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5校連合チームで挑む甲子園 〜160cm台の怪物二刀流、全国を震わせる〜  作者: ウエス 端
準々決勝

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第33話 変化球マニア

 準々決勝の革新学院高校との対戦は、1回表裏にお互い1点ずつ得点した後は同点のまま3回表まで進んでいる。


 そして革新学院はまるでブルペンデーの如く、先発ピッチャーの昔野せきのをスパッと降板させて2番手としてエスカンダリ有人ありひとをマウンドに送り込んできた。


 196センチの長身でマウンドに立つと更にでけェ……。


 オレが、というか我らが5校連合チームが対戦してきたピッチャーの中で一番背が高いのだから、余計にそう感じるのかもしれん。


 こちらのそんな戸惑いを敏感に察知したのか、エスカンダリは挑発めいたことを河内弁でまくし立てやがった。


「お前らに先に言うとくわ……この試合、ワイがここから8回までパーフェクトに抑えるから。そうしたら9回は……。というわけで今から甲子園の土持って帰る準備しとけやっ!!」


 この宣言に場内はワアーーッ! と盛り上がりが最高潮に。そしてあからさまにオレの方を睨みつけて追加の一言を付け加えたのだ。


「のう、オージロウ!!」


「うおおーっ! エスカンダリが怪物を挑発きたーっ!!」

「いいぞいいぞ、もっとやれー!!」

「オージロウもなんか言い返せよ〜!? このままじゃナメられっぱなしだぞ!」


 うっせーな 。そんな売り言葉に買い言葉みたいなことするのはちょっと……でもまあ、観客たちを鎮めるためにも一言くらいはなんか言っておくか。


「いいから黙ってろよ! あとでホームラン打ってやっから!!」


「……チビのくせにええ度胸しとるやんけ。せやけどなぁ、後で死ぬほど後悔させたるわ……!!」


「でたぁーっ! オージロウのホームラン返し!!」

「これもう、たまんねえ展開だなあーっ!!」


 しまった。かえって火に油を注ぐ結果に……。そして球審からキツい一言が飛んできた。


「両者とも! これ以上挑発を続けるなら、次は退場もあり得るから!」


 ひええ! それは困る……オレはもちろん、エスカンダリもさすがに口を閉じてプレーに集中しはじめた。


 それに伴ってスタンドの喧騒も落ち着いてきて、ようやくのプレー再開となったのである。


 打席には、今日は8番に入ってる中地さんが既に構えている。


 さて、エスカンダリはどれくらいのボールを投げてくるのか。


 もちろん160キロカルテットの1人なんだからそのレベルのストレートは投げるんだろうけど。威力やノビ、キレがどれくらいなのか、それによってこっちの打ち方も変わってくるからな。


 さて。スリークォーターの角度で右腕を振って投じられた、注目の初球は……!


 パシッ。


 緩くて大きな変化球が外角低めいっぱいに決まり、キャッチャーミットから軽快な捕球音が聞こえてきた。


「ストライク!」


「決まった! 相手をおちょくるようなスローカーブ!」

「今日も多彩な変化球で奪三振ショー、楽しませてくれよー!」


 相手側スタンドはいつも通りの光景といった感じでまた盛り上がりを見せる。


 対してこっちは、中地さんはもちろんスタンドも呆気にとられて静まってしまった。


 エスカンダリの持ち球としてあるのはわかってたけど、初球からああいうのはやっぱり意表を突かれて、しかもなんか腹が立つっていうか。


 だけどここは冷静に対応しないと……と中地さんを見ながら思っていたのだが。


「またカーブか! こなくそっ!」


 スカッ!!


「ストライク! カウント0−2!」


 初球とほぼ同じコースだが、さっきより速くて完全に振り遅れてる。同じ球種でもこんな変化をつけられるとは。


 そして素早くサイン交換を終えたエスカンダリが中地さんへ投じた3球目は。


「これで1つ目やなぁ! そりゃああっ!」


「速い、140キロ近い……けど一旦浮き上がって、そこから縦に大きく割れて……!」


 ズバンッ!!


 「ストライク! バッターアウト!」


「うっしゃあああっ! 幸先良く三球三振スタート!」

「あーあ、ボール球振らされちゃって!」


 うーん。かなり回転数が多くて速かったけど大きく割れて落ちて、あれはカーブじゃない球種なのか?


