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5校連合チームで挑む甲子園 〜160cm台の怪物二刀流、全国を震わせる〜  作者: ウエス 端
準々決勝

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第36話 やる気次第で

「ストライク! バッターアウト!」


 4回裏の革新学院高校の攻撃がようやく終わった。現在のスコアは1−3と2点リードされている。


 途中まではウチの先発ピッチャーわだちくんが好投してたんだけど。


 相手の4番バッター金正一かねまさいちを相手にボールが甘く入ってツーランホームランを許してしまった。


 ゲリラ豪雨による中断を挟んだのがリズムを崩したのだろう。決して革新学院の『勘の鋭い男』待合まちあいの神通力とかじゃねーから。


 というわけで予定より早い登板となった大岡だが、後続をピシャリと抑えて追加点は許さなかったというのが現在の状況なのである。


 まあそれはともかく、オレはDHなのでベンチへ戻ってくるみんなを笑顔で迎え入れるとしよう。


「みんなお疲れ! 気を取り直してまずは同点に追いつこうぜ!」


「……そうは言ってもなあ」


「あのエスカンダリ有人ありひとを相手に2点差は、なんか果てしなく遠い気がしてならないんだ」


「オージロウだって三振だったのに、俺たちにどうやって多彩な変化球を打てと?」


「いや、確かにオレもさっきはやられたけど、次は必ずホームラン打つって! ボールそのものは絶対に打ち返せないものじゃないんだし」


 などと威勢のいい言葉を並べ立てたが、正直言えばオレ自身も攻略法は見いだせていない。


 さっきだって既にいくつも変化球を見せたあとに新しい球種を出されたし……ストレートは161キロでボールを見極める余裕もあまり無い。


 具体的な打開策を示せないでいたら、轍くんまでボソッと言い出して雰囲気は更に落ち込んでいく。


「すんません、俺がミスして甘いボール投げたばっかりに」


「別に、轍くんだけが悪いんじゃないけどさ」

「それこそ取り返す自信がない俺らのほうが」


「みんな、落ち込むにはまだ早いよ! まだ中盤の5回表……それに6回までに一人でも出塁すればオージロウくんに回るんだし。それまでにみんなで対策を考えていこう!」


「古池監督……なんか攻略のヒントでも?」


「それはみんなのやる気次第で」


 監督の持って回ったような言い方にオレたちはちょっとした苛つきを覚えてざわめきが起こる。


 しかしその説明には一定の合理性があって、オレたちを十分にその気にさせてくれた。


 この回の途中から始めたこの策は、6回表に本格的な展開を見せたのだ。



「それじゃあ、いっちょやってみるかぁ!」


 スコアは1−3と変わらないまま、この回の先頭バッター中地さんが元気良くベンチを出る。


 オレは少しでも力添えしたくて後ろから声をかけてみた。


「中地さん! とにかく何でもいいから出塁してくれれば、オレがゆっくりとホームに返れるようにするんで!」


「へっ! それは断る!」


「はぁっ!?」


「オージロウにばっかオイシイ思いさせっかよ! 俺もホームラン打って自分でゆっくりベース回ってくるから!」


「あっ……そうですか」


「だからアベックホームラン頼んだぞ!」


「それはもちろん」


 中地さんにいつもの減らず口が戻ってきた。これならいける、そう思いながら最前列のベンチに座って声援を送る準備をする。


 そしてその初球……。


「とりゃあっ!」


 スカッ!


「ストライク!」


 あちゃー。思いっきり引っ張りにいって、しかもカーブにタイミングはずされてんじゃん。


 あんなことしたら何を狙ってるか見え見えだろう……期待したオレが馬鹿だった。


「ワイの変化球をよう打たんからってなあ、そんなあからさまにストレート狙っても。それならこれはどないや! そりゃあっ!」


 今度はおちょくるようなスローカーブ……。


 スカッ!


「ストライク! カウント0−2!」


 ダメだこりゃ。次の近海ちかみくんに期待しよう。


 だがここからの中地さんは一味違った。


「とりゃあっ!!」


 ガコッ!


「ファウル!」


 繰り出される変化球を3球続けてカット。しかも大振りで……スゴいのかヘボいのかよく分からん人だ。


 普通なら苛ついてストレートを投げてきそうなもんだが、そこはキャッチャーの比出木ひできハカセが上手くリードして相手の狙い通りにはさせない。


 結局はスローカーブにバットはカス当たりでピッチャーゴロに終わった。


 だがしかし、遂にエスカンダリの連続三振記録を『12』で止めたのだ!


 それだけでも十分に価値がある。実際にエスカンダリは苦々しい表情を見せている。


「中地さんナイスでした!」


「うーん。まあありがとよ」


 口ではああ言ってるが表情からはやりきった感が見えて、オレもなんだが誇らしく思えたのだ。


 次の近海は一転して変化球狙い。


「だっぴょ!」


 スカッ!


「ストライク!」


 エスカンダリのツーシームの更に下をバットが空を切った。


 前の打席で翻弄されたスプリット狙いってわけだ。そして追い込まれてからが中地さん同様に粘ってから内野ゴロで終えた。


 次はいよいよしょーたの番……その次はオレだ。


「頼んだぞしょーた! わかってるな?」


「お前に言われなくても、おれはちゃんと監督の話聞いてるから!」


 一言余計だっての。まあでもイヤミが言えるだけの余裕があれば十分だ。


「ファウル!」


 初球、しょーたは前の打席で仕留められた内角低めワンシームを見事に当てた。結果はファウルだが。


 そろそろ来るかな……オレたちの本当の狙いが。 


「ここまでワイのボールに対応してくるとはな……だがこれは打てん! そりゃああっ!!」


 来た! エスカンダリの決め球の一つ……浮き上がりながら変化していくカットボールを外角高めに!


「ここだ! でやああっ!!」


 バコーンッ!


 やや詰まった打球音だが、思いっきり踏み込んで打ったその打球はライト前にポトリと落ちた。


「おおっ、遂にエスカンダリからヒット打ったぞ!」

「オージロウー! ここでツーラン打って同点頼む!」

「またあの変化球で仕留めればいいんだ!」


 スタンドの応援も盛り上がってきた。オレも燃えてきたぜ〜!


 ちなみに何でカットボール狙いだったか。


 まず一つは、浮き上がりながら曲がるという性質上、高めに投げる確率が高いから。


 そして何よりも、オレたちは大岡のスライダーでそういうのを見慣れてるから。


 だから中地さんの『ストレート狙い』は良いカモフラージュとなった。むしろ161キロストレートを内角に投げ込まれたほうがヤバかったのだ。


 エスカンダリだけならどうだかわからんが、ハカセは常に裏をかこうとしてくるから……。


 みんなには狙い以外のボールを当てて粘ることに集中力を使ってもらった。監督の言ってた『やる気』とはこのことだ。


 ここまでのお膳立て、無駄にはできねーな。



<あとがき>

いつも読んでいただいてありがとうございます

次回更新は5月20日(水)の予定です

よろしくお願いします

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