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5校連合チームで挑む甲子園 〜160cm台の怪物二刀流、全国を震わせる〜  作者: ウエス 端
準々決勝

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33/33

第32話 勘の鋭い男と名古屋弁の4番バッター

「相手の決め球スライダーをいきなりレフトに突き刺してくれやがった! 今日もオージロウは絶好調だぁ!!」

「いや、まだまだ試合は始まったばかり。このあとはいつも通りにウチの四天王がゼロを並べてすぐ逆転してくれる!」


 1回表だというのに、早くもスタンドの歓声が凄まじい。ちょっと耳が痛いくらい。


 まあ、こうなったのもオレのソロホームランで先制点を幸先良くゲットしたから。これは案外この勢いのまま勝ってしまうかも……ふふふ。


 などと考えながらホームインしたところで思い出した。


 姉ちゃんたちはどのあたりの座席にいるのか、確かめておかないと。


 まず姉ちゃんは……内野指定席か。まあ、3回戦で兄ちゃん……らしき人物が現れたエリアなんだから当然か。


 で、由香里さんはレフト側外野席。ということは仲尾さんがライト側のはず、いたいた。


 以前の外野席は無料だったらしいが今は有料指定席……今日は準々決勝で席が結構埋まってるし、不意に現れるというのは考えにくいのだが。


 この前は何度も確認したはずのエリアにいきなり現れたし、油断ならない。


 もしオレたちが先に見つけた場合のブロックサインも打ち合わせ済み。今度は悟られないように工夫してるから、絶対に逃さねえぞ……!


「オージロウ! グラブなんか持って、いったい何してんのさ?」


「え? 裏になったらマウンドへ行くために決まってんだろしょーた! お前こそミットとプロテクターの準備をしておけよ!」


「オージロウくんは今日はDHスタートで、先発はわだちくんでしょ!」


 おっと、うっかりやらかすところだった。


「すみません監督。ベースを回って姉ちゃんたちを探してたら、すっかり忘れてました」


「別にいいよ。気になるのは仕方がないしさ」


 危ねえ……なんかもう習慣づいちゃってるんだよな、マウンドに行く準備するのが。


 クヨクヨしても仕方がないので最前列のベンチに座る。ここでチームメイトたちを応援するのが今のオレの仕事だ。


 ちなみに先発でマスクを被るのもしょーたではなく勝崎さん。


 肩と打撃は弱いのだが、轍くんは3年生の彼がミットを構える方が安心感があるらしくて相性がいい。


 それとロングリリーフを予定している大岡の負担を軽くするために、しょーたはショートとして先発している。


 オレも7、8回あたりから投げる予定だ。つまりクローザーということで、いつものオレとは一味違うところを見せてやりたい。


 まあ、投げずに済む展開になればそれに越したことはないのだが。



「ストライク! バッターアウト!」


 おっしゃ! 1回裏、轍くんは甲子園初先発で好スタートを切ったのだ!


