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5校連合チームで挑む甲子園 〜160cm台の怪物二刀流、全国を震わせる〜  作者: ウエス 端
準々決勝

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第47話 勝負をかける

「オージロウくん! 約束通り、この回で勝負をかけるから。できれば大きいのを頼んだよ!」


 革新学院高校との準々決勝は4−4の同点のまま延長12回表に突入した。


 そしてウチの攻撃なのだが、これからヘルメットとバットを持ってサークルへと行こうとするオレに古池監督がハッパをかけてきた。


 うーん、どうしようかな。何か返答するべきか。


 面倒だし手だけ振って……いや、さすがにそれは酷いよなと思い直して重さを感じる唇を開ける。


「わかりました」


 ぶっきらぼうかつ最小限。しかも目を合わさない。だけど無視するよりはよっぽどマシだろう。


 一時ほどではないとはいえ、前の回で意味なく重盗を仕掛けて攻撃を終わらせた監督の采配にモヤモヤが残っているのも事実なのだ。


 そしてこの回もタイブレークで無死一二塁から始まり、打席にはしょーた。


 同じシチュエーションで違いは二死か無死かというだけ。勝負をかけるという話とどういう関係があるのか……確かめさせてもらおうじゃないの。


 さてマウンドの江側えがわは……この暑さだが涼しい顔をしている。正確には汗はかいているけど表情は落ち着き払っている。耳が大きいのが気になるけどそれはどうでもいい。


 まあ、オレたちとは違ってセンバツ優勝校の2枚看板の一人でかつ3年生なのだから経験値が豊富なんだろう。


 それに、160キロ台のノビるストレートと変化が大きくキレのあるカーブでいつでも三振が取れるピッチャーだし、タイブレークといっても普段通りに投げればいいのだ。


 対するしょーたは、こちらもやや緊張は見えるけどガチガチってわけじゃなくて、目つきはしっかり前を見据えている。


 そして何を仕掛けるのか。というか、古池監督からどんな指示を受けているのか。


 注目の初球、お互いどうする……。


 江側はセットポジションからスッと左足を上げると、力みのないフォームからおもむろに右腕を振り下ろす!


「ふおっ!」


「内角高め。だがこれでどうだ!?」


 しょーたがバントの構え……だが送りバントというよりは。


 スカッ!!


「ストライク!」


 セーフティバントを仕掛けたらしい。走り出しながらバットを当てにいったけど見事に空ぶった。


 ……うーん。今さらこれを仕掛けるのか?


 これだったら、前の回でツーアウトから意表をついて、同時にランナーも走らせてやればよかったのでは。


 だいたい、ただでさえ江側のノビてホップするストレートはバントしにくいのに。


 まあ、狙いもなんとなく見えてきた。要するに塁を埋めたかった。


 目的は、もちろんオレを敬遠させないため。相手は春夏連覇を狙う革新学院、個人の勝負にこだわらず必要ならそれくらいやる。


 それでもエスカンダリならどうだったか……しかし江側はチームの勝利優先で躊躇なくやりそうに感じる。


 これだってさっきの回で……いや、もう考えるのをやめよう。


 たとえ監督のミスだったとしてもピンチを切り抜けて今現在はしょーたが頑張っているんだ。それでいいじゃないか。


 もちろん2球目も……と思ったのだが。


「打つ! でやあっ!」


 スカッ!!


「ストライク! カウント0‐2!」


 しょーたは一転してバスターを仕掛けてきやがった。結果はもちろん豪快な空振り。


 何がしたいんだよ……一貫性がないというか行き当たりばったりというか。


 そんな中途半端な揺さぶりでどうこうできる相手じゃあるまいし。


 もういい。申告敬遠さえされなければ、多少ボール球でも強引に打っていくまでだ。


 そんな感じでやや不信感がぶり返した状況でふと監督を見ると。そのサインはまさか!


 江側が3球目を投げ始めたところで再び重盗を仕掛けて……しかもしょーたはバントの構え。


 小フライにでもなったらそれこそトリプルプレーになるじゃないか!


 血迷ったか。とりあえずこの裏をゼロに抑えることに気持ちを切り替えよう。


 そう思ったところでしょーたの必死な声と甲高い打球音が響いた。


「なんとしても飛ばす! でやあああっ!!」


 カコーンッ!


 あーあ。いわんこっちゃない、ノビる高めストレートをフライに打ち上げた。


 だめだこりゃ。さっさとベンチに戻ろう。


「ぎゃああ! サードの後ろまで飛んでく!」

「でもサードが動き鈍いぞ!」


 スタンドが騒がしい。サードの方を見てみると、確かに3塁ベース付近に張り付いているサードをフラフラと打球が超えていく。


 それをショートが慌てて追って行って……なんとか捕球した時には。


「セーフ!」


「おっしゃああっ! オールセーフだああ!!」

「それじゃあ、無死満塁でオージロウに回っちゃうのかよ!」


 そういうことか。だからツーアウトからじゃなくてノーアウトの状態で仕掛けないといけなかったんだ。


 しょーたがセーフティバントを仕掛けたところで、江側のノビるボールでは高い確率で小フライになる。


 ならばとプッシュで押し込んでも、ツーアウトならサードはランナーよりも打球の処理の方に集中すればいい。


 でもノーアウトで重盗を仕掛ければ、やはりベースに張り付いてキャッチャーからの送球に備える。


 もし打球が来ても、しょーたはバントの構えだからゴロが来るという予測で態勢に入ってる。


 そこを『勝負をかける』プッシュバントで頭上を超えていった。


 これで見事な無死満塁。オレが敬遠される恐れは無くなった。


 〇カベンみたいに1点与えても敬遠してくる可能性もあるけど、さすがに春夏連覇を狙う強豪が連合チーム相手にそれはやりにくいだろう。


 いろいろ疑ってゴメンと監督としょーたに心の中で謝りつつ、意気揚々と左打席に入る。


「うーん、これはさすがに弱ったなあ。うふふふ」


 マウンドの江側が弱気な呟きを……言葉だけならそうなのだが、なぜか顔には笑みが浮かんでいる。


 ヤツも本音では心躍る勝負が出来るのを待っていたのかもしれない。


 これは楽しい勝負になりそうだぜ……!



<あとがき>

いつも読んでいただいてありがとうございます

次回更新は6月15日(月)の予定です

よろしくお願いします

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