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5校連合チームで挑む甲子園 〜160cm台の怪物二刀流、全国を震わせる〜  作者: ウエス 端
3回戦

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第24話 一打同点のピンチ

「ノーアウト一二塁……ムフフ、絶好の一打同点、いやホームランなら逆転のチャ〜ンス!」


 口調こそ明るいが、これまでと違い不敵な笑みを浮かべながら右打席に立った青懸巣アオカケス学園の3番バッター鯨路げいろ


 その名前に違わぬクジラのような巨体で大きく構えるので豪快なバッティング、というイメージが先に立つけど。


 実際には基本通りにインサイドアウトでコンパクトに鋭く振り抜いてくる、穴のないバッターって感じなんだよな。


 その上でスイングスピードは猛烈だから……マジで投げるところ見当たらないよ。既にマルチヒット許してるし。


 どうしようかな。しょーたも困ってるように見えるけど。


 しかしいつまでも時間稼ぎするわけには。覚悟を決めてプレートを踏む。踏むぞ……。


「タイム!」


 おっと、球審からコールが。控えキャッチャーの勝崎さんが申告して、そのまま伝令としてマウンドにやってくる。


 正直に言おう、助かったぜ〜。


 古池監督が絶妙なところで間を取ってくれたことに感謝しつつ、マウンドでしょーたたち内野陣と勝崎さんが集まるのを大人しく待つ。


「オージロウ、しょーたくん! この場面、どうするつもりか決まってる?」


「えっ。勝崎さん、監督から何か指示もらってきたんじゃ」


「いや、特に何も。ハッキリいって時間稼ぎが目的だと思うよ」


「守備のシフトも何もないですか?」


「ゴメンよひょ〜ろくくん。それも特になし」


 つまり通常の守備位置ってことか。まあせいぜいゲッツーが取れる位置でってことで、それはわざわざ指示するまでもないことだ。


 でもどう投げるかって聞かれても。引っ張るのも広角に打つのも、内角も外角もパワフルに打ち返せるバッターだから、あとは力でねじ伏せるくらいしか思いつかないんだけど。


 などと考えていたら、しょーたが先に勝崎さんの問いに返答した。


「オージロウの一番いいボールで勝負して、あとは野手の正面に打球がいくことを願うだけです」


「え〜。正捕手がそんな運任せな発言はどうかと思うけどな」


「そうは言っても鯨路を確実に打ち取れる方法なんてないですよ。オージロウにはストレートしかないんですから」


「ちょっと! なんだよその言い方。オレが悪いみたいじゃん」


「だってその通りだろ。これじゃ緩急すらつけられないよ。だからチェンジアップくらいはなんとか習得しろとあれほど」


「そんなことを言われた記憶はねーけどな?」


「それはお前がおれの話をちゃんと聞かないから」


「二人とも、こんなところでケンカを始めない! まあ時間もないしこっちから言えることはただ一つ。塁はまだ空きがある……それを使うかどうかは君らに任せるよ。と監督も言ってたから。それじゃな!」


 勝崎さん、というか監督は重要な決断をオレたちに託した。


 もちろん責任を投げつけたわけじゃなくてオレたちの意思を尊重してくれてるのはわかるんだけど、重いな……。


 しょーたの顔を見ると……向こうもオレの顔を見てる。


 しゃあない、一言だけ自分の意思を伝えよう。


「オレは勝負するつもりだ」


「……わかった。それでいい」


 なんだかんだ言いつつもオレのワガママを通してくれる。ありがとうよ、相棒。


 内野陣もそれぞれ戻って、いつもより深めの守備位置を取っている。でないと鯨路の打球速度が速すぎるので追いつけないから。


 ということでオレも覚悟が決まった。


 全力で必ず抑える。ベストは三振……例えそれがダメでも内野が捕れる程度の打球速度に抑えるか、外野への平凡なフライに仕留めてやる。


 仕切り直しで右打席に入り直した鯨路は特に呟かなかった。


 向こうからすると、このチャンスを逃せば次は9回まで打席が回ってこないかもしれない。それだけ気合を入れて集中しているのだろう。


 さてプレートを踏んでから覗き込んだしょーたの要求は。オーケー、それで行こう。


 ランナーを目で牽制しつつセットポジションで静止して。


 そこから軸足を安定させて、いつも通りに右足を踏み出しながら腰で体重を前に移動させて。


 踏み込むと同時に回転運動に変換して、スリークォーターで左腕を振り下ろす!


「うりゃあああっ!!」


「いきなり内角高め……むおああっ!!」


 ズバンッ!!


「ストライク!」


「うおーっ! いきなりすげーストレート! 167キロ決まった〜!!」

「鯨路はいつも通りのスイングなのに振り遅れた?」


 うっしゃ! 初球でカマすことに成功、これで主導権握った!


