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5校連合チームで挑む甲子園 〜160cm台の怪物二刀流、全国を震わせる〜  作者: ウエス 端
準々決勝

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第45話 采配と信頼

「フンッ! 外角低めなら当てられる!!」


 ズバンッ!


「ストライク! バッターアウト!」


「さっすが江側えがわだぁ! 変な打法でエスカンダリを打ったバッターを余裕で3球三振に仕留めたぜぇ!!」

「しかもここまで全球ストレートだけってのがシビレるぅ!」

「ダメだ! 球速はオージロウより遅いのに全然当たる気がしねーよ!!」


 革新学院高校との準々決勝、延長タイブレークに突入して、11回表ウチの攻撃が始まって間もないんだが。


 先頭バッターの原塚はらづかさんが得意の外角ですら全く当てられないとはな……。


 ここまでの最速は163キロ。確かにオレよりも5キロ遅いんだけど、ノビが凄まじくてそれを感じさせない威力だった


 オマケにそれを厳しいコースにビシッと決められる制球力がある。これは簡単に攻略できそうにないな……しかし延長戦に突入した以上、あまり悠長なことも言ってられん。


 さて、この状況で古池監督はどういった策を繰り出してくるのか。


「しょーたくん! ちょっと!」


 これからサークルへと向かおうとするしょーたを呼び止めて、何やら一言話してから送り出した。


 そして続けざまに、右打席に入った近海ちかみになんかサインを送ってる。


 そして近海に動きがあった。おもむろにバントの構えを始めたのだ。


 オレはそれを見て、反射的に監督に対して疑問を口に出してしまった。


「それマズイでしょ! 前の回も送りバントしようとしてトリプルプレー食らったの忘れたんすか!?」


「いやもちろん覚えてるよ。でも今回はちょっと違う……まあ見ててごらんよ」


 なんか自信ありげに言われて、それ以上は何も言えなかった。


 それにしても、自分でやっといてなんだが……監督の采配に意見するなんて普通のチームなら懲罰モンだ。


 だけど良くも悪くもユルい雰囲気な我らが連合チームは、当の監督もチームメートたちも特に咎め立てするわけでもない。


 こんな環境でノビノビやらせてもらえることに改めて感謝しよう。


 で、近海にどんな指示を出したのか。それは初球から動きがあった。


「……だっぴょ!」


 ズバンッ!!


「ストライク!」


「無駄無駄ぁ! バスター打法なんぞウチの江側には通じん!」

「苦し紛れのあんな戦法しかないのかよ〜!」


 バントの構えからサッとバットを引いて打ちにいった近海だが、完全に振り遅れて豪快に空振り。


 まあでも狙いは分かった。前の回、勢いを殺したゴロを打たせないために、江側はバットの芯を狙って投げてくるという芸当を見せたわけだが。


 それを逆手に取って、こっちの思う場所に投げさせ、それを狙い打ちしようってわけだ。


 しかしそれですらタイミングが合わせられないとは。こういう攻略法があるのは相手バッテリーも分かってるはずだが、平然とやってくるのは当てられない自信があるってことか。


 2球目も同じで早くも追い込まれた。どうするんだろう、このまま続けるのか?


「だっぴょ!」


 ガコッ!


「ファウル!」


「おおっ! 近海のヤツ、あのノビるストレートを遂に当てた!」

「ひょっとしていけるんじゃね、これ!?」


 なんとか当てただけだというのにウチのベンチ内が盛り上がってきたのは何といえばいいのか。


 そしてそこから2球続けてカットに成功している。ただ、バスターからのカット打法を続けると、下手したら球審にスリーバントと見なされてアウトにされかねない。


 近海はバットを引いた際に両手の間隔を詰めてしっかりグリップを握ってるけど……その気になれば球審の胸一つだもんな。


 しかし、そんな心配は杞憂に終わった。


「へぇ〜、思ってたよりはやるみたいだね〜。面白いからもうちょっと続けてもいいけど、延長だし面倒だから、もうここらへんで終わらそっかな」


 マウンドから低いけど物静かな声と柔らかな口調で江側の呟きが聞こえてきた。


 エスカンダリが河内弁でヤンキー口調だったので、そこからの落差もあってか聞く者に落ち着きを感じさせて心地良いんだよな〜。


 しかし投げてきたボールはえげつないものであった。


「うわっ! 浮き上がったのに急に落ちてきたっぴょ!!」


 スカッ!!


