……絶対に、許さないわよ……!!」


 うわあっ!


 姉ちゃんが見た目にも髪を逆立てて、とんでもない怒りのオーラを放っているのがオレでもわかる!


 それはもう、今すぐにでも◯ーパー◯イヤ人へと変身するんじゃないかってぐらいのド迫力で!!


 これは別の意味でヤバい。何とか収めないと。


「姉ちゃん! オレは大丈夫だ。こんなヤツの拳なんざ大して効いてねえから!!」


「ええ〜。俺、こう見えて空手もやってて、一応二段なんやけどなあ。それはちょっとショックやわ」


 やっぱ空手やってたのか。正直言えばまだ痛みは引いてないけど、ここはとにかく姉ちゃんを鎮めるのが先だ。


「……ほんとうに? 本当に大丈夫なの?」


「ああ。問題ないから!」


「それなら、いいんだけど」


 ふう。ようやく鎮まったか、やれやれ。


 それから串島の呟きと弁明が始まった。


「ははは……それにしてもスゴいな、キミの姉ちゃん。さっきはこの俺が圧倒されてしもて震えが止まらんかった。ほら、まだ膝がガクガク言うてる」


「確かに……でもアンタが怒らせるようなマネしたから」


「だって、さっきのは俺の意思に関係なく反射的に出たから……」


「わたしは言い訳なんて聞きたくないのだけれど?」


「そうやね。ホント、ゴメンなオージロウくん。雛子ちゃ……いや、雛子さん」


「まあいいけどさ、大して効いてねーから」


「オージロウがいいと言うなら」


「許してくれてありがと。せやけど、俺はまだ諦めてへんで」


「なにをだよ?」


「なあ雛子さん。明日の準決勝で俺がオージロウくんに勝ったら、俺と付き合うてくれへん?」


「なっ! テメー、何を考えてんだ!」


「……いいわよ。その時は考えてあげるから」


「やっっった! じゃあ確かに約束したから。明日の試合楽しみやわ〜! それとオージロウくんは一応しばらく気をつけてな! ほなっ!」


 串島は一方的に言い放つとそそくさと行ってしまった。


 それにしてもなんであんなの簡単に受けちゃうんだよ……。


「何考えてんだよ姉ちゃん!」


「だって、オージロウが明日勝てば済む話でしょう? それとも勝てる自信がないとでもいうのかしら?」


「そ、それは……だけど相手は優勝候補の一角なんだし、勝負事は何が起きるか」


「それに、あくまで『考えてあげる』ことしか約束してないから。無条件で付き合うなんて一言も言ってないわよ、ふふふ」


「そういやそうだったけどさ……そういう屁理屈が通じる相手かなあ」


「そんな細かいことは気にしない! それよりもさっきはカッコ良かったわよ。『オレの姉ちゃんに手を出すな!』って」


「そ、そういう言い方してないだろ!」


「いいえ、言いました! なんならこの場でもういっぺん言ってごらん?」


「え、いや、その」


「さあ、もう一度!」


「ああー! 絶対に言わねえから!」


「もう、照れちゃって。まあこのくらいで勘弁してあげる。じゃあわたしは戻るから」


「ああ。それじゃまた明日球場で」


 ああもう、滅茶苦茶疲れたよ。


 そしてホテルに戻るとホールでしょーたたちが待っていてくれたのだが。


「オージロウ! お前、鼻血がでてるぞ!」

「まさか雛子さんとイチャイチャ喋って興奮して……ああー、やっぱおれも雛子さんの弟になりたい〜!」

「ぼくの雛子様とだなんて……オージロウさんには幻滅です〜!」


 あっ。本当に鼻血が……くそ、効いてないようでやっぱ効いてたのかあの拳……!


 ちなみにさっきの出来事は古池監督に報告し、監督から相手の監督に連絡はしてくれたが……。


「ちょっと散歩に行ってくるとしか聞いてないって一点張りだったよ。まあ、予想通りだったけどね」


「すみません、お手間かけて」


「いや、いいんだけどね。浪速筋高校はなんていうか、『ヤンチャ』な生徒が多いって評判だし、中でも串島くんは噂に聞く素行がなかなかだから。明日の試合は気をつけてね」


 ヤンチャねえ。便利な言葉だが、開会式のリハーサルで会ったハリーと頭崎はどう見ても暴れん坊な感じだった。


 オレの中じゃ、せいぜいウチの阿戸さんと近海のレベル位がヤンチャの範疇なんだけどな。


 そして気になってしょーたに手伝ってもらって串島の評判をSNSとかから拾ってみたのだが。


 まあ次々と出てきたよ、ヤツの悪評が。


 ケンカが強く大阪市内一帯をシメる裏の番長だの、学校には遅刻の常習犯で女連れで登校するのも日常茶飯事だの。


 だけど表に出てる素行は出場停止とか食らわないレベルに抑えてるらしく、出席日数もギリギリ確保したうえでテストの成績はかなり良いらしい。あと女子にモテモテとか。


 要するに散々好き勝手しといて要領だけはいい奴ってことか。なんかやな感じだなあ。


 まあ、それ以外にもいろいろ評判を見かけたが、総じて共通するものとしては、『とんでもない女たらしで、稀代のワル』というものであった。


 オレとしょーたは顔を見合わせて苦笑するしかなかった。そして他のチームメートを怖がらせないようにと、この話はとりあえず封印することに。



 そして迎えた準決勝。


 今日はウチの後攻で試合は始まり……先発のマウンドに立つオレの前には、相手の1番バッターであるハリーが左打席に立って構えているのである。



<あとがき>

いつも読んでいただいてありがとうございます

次回更新は6月24日(水)の予定です

よろしくお願いします

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