 と悩んでいたら古池監督が説明してくれた。


「あれ、ナックルカーブみたいだね。速い球速からバッターの手前で大きく縦に割れるけど、落ちるっていうよりはググッと曲がる感じだった」


「カーブだけで何種類も……なんなんだアイツ」


「本人が『変化球マニア』らしいよ。だから球種が多くて、しかもどれも精度が高い。それに時折160キロのストレートを織り交ぜてくるわけだから狙いを絞るのが難しいんだよね」


「なんと……それは打ち甲斐のありそうなヤツじゃないですか」


「ははは……まあオージロウくんには期待してるよ」


 監督のちょっと乾いた笑いが気になるが、期待してるというならそれには応えたい。


 そして会話してる間に、9番バッターの近海ちかみがスプリットを振らされて早くも追い込まれてる。


 このまま続けるつもりか。それとも似たような落ちるボールを混ぜてくるのか。


「これで2つ目! そりゃああっ!!」


 ズバンッ!!


「ストライク! バッターアウト!」


「今度は161キロストレートでズバッと見逃し三振! シビれる〜!」

「甘いストレート見逃して、何やってんだよ!」


 今度はそうきたか。三振を奪われた近海は目茶苦茶悔しそうに呟きながら引き上げてくる。


「……スプリットとストレートが見分けつかねーっぴょ! あんなの無理ゲーだっちゃ!」


「ドンマイ近海くん、まあ落ち着け。オレがカタキを取るからさ」


 なだめつつバットとヘルメットを持ってサークルへと向かい始める。


 そして次はしょーた……キャプテンとして流れを変える一打を頼んだぜ!


 だけど相手キャッチャーの比出木ひできハカセがしょーたに一言話しかけてる。


 ここは声をかけておこう。


「しょーた! 元チームメイトとはいっても、ささやきに惑わされんじゃねーぞ!」


 しょーたは……何故かちょっと不機嫌な顔で返事しやがらない。うーん、そういう会話じゃなかったのかな。


 まあいい、とにかく相手バッテリーのペースを少しでもかき乱すためなら、しょーたの機嫌は後回しだ。


 それにしてもエスカンダリのヤツ、今度は何を投げてくるつもりなのか……。


「やっぱ今日のマウンドも暑いわ〜! 次は効率よく打ち取りにいこか〜!」


 効率よくだぁ? となると……。


「ほな行くで! そりゃあっ!!」


 150キロ近いストレート……いやバッターの手前で変化して、ツーシームか!


 バコンッ!


「ファウル!」


 おっ、ついていけてるじゃん、しょーた。ずっと体幹トレーニングを続けて、その成果なのか泳がされて力の無い打球は減ってきてる。


 それから2球続けてファウルで粘り、次は4球目。またツーシームなら捉えられるはず。


「あー、こんな粘られるんやったら3球目にこれ投げときゃよかった! そりゃああっ!!」


 エスカンダリはあんなこと言ったがやっぱツーシームじゃん。しかもほぼド真ん中、激甘コース、行けしょーた!


「ヒットもらった! でやああっ!!」


 スカッ!!


「ストライク! バッターアウト!」


「おおっ、ストレートかと思ったらスゲー曲がって沈んだ!」

「三者三振でオージロウに回らないなんて」


 あれはなんだろう。途中までストレート或いはツーシームだと思ったのに。そういえば縫い目の見え方が違ってたような。


「しょーたくんへの最後のボール、たぶん『ワンシーム』だよ。あれ結構、制御が難しいはずなんだけどね」


 ベンチに戻るとまたもや古池監督の解説が待っていた。


 聞いたことはある球種だけど、確かにこれまで使い手を見かけたことはない。


 ふふふ。初めて見る球種か……ますます打ちたくなったぜ〜!


 などと考えていると、相手バッテリーが楽しそうに引き上げていくのが見えた。


「今日も変化球はどれもキレてるね。彼と対戦する前に確認できて良かったよ、有人」

「まあ、お前がうまいこと組み立ててくれるからのう! ワイはボールを操ることに専念できるんや」


 何を話してるんだろう。試合前に屋内の通路であの2人に出会った際は、ハカセのオデコの広さを巡って一触即発だったのに。


 つまり仕事……試合でバッテリーを組むのはまた別ってことか。そういう意味ではオレとしょーたよりもずっと大人だよな。


 それはともかく、まずは3回裏の守備を応援しないと。最前列のベンチに座って声を出す準備をしておこう。



<あとがき>

いつも読んでいただいてありがとうございます

次回更新は5月13日(水)の予定です

よろしくお願いします

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