「ストライク! バッターアウト!」


「出たあ〜! 江側の伝家の宝刀『滅茶苦茶キレるカーブ』が!」

「あ、あんな落差とキレ、どうやって打てばいいんだ?」


 スタンドの歓声が一気に大きくなるのが当然のボールだった。バッターの手前まで浮き上がるような軌道で、そこから落ちるというか、なだれ込むように下へ向かって伸びていくような落ち方。


 落ちきったところを狙うにしても見極めが難しそうだ……それだけに打ちがいのありそうなボールだけど……ふふふっ!


 さて、それではしょーたが出塁するのを期待しながらサークルへと向かおう。


 そしてサークルに着いた頃に、また監督がサインを出してるのが見えた。


 でもあれって確か……というか、それを出した先はしょーたではなく。


「ランナー走ったぞー!」

「2人とも一斉に! 重盗だー!」


 初球を投げるタイミングで、1塁と2塁のランナーが同時にスタートを切った。でもなあ、こんな苦し紛れの策を打ったところで……。


「こういうのはもちろん想定済みだよ、うん!」


 相手キャッチャーの比出木ひできハカセにとっては織り込み済みでバレバレであった。


 捕球と同時に素早く立ち上がって即座にサードへボールが送られて……。


「アウト! スリーアウト、チェンジ!」


 あちゃー。悪い予感が当たってしまった。


 何だって今さらこんなことを。まあ、古池監督は新卒のうえに甲子園で采配を振るうのも当然初めてだし……やっぱり内心焦りとかあるんだろうか。


 だけど、トボトボとベンチへ戻ったオレに監督はなぜか明るく言い放った。


「オージロウくん! この裏の攻撃、なんとかしのいでくれ。次の12回に勝負をかけるから。頼んだよ!」


「……はい」


 なんだよ、自分の采配ミスの尻拭いをオレがやれってか?


 監督に対して今までこういう感情は湧かなかったけど、今回はちょっと不信感を覚えてしまった。


 まあでもやるしかない。それにこの回はあの男から始まるんだ、あーだこーだ考えている場合じゃない。


「今度こそ僕の仮説の正しさを証明するとき……うんっ!」


 左打席に入ったのは3番バッターのハカセ。


 そしていきなり仕掛けてきた。


 ヤツはホームベース側ギリギリに被せるように立って、しかもやや背中を見せるようなプチクローズドスタンスで構えている。


 どういうつもりだ? オレの内角ストレートを封じようってか?


 ナメやがって。そんなモンに怯むとでも思ってるのか。


 なかなか内角のサインを出したがらないしょーたに首を振り続けてようやくサインを出させた。


 しょーたにとっては中学時代のチームメート、けんか腰のリードはしたくないのは分かるけど。


 これで内角を突けないなんて、相手打線をつけ上がらせるだけなんでな。


 初球行くぜ! 内角の膝上、太ももか尻にぶつけるようなイメージのストレート!


「うりゃあああっ!!」


「予想通りのボールだよ、うん! そしてここから身体を開いて、捻りを戻してヘッドを遠心力で……当てる!!」


 バシィーッ!!


 ヤツのつぶやき通りに加速したヘッドで内角ストレートを!


 引っ張れなかったのか狙ったのかわからんが打球は三遊間に。ショートはあくまでサブポジのひょ〜ろくくんだが……。


「追いついたです〜! でも何処に投げたら!」


 クソッ! 1塁と2塁のランナーはもう次の塁に到達しようとしてる。


 ファーストは、間に合うか?


「セーフ!」


「シュミレーション通り! あれで内野安打は確実に取れることが証明できたよ、うん!」


 またもや無死満塁。そしてここで迎えるのは4番バッターの金正一かねまさいち。絶体絶命のピンチだぜ……。



<あとがき>

いつも読んでいただいてありがとうございます

次回更新は6月10日(水)の予定です

よろしくお願いします

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