 対照的に一層集中力を増そうとやや険しい表情の鯨路。


 しかしここはリズム良く投げ込んで相手に余裕を与えない。


 2球目も素早くサイン交換を終わらせて投げ込む!

 

「うりゃあああっ!!」


「今度は外角高め……力勝負かオージロウ! むおああっ!!」

 

 ズバンッ!!


「ストライク! カウント0−2!」


「よっしゃ、鯨路を追い込んだぁ!!」

「なんだよアイツ、ホントにバケモンじゃん」


 ふふふ。両側スタンドの騒然とした歓声が気持ちいいぜ。


 やっぱ試合やるならこれくらい盛り上がる方が、こっちもテンション上がって楽しいよね。


 そして打席にはこれまで対戦したなかでも最強クラスの打者……燃えない方が嘘でしょ。


 だけど次は……おっとそうきたか。


 まあ、この対戦は小細工無用だわな。余計なことをするとかえってリズムを崩して相手に余裕を与える。


 それじゃあ行くぜ3球目!


 左手の指でこれでもかとバックスピンをかけて。


 ビシィッとボールを解き放つ!


「うりゃあああっ!!!」


「ド真ん中……いや高めにノビてくるか? むおあああっ!!!」


 ズバンッ!!!


「ストライク! バッターアウト!」


「キター! 今日最速の168キロ〜!!」

「鯨路があんな高めの釣り球振らされるなんて……選球眼めっちゃ良いバッターなのに」


 今日サイコーのボールが決まった。真ん中から高め、更にボールゾーンまでノビてホップするサイコーのストレートが。


「うーん。ここまでノビるなんて聞いてないよ〜、オージロウくん!」


「悪いな、今日一番のストレートが決まっちゃったんで」


 勝負が終わって苦笑いの鯨路と一言交わす。緊張感が一気に解けて感情が出ちゃったけど、これくらいはいいよね。


 最大の難敵を退けて、あとはサクッと後続を仕留めるだけ。


 次はやや引きつった顔で右打席に入る4番バッター本岡もとおか。悪いが打たれる気がしない。


 まずは初球、内角を攻める!


「うりゃああっ!」


「へへっ、真ん中に入ってきたっす! とあああっ!!」


 バシィーッ!!


 しまった……内角を狙ったつもりがシュート回転して真ん中に!


 打球は左中間を真っ二つ。ホームランにされなかっただけマシか。しかし下手すると一塁ランナーまで帰りそうだ。


 センターの阿戸さんが必死に追ってるけど……やっちまった。


「あ〜、とりあえず1点差だね〜! イテテ!」


 ひざの具合がイマイチの二塁ランナー発条はつじょうが懸命に走ってホームイン。


 そしてすぐ後ろには一塁ランナーの場者ばじゃが迫ってきてる。


「うはは! 同点もらったぜオージロウ〜!」


 クソッ。本岡を侮りすぎた……つい調子に乗った少し前の時間の自分を恨みつつ追いつかれるのを呆然と眺めるしかない。


「そうはさせねえ! しょーた、キッチリ捕れよ!」


 ショートの大岡の声!


 いつの間にか中継までボールが戻ってきてたのか。


 そして深い場所からでも正確な送球ができる大岡は、ワンバウンド……ツーバウンドさせながらもホームで待ち構えるしょーたのミットに向かって速いボールを投げてきた。


「もうボールが返ってきたのかよ! でもなあ、絶対に同点をもぎ取る!」


 気迫のヘッドスライディングでしょーたのタッチを躱すように滑り込む場者。


 球審の判定は……。


「……アウト!」


「ひええ〜! もう少しで危ないところだった!」

「でもセンターとショートが良い送球したぜ!」

「惜しい〜、あとほんの少しだったのに!」


 白熱のクロスプレイを目の当たりにして、スタンドの歓声がとんでもないデカさに……選手同士の会話もしづらいほど。


 しかしオレは大声で殊勲の2人に感謝を言わずにはいられなかった。


「阿戸さ〜ん! それと大岡ぁ! 助かったよ、ありがとうな〜!!」


 阿戸さんはグラブを振って応えてくれた。


 大岡は……。


「まだピンチ終わってねーのに気ぃ抜くんじゃねーよ! しっかりしろやエース!」


 やっぱり怒鳴られた……でもエースと認めて励まして終えるというツンデレっぷりはいつも通りというか、ちょっとほっこりした。


 とにもかくにもランナーはいなくなったし、今度こそキッチリ後続を断たねーとな。 



<あとがき>

いつも読んでいただいてありがとうございます

次回更新は4月22日(火)の予定です

よろしくお願いします

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