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5校連合チームで挑む甲子園 〜160cm台の怪物二刀流、全国を震わせる〜  作者: ウエス 端
準々決勝

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第44話 コントロールとクソボール

「さあ! 延長タイブレーク突入だけど、気負わずいつも通りにプレーしよう!」


 革新学院高校との準々決勝は、結局9回が終わって4−4の同点のままお互い譲らず延長戦に突入した。


 グラウンドから戻ったオレたちに古池監督は檄を飛ばし……たってわけでもない。いつも通りとか言ってるし。


 逆に言えばこれといった策を授けられていない。いいのかなあ、こんなんで。


 それはともかく、高校野球のタイブレークはノーアウト1、2塁という場面設定で始まる。


 そしてウチの打順は7番から。


 マウンドで立ちはだかる革新学院の2枚看板の一人、江側えがわの恐ろしくノビてくるストレートが簡単には打てないのはわかってるけど。


 それを打って点を取ってくれて、オマケにオレまで回してくれるのが最高なんだよな。そんな希望を抱きながらアンダーシャツを今のうちに着替えておこう。



「オージロウ! もう行くぞ!」


「へっ!?」


 ベンチ裏で素早く汗をふき取りシャツを着替えて戻ってきたところで、しょーたから守備に出るぞと言われてオレは焦った。


 だってまだ1人目のバッターが打席に立って間がないはず。なのにチェンジだって?


「んーとね。ゴメンね、こっちの判断ミスってところかな。でもまさかあんな結果になるなんて」


「どういうことですか、監督?」


「実は送りバントの指示を出したんだよ」


「あちゃー。いつもはほとんど出さないサインなのに、慣れないことするから。でも失敗しただけじゃチェンジにはならないはず」


「そうなんだよ。だけどトリプルプレー食らっちゃってさ」


「はあっ!?」


「送りバントの構えを見せたところで、相手バッテリーが不敵に笑った気がしたんだよね。で、江側くんは構えたバットめがけてストレートを投げてきたんだ」


「わかった。ノビてホップするストレートを投げてきて、それを小フライにしてしまった」


「それだとさすがにトリプルプレーにはならないよ。実際にはバットに当たったあと、打球はサードに向かって低いライナーで飛んでいった」


「……意味不明なんすけど。プッシュバントの指示出してたんすか?」


「違う、もちろん普通の送りバント。江側くんは……わざと『バットの芯を狙って』寸分の狂いもなく投げてきた。しかもあえてホップするのを抑える回転数で」


「つまり、バントなのに真芯に当たって勢い良く弾かれた打球がサードゴロになったってことですか?」


「うん。さらに言えば3塁ベース近くで守ってたサードの丁度手前でワンバウンドするっていう、まるで計算されたようなゴロ。サードは難なく捕球したあと3塁ベースを踏んで」


「そのまま流れるように5−4−3と渡ってトリプルプレー」


「その通り。単に運が悪かったのか、相手バッテリーが狙ってやったのかはわからないけど」


 マジかよ。バットの芯を狙って投げた、だと?


