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5校連合チームで挑む甲子園 〜160cm台の怪物二刀流、全国を震わせる〜  作者: ウエス 端
準々決勝

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第31話 脳がバグりそうだ

 準々決勝の第2試合、我らが5校連合チームと革新学院高校との対戦が始まった。


 整列と挨拶は既に終わって、1回表がまもなく始まろうとしている。


 先攻はウチなので、オレとしょーたはバットを持ってベンチから出たのだが。


「この試合も頼んだぞ〜! 新四天王の昔野せきのくん!」

「今日もスライダーでバッタバッタと斬りまくってスカッとさせてくれよな〜!」

「この試合もサクッと勝って春夏連覇に弾みをつけようぜー!」


 さすが春のセンバツ王者……応援団の声援ものっけから熱が入ってる。それはともかくとして。


「なあしょーた。向こうの応援で『新四天王』って聞こえてきたんだけど」


「ああ、それは『160キロカルテット』の別名っていうか。カルテット呼びはマスコミ側が始めたけど、校内とか関係者は以前から投手陣を『四天王』って呼んでるらしいよ」


「じゃあ『新』ってなんだよ?」


「昔野は1年生……つまりセンバツでは別の選手が四天王の一角だったけど、昔野がそれに取って代わったってことだ。っていうかミーティングでも言ってただろ。また話を聞いてなかったな?」


「そうだっけ。それにしても、センバツ優勝に貢献しても控えに回されるんだ……」


「ソイツは最速150キロだから、決して劣っているわけじゃないけど。160キロの新入生が入ってきちゃったらね……でも他の特殊能力でチームに貢献してるって噂がある。おっと、詳しくはあとで」


 1番バッターのしょーたは話の途中で右打席へと向かった。気になるけどしゃあない。


 やや緊張した面持ちで構えるしょーたに対して、昔野は余裕綽々って表情だ。どっちが1年坊主かわかんねえなこりゃ。


 そして昔野が右腕から放った初球は……。


「ボール!」


 いきなり157キロのストレートが内角高めに食い込んで、しょーたは思わず顔を背けてしまった。


 そこまでするほどだったかな。それをからかうかのように相手キャッチャー比出木ひできハカセが一言話しかけてる。


 ヤツはしょーたの中学時代のチームメイトで、父親の転勤に合わせて革新学院の進学コースを受験し、入学後に一般枠で野球部に入ったそうだ。


 つまり頭が良くて野球センスもあるってことか。果たしてどんなリードをするのやら。


 と上から目線の発言をしたのは軽率だった。


「ストライク! カウント1−2!」


 ポンポンと内外角のチェンジアップで一気に追い込んだのだ。


 ストレートの制球がイマイチと見るや、別の球種ですかさずストライクを取りにきたってか。


 しかも、しょーたがストレートかカットボールを待ってるのが見抜かれたのか、大胆にも甘いコースに投げさせたのだ。


 そして4球目……。


「ストライク! バッターアウト!」


 外角の落ちるボールを見逃して三振。早速あのボールにやられちゃったかー。


 戸惑いと納得いかない表情のしょーたに一応は声をかけておこう。


「最後のやつ、やっぱ手が出なかった?」


「ああ。データではわかってても、実際に見ると脳がバグりそうだ」


「狙ってリードしてきたのかなあ? あのハカセってキャッチャー」


「どうかな。おれなんかよりずっと頭が良いから、中学時代も五次浦ごじうらを上手くリードしてたけど。さっきのは偶然かもしれないし」


「わかったよ。あんがと」


 あの暴れん坊な性格の五次浦を納得させて投げさせるだけのリードができてたってことか。


 それじゃ気を引き締めて臨まないと。左打席で軸足側を少しだけ掘りながら構えに入る。


「あのね。僕、オージロウくんを抑えるために仮説をいくつか立ててきたんだ、うん」


 いきなりハカセが喋りかけてきた。おとなしい顔してるし、ささやいたりはしないとばかり思ってたから意外だ。


 でも仕掛けてきたからには返してやらねーとな。


「そんな理屈なんぞ、オレのスイングスピードの前には無力だってことを見せてやるよ」


「そうかなあ。まあ、ここは1つずつ答え合わせといこうじゃないか、うん!」


「あっそう。ホームランという解答だと思うけど、それでいいなら」


 さて初球は……左バッターに対してこの手のピッチャーが投げてくるのはある程度予測がつくが、どうくる?


 ピッチャーの昔野はランナーがいなくてもセットポジションから投げてくる。少しでも制球を安定させるためか。


 始動するとスリークォーター……にしては低い角度から右腕を鞭のように振り抜いてきた!


「ずおおっ!」


 内角ベルト付近のボール球。


 ジャイロ回転っぽい……早速アレだな!


「うりゃああっ!!」


 スカッ!!


