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5校連合チームで挑む甲子園 〜160cm台の怪物二刀流、全国を震わせる〜  作者: ウエス 端
準々決勝

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第34話 予告と予報

「ストライク! バッターアウト!」


 3回裏の革新学院高校の攻撃は、今日の先発ピッチャーであるわだちくんが三者凡退に抑えて、1−1の同点のままチェンジ。


 そして4回表はオレが先頭打者……いよいよエスカンダリ有人ありひととの対戦だ。


 変化球マニアとも言われるほど、高校球児としては多彩な球種持ちのエスカンダリはどのボールでオレと勝負するつもりなのか。


 どうせなら他のピッチャーがあまり投げないボールを打ちたいんだよな〜。久々にワクワクしながら準備万端の状態で左打席へと向かう。


 だがその前に、マウンドから戻ってくる轍くんに声をかけよう。


「ナイスピッチ! 今日はマウンドで落ち着いてるから、本来の実力を発揮できてるよ!」


「あざっす。これもオージロウさんと勝崎さんのおかげです」


「キャッチャーの勝崎さんは好リードで当然として、オレは何もやってないんだけど」


「んなことないっす。特に1回裏、危ない場面で懸命に声を枯らして声援を送ってくれて、オージロウさんに見守られてる感があって落ち着けたんですよ」


 なんだそりゃ。そんなことで落ち着けたというなら別にいいんだけどさ。


 心の中では首を傾げつつも、顔は笑ってやり過ごそうとしたところで勝崎さんとしょーたがなんか言ってきた。


「オージロウはもうチームの中心で、それくらい影響力があるってこった!」

「だからこの打席は簡単に凡退しないでくれよな! できればホームラン!」


 勝崎さんはまだしも、しょーたはキャプテンだろうが。ちょっとオレに頼りすぎじゃ……。


 いや、しょーたは過去の失敗を踏まえて自分だけで気負い過ぎないようにしてるのだろう。


 というわけで一言だけサラッと返しておく。


「まあ、任せとけって」


 返事のつもりか、グラブを嵌めた左手だけ軽く上げてからしょーたはベンチへと戻っていった。


 さて、どうやって打とうかな。マウンドで投球練習を始めようとしている相手ピッチャー・エスカンダリ有人ありひとを。


「そりゃああっ!」


 ズバンッ!


「この回転! ストレートがいい感じで手元でノビてきて、今大会イチ調子良いんじゃないかな有人? うん!」

「アホ抜かせ! ワイはいっつも何処でも絶好調やっちゅうねん!」


 エスカンダリとキャッチャーの比出木ひできハカセは、ボールだけでなく軽妙なやりとりも見せて良い雰囲気を作り出している。


 そういえばオレとしょーたはそんなことしてないな。しょーたが『ナイスボール!』とか声をかけてくるのが精々で、お互いにプレーの準備に入ってしまう。


 今日オレが登板することがあればちょっとやってみようかな。ウィットに富んだ会話ってやつを。


 などと考えている間に残り2球の投球練習がポンポンと終わった。カーブにツーシーム……他にまだ投げてないボールもあると思うけど、それはさすがに見せないか。


 左打席で構えに入る。見てないのも含めて、どれに狙いを絞るべきか……悩む。


「あのさ。さっきの仮説はダメだったけど、今回は球種が豊富な有人だから、反応を確認しながら修正していけると思うんだよね〜、うん!」


 ハカセがなにやらささやいてきた。無視しよう……いや、この会話が狙いを絞る切っ掛けになるかもしれん。


「ムダムダ、オレのスイングスピードの前には。どんな変化球だろうと引きつけて見極めてから打てるの見ただろ? それであそこに突き刺してやったじゃん」


「おい。何を『ホームラン予告』してくれとんのや、コラァ!!」


 あっ……しまった。ついバットの先をレフトスタンドへ向けて……エスカンダリの怒鳴り声が聞こえてきた。


 いやそれだけじゃない。スタンドまで騒ぎが広がって……!


「出たぁー! オージロウのホームラン予告!」

「今度はデカい放物線のヤツ見せてくれ〜!」

「さすがにナメすぎ! 三振で思い知らせてやれエスカンダリー!」


 うわぁ。やっちまった。だけど下手に謝ると相手を優位に立たせてしまう。ならばいっそ。


「いいだろ別に! どうせホームラン打つことに変わりねーんだから!」


「……ここまでワイをコケにしたヤツを見るんは、生まれて初めてや……!!」


「二人とも! それ以上続けるなら……警告したよね、既に!!」


 ひいいっ、球審から当然のお叱りが!


 オレとエスカンダリはさすがに口を閉じたが、お互いに視線をそらさずに準備に入りなおす。なんとなくだが先にそらすとダメな気がした、それだけだ。


 さて初球は……ある程度想定しつつ、狙い通りなら即座にスイングする気構えをしておく。


 エスカンダリは2メートル近い長身だが、投げ下ろすのではなくスリークォーターの角度で右腕を力強く振り抜く!


「いちびっとったらアカンぞワレ! そりゃああっ!!」


 なんとなく意味は伝わる関西弁……それにふさわしい内角高めの速いボールが向かってくる。


 恐らくヤツが本来得意とする決め球カットボール……もらったあーッ!