 ◯リーグボールじゃあるまいし、そんな漫画みたいなプレーが実際に起こるなんて。


 本当ならとんでもないコントロールじゃん。それならエスカンダリではなく江側が『2枚看板の一人』なのも納得だ。


「オージロウくん。引き留めておいてなんだけどね、そろそろ」


「ヤバい! マウンドに行ってきます!」



「ボール! フォアボール!」


 10回裏の革新学院の攻撃で、オレは先頭バッターをフォアボールで出してしまった。


 というか、コントロールも球威もイマイチなので必要以上にコースギリギリを突いていくしかなかったのだ。


 やっぱり表のウチの攻撃がわずか1球で終わったことで、落ち着く間もなくマウンドに上がったのが影響してると思う。


「タイム!」


 ウチのベンチからだ。そして伝令として勝崎さんがマウンドに駆けてくるのを見て内野手たちとしょーたも集まってきた。


「ノーアウト満塁。さすがにちょっとキツいなこれ」


「すんません、勝崎さん。それにみんな」


「俺にそんなこと言っても」


「それを言うならキャッチャーのおれも有効なリードができなかった。それよりもこのピンチをどう切り抜けるかを話し合おう」


「で、しょーたには何か考えがあるのか?」


「それは……勝崎さん、監督からは何か」


「うーん。オージロウくんはどうするのがベストだと思う?」


「三者連続三振なら確実に切り抜けられます」


「さっきは球威とコントロールがイマイチだったけど、すぐ戻せるの?」


「戻します」


「そんな根拠のない根性論言われてもなあ……」


「あの〜。オーソドックスに前進守備でホームゲッツーを狙うしかないと、ぼくは思うのです〜!」


「ひょ〜ろくくんの意見はもっともだけど、ウチの弱点は言うまでもなく守備の連係。特にスクイズでいいところに転がしてこられたらヤバいよ」


「連合チームの宿命ですから。じゃあ結局はオレのストレートでスクイズバントも弾き飛ばすしかないじゃん」


「それができるくらいに球威が戻ればいいんだけどね。一応、監督と俺の意見なんだけどさ」


 勝崎さんから手短に意見を聞いたオレたちは、思い切ってそれに乗ることにした。


 どのみち1点入れられたらサヨナラ負けなんだから、やれるだけのことはやってみよう。


 さて、プレー再開でセットポジションに着く。


 左投手のオレには3塁ランナーの動きが見えにくい。そして相手バッターは右打ち。


 スクイズしやすい条件は揃っている。


 ひょ〜ろくくんたち内野手が前進守備を敷いたのは確認済み。


 では覚悟を決めて、右足を上げて。


 力強く踏み出して初球を投げる!


「うりゃああっ!!」


 ズバンッ!!


「ボール!」


 外角高め、というかウエスト気味にはずしたボール球が立ち上がったしょーたのミットに吸い込まれた。


 とりあえず初球は仕掛けてこなかった。それはいいけど、暴投にならないように狙って程よくクソボールを投げるというのは案外集中力がいるものだ。


 球威はまだもう一つかな。さて2球目は……いよいよこっちから仕掛けるんだな。


 では、セットポジションで3塁ランナーに目線で牽制を入れつつ。


 スッと右足を上げて。


 クルッと反時計回りに90度回転して、2塁ベースに向かって投げる!


「うりゃあっ!」


「やべっっ!」


 パシィッ!


「先にタッチしたっぴょ!」


 忍者のごとく気配を殺して2塁ベースに忍び寄っていたセカンドの近海ちかみが塁審にアピールするが、果たして……。


「……アウト!」


「おっしゃああっ! 2塁ランナー刺してワンナウトだ!」

「何やってんだ! なんで焦って飛び出すかな!」

「でもこれだとホームでフォースアウトは取れなくなったんじゃ」


 緊迫した状況にスタンドからの歓声も一層白熱してるよ。


 でも近海はそれを気にすることなく、判定が出た頃にはホームベースを睨みつけて投げる準備に入ってた。


 3塁ランナーは……動きはなさそうでひと安心。


 オレたちが乗った監督の作戦は、革新学院側の『ツーランスクイズ』狙いを逆利用すること。


 超強力な投手陣に対して打線は中軸しかタイムリーを期待できない革新学院は、ここぞという場面で機動力を絡めた作戦を使ってくるというデータはウチでも掴んでいた。


 そしてこの無死満塁のチャンスでも、スクイズで3塁ランナーがフォースアウトになった場合の保険として仕掛けてくるのではと読んだのだ。


 当然ゲッツーを取りにキャッチャーはファーストに送球する……その瞬間に2塁ランナーが一気に3塁を回ってホームを突いてくるのが狙い。


 で、初球のクソボールでしょーたは2塁ランナーの挙動を見たうえで決行のサインを出した。


 但し、ランナー1、3塁でホームでフォースアウトを取れなくなったというデメリットもあるけど。


 そういうわけで、オレはあと3球クソボールを投げ続けた!


「ボール! フォアボール!」


「また満塁策かよ!」

「でもこれでホームゲッツー取れるじゃん!」


 まあ観客たちの言う通り。すでにワンナウトだからゲッツーを取ればチェンジになる。


 そして、もう一つの狙いも完了した。


 4球の肩慣らしで球威が戻ったのを、オレとしょーたは確信したのだ。


 それじゃあ今度こそ全開で行くぜ!


「うりゃあああっ!!」


 ズバンッ!!


「ストライク、バッターアウト! チェンジ!」


「きたあーっ! 6球連続の168キロ連発で連続三球三振だあっ!!」

「スクイズバントもまともに当てさせてもらえないなんて……なんて奴だ」


 ふうっ。とにかくサヨナラのピンチは脱した……なんか力が抜けるような感覚で、ベンチに駆け足で向かうのもダルい。


「やったなオージロウ! 完璧にコマンドやってのけたじゃん!」


「でも疲れた……次はしょーたに打順が回るから、今度こそ点とってくれよな」


 達成感を味わうのはまだ早い。オレたちは駆け足でベンチへと戻って、今度は攻撃へと意識を変える。



<あとがき>

いつも読んでいただいてありがとうございます

次回更新は6月8日(月)の予定です

よろしくお願いします

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