「ストライク!」


「いいぞいいぞっ! 怪物をスライダーで切り刻めー!」

「オージロウにしちゃバットとボールが離れてたし、何であんなクソボールを振るんだよ!」


 ああ、早速両側のスタンドからいろいろ言われてる。


 だけど狙いは間違ってなかった。でもさっきと軌道が違うんだよ。


 しょーたを見逃し三振に仕留めたスライダーと曲がる方向が……!


 今のはややオレの方に動いたが、ほぼ真っ直ぐストンと落ちた。だが昔野のスライダーは逆に曲がることが多い。


 確かにしょーたの言う通り脳がバグる。それでもシンカー方向に軌道を予測して振ったのに……。


 今のは偶然か必然か。それによってこのあとの展開が変わるのだが、キャッチャーのハカセはニヤッと笑っただけで心が読めない。


 そんなことを考えてる間に2球目!


 ズバンッ!!


「……ストライク! カウント0−2!」


 今度は外角高めに160キロストレートを決められた。これもデータではわかってたが、実際に打席で見るとなかなかエグい。


 シュート回転してオレから逃げながらノビて浮き上がったのだ。大岡の浮き上がりながら曲がってくるスライダーを逆に見てる感じだぜ。


「いけー昔野ぉ! サッサと切り捨てちまえー!」

「やっぱオージロウでも160キロカルテットは無理なのかー!?」


 場内の雰囲気がヤバい。ただでさえ今日のウチの先発は1年生のわだちくんなのに……いきなり呑み込まれてしまいかねない。


 いや落ち着け。ハカセの言ってた仮説とやらは、今回は何をテーマにしてるのか。


 ここまでの配球から考えるに、今のところはあの攻め方を試してるのかも。


 じゃあ次は……。


「ボール!」


 また外角ストレート。今度はボールになった……いやそうしたのか。


 つまり今回は内外角の揺さぶりでオレを仕留められるか確認してるんじゃないか。


 ならば次は……という考えはさすがに甘すぎた。


「ファウル!」


 場内はライト側スタンドに飛んでった大ファウルにどよめいているが、見た目よりはギリギリで弾き返した打球だ。


 確かに内角にはきたがチェンジアップだった。内外角に奥行きもつけ足したってか。


 途中までスライダーと迷ったけど、ブレーキのかかり具合から判断して落ちきったところを身体を回転しながら捉えることに成功。


 そして次も大ファウル。今度は内角カットボールで緩急つけて芯を外しにきたが、構わずに身体の回転とパワーで打ち返してやった。


 ふふふ。ほんの少ししか変化しないカットボールはオレにはホームランボールにしかならない。


 6、7球目は外角と内角にシュート気味に浮き上がる160キロストレート。どっちもボールでフルカウントまで持ち込んだ。


 右バッターなら食い込んでくるけど、左のオレとしてはセンターから左に広角で打てば良いので見切るのは意外と難しくなかったな。


 フルカウントで、あとオレに投げられるボールは1種類だけ。それは最初から狙っていた昔野の決め球……!


 キャッチャーのハカセからは余裕が消えたように感じる……表情には出してないけど。


 そのせいか昔野も緊張の表情となって、セットポジションから力を込めて右腕を振り抜いた!


「ずおああっ!!」


 真ん中からやや外角にストレート……ではなくてジャイロ回転っぽい。


 あとはどっちに曲がるのか、落ちる直前に見極める……そっちだぁ!!


「うりゃあああっ!!」


 バッシィーーンッ!!


 シンカー方向に外角いっぱいをかすめながら落ちるスライダーを、思い切り踏み込んでレフトに向けて打ち返した。


 真っ直ぐ落ちるときは、落ち始めるまで変化は無いんだけど。


 少なくともヤツの逆スライダーは、落ち始める直前に徐々に動き出しちゃうのが見えた。


 それを待ってスイングを開始して……引っ張るのは無理だったけど、見事に芯で捉えることに成功したよ。


 弾丸ライナーで初速が速いので、左に切れ始めたのはスタンドに入る手前になってから。もう間違いない。


 残念なのは、昔野が真っ直ぐ落ちるのと逆スライダーを意図して使い分けてたのかまでは解明できなかった。


 最後のボールを投げたコースからすると偶然任せのような気がするが……それともハカセが上手くリードしてたとすれば、まだまだこの先油断できない。


 革新学院側は悲鳴、ウチの側は歓喜とそれぞれのスタンドの歓声が聞こえる中、淡々とベースを一周してホームイン。


 幸先良く1点をゲット! これで轍くんが安心してマウンドに登ってくれれば勝機は膨らむ。


 もちろんあとの打席でも狙っていくけど、相手に簡単に取り返されないように頼んだぜ。



<あとがき>

いつも読んでいただいてありがとうございます

次回更新は5月8日(金)の予定です

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