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5校連合チームで挑む甲子園 〜160cm台の怪物二刀流、全国を震わせる〜  作者: ウエス 端
準々決勝

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第29話 試合前日のあれこれ

「それじゃ、ちょっと休憩入れようか!」


「あぁ〜、疲れた! 喉渇いた〜!」

「麦茶にドリンクも用意してますから、遠慮なくどんどん飲んでくださいね〜!」


 ゴクッ、ゴクッ! と、練習の合間に勢いよく飲む麦茶はどうしてこんなに美味いのか。


 特にこの暑い日中は……身体に水分が染み渡るようだ。


 今オレたちは運営から指定された時間と場所で試合前日の練習を行っている。


 課題は速球への対応。監督たちにバッピをやってもらってるのだが、打席をホームからかなり前に置いてバッティング練習に励んでいる……んだけど。


「全然ダメだな〜俺たち。差し込まれて詰まってばっかじゃん」

「なんか不安になってきた。俺らにはやっぱ荷が重すぎる相手なんじゃないか?」


 成果としてはイマイチなんだよな、今のところは。


 しかも実戦ではもっとすごい威力のボールが来るだろうし……そんな後ろ向きの雰囲気が漂い始めたところで、しょーたがキャプテンとして檄を飛ばす。


「みんなもっと自信持っていこうよ! おれたちはいつもオージロウのボールを見てるってことを忘れてないか? それに比べれば彼らのボールは遅いんだからさ、必ず打てるって!」


「そりゃあそーだけどさー」

「4人のタイプもそれぞれ違うから、そのまま当てはめるのはどーかなー!」


 うーん、簡単には雰囲気が良くならない。


 でもまあ、そうなってしまうのも無理はないけどね。明日の対戦相手がそれだけの強敵なのだから。


 『革新学院高校』……それが準々決勝で当たる相手校の名だ。


 過去の甲子園出場歴は春夏合わせて30回近くであり、春2回、夏2回の全国優勝経験もある北関東の名門強豪私学。


 そして今年の春のセンバツ優勝校でもある……!


 その原動力となったのが、他校を圧倒する超強力投手陣の存在。


 なんと4人が160キロ超えを果たしているという。もちろん常時ではなくて最速が、だけど。


 通称は『160キロカルテット』……まんまなネーミングだが、それでもこの数字は高校球児にとって破壊力抜群。それだけで圧倒される高校も多いと思う。


 そして大会では2人ずつの2グループでローテーション組んで回してるらしい。つまり明日出てくるピッチャーたちは休養十分ってわけだ。


 ああ、なんか自分で言ってて気分が滅入ってきた。ここは自身も含めて気分を一新すべく、景気づけにパッといきますか!


「みんな! 休憩が終わったらオレがバッピ務めてやるよ! それでオレからヒット打てたら」


「おっ。なんかくれるのか?」

「普段はケチなオージロウにしては珍しい!」

「どうせなら雛子ひなこさんとのデートの権利をくれよ」


 最後のしょーたの要望は無視。それに、そもそもだな……。


「賞品を出すなんて言ってねーけど。ケチで悪かったな、その代わり思いっきり褒めてやるから。それで自信をつけてくれ!」


「なーんだ。そんなもんいらねーよ!」

「少しでも期待した俺たちが馬鹿だった」

「もういいよ。真面目に練習やるから」


 なんだよ、折角思い切って提案したのにコイツらときたら……。


 そして古池監督の一言が更に追い打ちをかける。


「ダメだよオージロウくん! 今日はキャッチボール以外はノースローで肩と肘を休めなさいって言ったでしょ!」


「……いいじゃないすか。どうせ明日は先発じゃないんだし」


「そういう問題じゃないから! 絶対に投げるんじゃないよ!」


「へーい」


 やれやれ、うるさいなあ。もちろんオレのことを思ってのことだとは分かってるんだが……。


 激闘だった3回戦でかなりの球数を投げてしまい、おまけに延長戦でキャッチャーも務めたから肩肘に負担をかけたのは事実だ。


 それと更に勝ち上がった場合のことも考えて、大会規定の球数制限に引っ掛からないようにするという狙いもある。


 革新学院の弱点は投手陣に比べると貧弱な打線。センバツでもこの夏でも僅差で勝った試合が多い。


 なので先発は1年生のわだちくんに任せて行けるところまで投げてもらい、大岡が中継ぎ……可能ならそのまま最後まで、というのが古池監督の描く青写真。


 オレはこのチームで初めて打者専任となるかも。いつもはダルいなと思う2刀流も、いざやれないとなるとさみしいというか。


 実際、どうやってリズムを保って打席に入るのか。体力的にはラクだが、これはこれで悩みもあるのだ。


 そんな感じでイマイチ乗り切れないまま練習時間は過ぎ去ってしまい、やや不安が残る状態で準々決勝に臨むことになったのである。



「あっ! オージロウ、それにみんな! おかえり〜!」


 練習からホテルに戻ってきたオレたちをエントランスで待ち構えていたのは我が姉、山田雛子であった。


 その両脇には由香里さんと仲尾さんの姿も見える。


「なんだよ姉ちゃん! オレに用事でもあんのか?」


「別に用事なんて無いんだけど。かわいい弟の様子を見に来てはいけないのかしら?」


「なんだよそれ。何か企んでるんじゃ……」


「雛子さん、こんちわっす!」

「暑いのにわざわざ俺に会いに来てくれるなんて感激だぜ〜!」

「いや、おれに会いに来てくれたんですよね?」


 うわ、みんなが一斉に姉ちゃんに喋りかけるからオレの詰問がうやむやな状態に……。


 そうだ、今のうちに彼女たちにお礼を言っておこう。


「由香里さん、仲尾さん! 兄ちゃんの件では協力してくれるって聞いてます。なんてお礼を言ったらいいのか……!」


「そんなに気にしなくていいから。私とオージロウくんの仲じゃない」


「あたしもさ、ひーちゃんから頼りにされて引き受けてるだけだから。そんなに気を使わなくていいよ」


「……ひなちゃんから頼りにされてるのは私だと思うんだけど、仲尾さん?」


「そうだっけ? でもあたしの方が先に依頼されたんだけど」


「それはたまたま私が席を外してて……!」


 あー、この2人また些細なことで姉ちゃんを巡る争いを始めちゃって……。もういいや、部屋に戻ろうと思ったところで後ろから元気な女子の声が。


「仲尾先輩、由香里先輩! お疲れ様です!」


「あっ。鯉沼ちゃん、お疲れ様〜! 泉ちゃんも!」


「お疲れ様です、仲尾さん」


 ふう。タイミング良く女子マネたちが声をかけてくれて、由香里さんたちの争いが中断した。これでひと安心。


 いやそうでもないか。由香里さんが泉さんに声をかけたのだが、何故かつっけんどんな態度をとっているのだ。


「泉さん、こんにちは!」


「……どうも」


 どうしたんだろう。あの2人、仲が悪いのだろうか?


 由香里さんは姉ちゃんの幼馴染。昔はよくウチの家に遊びに来て、オレにとっては『もう一人のお姉ちゃん』って存在だから、ああいうのを見るとなんか気になっちゃうな。


 まあ、女子同士の関係に無闇に口を出すつもりなどないけど……モヤモヤする。


 そんなこんなで、準々決勝までの2日間のインターバルはあっという間に過ぎ去った。


 試合では、まずは相手の先発の出鼻を挫いて、轍くんの援護をしてやらないとな……!




<あとがき>

いつも読んでいただいてありがとうございます

次回更新は5月4日(月)の予定です

よろしくお願いします

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