「うりゃあああっ!!」


 ズバンッ!!


「ストライク!」


「いよっしゃあっ! オージロウのバットをくるっと回したぞ! スゴい切れ味!!」

「捉えたと思ったのになあ〜、何でこうなった?」


 チクショー、見事に空振った。


 曲がり際を捉えたと思った瞬間に更に浮き上がって……バットがボールの下を通過したのだ。


 実際に間近で見るとあんな変化してくるとは。


 でも打ち甲斐はありそう。もう一度投げてくるかはわからんが軌道は覚えた。


 さて、キャッチャーのハカセは今ので2球目をどうする。プラン通りか修正するのか。


 サイン交換を手早く終えたバッテリーは、間を置かずに次を投げてくる。


「まだまだワイの怒りは収まらん! これでイワしたる! そりゃああっ!!」


 続けて内角、腹をえぐるようなカットボール……と思わせて。だがこれくらいじゃあねえ!


「うりゃああっ!!」


 バシィーッ!!


 捉えた! ボール球のストレート!


 上手く腕を畳んで打てたけどバットのやや根元……だが力で一塁線にライナーで持っていく!


「ファウル! カウント0−2!」


「内角に切れ込んでくる161キロストレートをいとも簡単に……!」

「次は予告通りホームランいけー!!」


 ふふふ。エスカンダリのやや歪んだ顔と、ハカセのマスク越しに伝わる驚きが伝わってくる。


 この打席では徹底した内角攻めかな?


 だが内角はオレの得意とするところ。それとも外角へのフィニッシュの前フリだろうか。


 さて3球目は……。


「ボール!」


 さすがにリズムを変えてナックルカーブ。しかも外角からバックドアで低めをかすめてきた。


 今の感じだと、オレに対してカーブでまともにストライクを取るつもりは無さそう。コースギリギリに投げて決まるか、あわよくばボール球を振ってくれって感じ。


 さて次はそろそろ動きがあるはず。ハカセはどう修正するのか。


 4球目……エスカンダリの目つきが変わった。余裕が消えて真剣に仕留めにくる目だ。


 あとはどっちを投げてくるか。中途半端なのは危険とここまでの内容でわかっていれば、あとは……。


 エスカンダリはおもむろに左足を上げる。あえてゆったりと急がず集中力を込めて勝負にくる!


「えー加減にせーよ……シバくぞワレ! そりゃああっ!!」


 内角高めに速いボール。普通ならさっき振らせたカットボール……だが見える縫い目が明らかに違う!


 待ってたぜワンシーム! カットボールと思わせて逆に曲がるボールをフロントドアで、三振狙いにきた!


「うりゃあああっ!!!」


 バッシィーーン!!!


 バッターの手前で急激に大きくシンカー方向に曲がり落ちるボール……思い描いた軌道通りに振り抜いた打球は高い放物線を描いてライトポール際へ。


 ややボール球を引っ張ったからあれだけど、浜風で押し戻されるから丁度良い感じになるだろう。


 オレはそう思って気楽にベースを回り始めたのだが。


「ファウル!」


「また惜しい、惜しすぎる〜!」

「た、助かったぜ今回はホント!」


 なぜだ……想定と違う事態に、今度はオレの方が戸惑いの表情を隠しきれない。


 バックスクリーンの上の旗を見ると……あまりはためいていない。つまり浜風は弱っていたということか!


「いやあ、こんなに計算通りにいくとは思わなかったよ。でも気象データを配球に取り込むのも興味深くて面白いね、うん!」


 打席に戻るとハカセが嬉しそうに話しかけてくる。だがこっちは嬉しくねーんだよ!


「まさかこの瞬間に風が弱まると予想したってのか? だがいくらなんでも」


「今日はこのあたり、お昼頃に一時的に天気が悪くなるって予報出てたよね? もしかして知らないの?」


 そういやそんなことを古池監督が言ってたような……浜風は近くの海側から吹いてくる風だから、気象の変化で強さや方向に変化があってもおかしくない。


 つまり弱ってる瞬間を見逃さずに保険をかけて投げてきたってことかよ……!


 そして続けざまにエスカンダリが言葉で畳み掛けてくる。


「まんまとワイらの演技に引っ掛かったのう。ホンマにお前を仕留めようとしたボールをこれから味あわせたる!」


 オレが構え直すとヤツは間髪入れず投球動作に入った。まるで最初から計画していたように。


「ほな、トドメ行くでなあ! そりゃああっ!!」


 今度は一転して外角低め……ストレート、いやスプリット……なんとなく違う。


 だが全て計算ずくと聞かされて内心動揺していたオレは、見極めきれてないのに手を出しちまった。


「うりゃああっ!!」


 ズバンッ!!


「ストライク、バッターアウト!」


「そんな! さっきまで大きいファウル連発してたのに!」

「よっしゃ予告封じ成功! さすがエスカンダリ!」


 途中までは、すぐ手前まではストレートに見えた。


 そして少しずつ減速しながら滑るようにややシンカー方向へと急激に落ちてった。


 昔野せきのが投げてた逆スライダーとも違う動き……オレはバットを叩きつけたくなるのを我慢してベンチへと戻らざるを得なかった。



<あとがき>

いつも読んでいただいてありがとうございます

次回更新は5月15日(金)の予定です

よろしくお願いします

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