 正直言えば心配だったけど。実際に投げ始めると革新学院打線の先頭打者をあっという間に仕留めたのだ。


 おそらくは予想外の展開にまたしてもスタンドのどよめきが収まらない。


「おお〜っ! 先発がオージロウじゃなくて1年生だから心配したけど、結構やるじゃん!」

「センバツ王者にエース温存とか、ナメた真似しやがって! 控えに手こずってないで早いところ打ち崩しちゃえよ!」


 いやいや、ウチの轍くんをナメてもらっちゃ困るなあ。メンタル面に不安があるけど実力を出し切ればそう簡単には打てない。


 長い左腕から繰り出すキレのあるストレートを見せ球にして、横に流れるのと落ちるのと2種類のスライダーがコーナーにビシビシ決まってる。


「この調子でどんどんいこーぜ!」


 オレも思わず力を込めてベンチから声を張り上げて気分も高まる……と、ここで古池監督がそれに横やりを入れるように不穏なことを話しかけてきた。


「オージロウくん。ちょっと向こうのベンチ見なよ」


「なんすか。ベンチがなんだってっていうんですか?」


「3番バッターの比出木ひできに話しかけてる選手。あれがセンバツでは四天王の一角だった待合まちあいだ」


 あー、あれがしょーたの言ってたヤツか。1年生投手にその座を奪われても腐らずにチームに貢献しているのは立派だなあ、と思うけど。


「それがどうかしたんですか?」


「丁度バットを比出木に差し出してる場面だけど。噂では勘が目茶苦茶鋭くて、彼が『このバットを使えばヒットが打てる』って言ってるらしいんだ」


「で、その通りにヒットを打つ……そんなの偶然でしょ、迷信じみたこと言われても」


「まあ、見ててご覧よ」


 何をバカなことを……。


 それはともかく、その待合にあのヤンキー座り男、エスカンダリ有人ありひとが楽しそうに喋りかけてる。


 オレが見ていた限りではベンチでもブスッとして他の選手を寄せ付けない雰囲気を放っていたが、えらく態度が違う。


 まあ、奴らの人間関係など知ったこっちゃないが、なんか引っかかるというか。


 などと考えてると、ツーアウトで比出木ハカセが左打席に立った。右投げ左打ちか。


 小柄で細いが筋肉で引き締まってる感じ……でも轍くんがいつも通りに投げれば大丈夫。


 そしていつも通りに左腕を鋭く振って、初球は内角……からスライダーが吸い込まれるようにド真ん中へ!


 バシィーッ!!


「よっしゃ左中間真っ二つ! 2塁、いや3塁までいけー!」

「やっぱオージロウじゃないとダメじゃん!」


 スタンドからはいろいろと聞こえてくるが、確かに甘かったとはいえ、キレの良い横滑りスライダーを苦もなく弾き返すとは……!


 しかも追いついたセンターの阿戸さんが珍しく手につかないで送球が遅れてる。このままじゃ本当に!


「セーフ!」


「3塁打! しかも次は4番……同点は間違いない!」

「いったれー! ホームランかっとばせー!」

「うわあ! もうオージロウを出してくれー!」


 ひええ、マジで打ちやがった。ド真ん中に行ったのはやはり……いや違う、勘とか神通力とかじゃなくて偶然のコントロールミスさ!


 それと、期待してくれるのは嬉しいけど轍くんを不安にさせないでくれよなー。ここは声をかけておこう。


「轍くーん! 大丈夫、次のバッターを打ち取れば済む話だ! いつも通りに落ち着いて投げれば問題ない!」


 精一杯声を枯らして叫んだ甲斐があったのか、轍くんは動揺していないようだ。最初に出会った頃に比べたらずいぶん落ち着いてきたと思う。


 しかしそれをかき乱すかのように、ひときわデカい声の独り言が左打席から聞こえてきた。


「あ〜、まだ昼前やっちゅうに、でら暑いわ〜! これは1球で仕留めんといかんだわ!」


 その次のバッター……4番の金正一かねまさいちが入ってくると雰囲気が一変したのだ。


 革新学院の4番DHでキャプテン、そしてエースナンバー『1』を背中に着けた男。


 愛知県出身の選手ということで、名古屋弁でまくし立てるように喋ることで一気に自分のペースに引き込んでる。


 それはともかくどっかの名探偵みたいな名前だ。まあそういうキャラではなさそうだけど。


 やや緊張の表情に変わった轍くん。慎重に初球を投げ込んで……内角低めに落ちるスライダーが決まって、初球狙いの金正一が空振り! のはずだったが。


「たーけが! 落ちが甘いがやぁ!!」


 バシィーーンッ!!


 スライダーが落ちきったところを強引に拾い上げて、今度は右中間へ……!


 ヤバい、フェンス越えるかも。


 ガコッ!!


 フェンス直撃……ラインドライブがかかったらしく、打球が急激に下へ伸びていった。


 ホームランにならなくて良かったぜ。しかし同点に追いつかれてしまった。


「やってもうたわ〜! これじゃベンチで休めん! クソたわけがっ!!」


 セカンドベース上で文句をいってる金正一。全体的に打線が弱いチームだが、ヤツだけは別格。


 しかも普通なら当てられない低いボール球を……とんでもねえ。


 これはマウンドでヤツと対戦したくなってきちゃったな。でもそれはチームの苦戦を願うも同然……やっぱり先発でいきたかったなー。


 って、それよりも轍くんをフォローしないと。


「まだツイてる! 今度こそ次のバッターを確実に打ち取ろう!」


 間を置かずに頷いた轍くん。そして落ち着いて後続を仕留め、逆転は許さなかった。


 2回は表裏とも三者凡退……このまま両先発が踏ん張って膠着状態となるか?


 と思った矢先の3回表。


「ようやっとワイの出番やのう〜!」


 なんと、革新学院はここでスパッとピッチャーをエスカンダリ有人に交代しやがった。


 ほとんどブルペンデーみたいな運用だな。本当にスクランブル体制ってことか……まあいい、次はヤツのボールをホームランにして、最終的には4人ともちゃんと打ってやるよ……!


 

<あとがき>

いつも読んでいただいてありがとうございます

連載の励みになっております。

次回更新は5月11日(月)の予定です

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