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5校連合チームで挑む甲子園 〜160cm台の怪物二刀流、全国を震わせる〜  作者: ウエス 端
3回戦

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第23話 逆転直後の守備

「オージロウ! お前ってヤツは!!」

「目茶苦茶な攻略法で本当にホームラン打ちやがったぜ!!」


 5回裏、オレは青懸巣アオカケス学園のエース伊佐部寺いさべじの必殺スプリットを見切ってバックスクリーンに逆転スリーランを放り込んだ。


 ベースを一周してホームベースを確実に踏んでからベンチを見ると、チームメイトたちが手荒な祝福をしてやろうと待ち構えているのが見える。


 まずは次のバッターである阿戸さんと軽くハイタッチを交わし、そこから恐る恐るベンチへと戻っていく……おっと。


 その前に、兄ちゃん……かもしれない人を追った姉ちゃんは今どこに。試合の方に集中していて任せっきりになってしまったけど……姉ちゃんならきっと。


 アルプス席にはまだ戻っていない。ということは……!


 だが期待感はすぐにしぼんでしまった。


 内野指定席側へと視線を移すと、目に入ったのはトボトボと1人で歩いていく姉ちゃんの姿であった。


 結局、声を掛けることすらできなかったのだろうか。兄ちゃんは共に歩くどころか、発見した席の付近にも全く見当たらない。


 ううっ……トボトボとベンチに入って、しょんぼりと腰をかける。


 あれ、手荒い祝福は?


 しまった。みんなに気を使わせたらしい。どうしよう……そこへ背中をバン! と叩く誰かの手の感触が!


「ゲホゲホッ! 何すんだしょーた!」


「まだ落ち込むのは早いって! 雛子さんのことだから、またオージロウを驚かそうとしてドッキリを仕掛けてるのかもしれないだろ!」


「うん、そうかもしれないね。雛子ちゃんは昔からイタズラ好きだったから。特にオージロウくんに対しては」


「古池監督……そうですね」


 古池監督は兄ちゃんと高校時代のチームメイト、つまり姉ちゃんとも以前から顔馴染みなのだ。オレはサッパリ覚えてなかったけど。


「元気出して早いとこ試合を終わらせようぜ!」

「このまま勝てばさ、お兄さんも喜んで姿見せるかもよ!」


「うん。なんかやる気が出てきた!」


 チームメイトたちの励ましで闘志を取り戻すことができた。この試合、絶対に負けられねえ。


「ストライク、バッターアウト!」


 そうこうしているうちに阿戸さんが空振り三振でチェンジ。低めに強い阿戸さんだが、伊佐部寺の高角度に投げ下ろすストレートになぜかタイミングが合わない。相性って想定通りにいかないもんだな。


 さて、それはともかくとして、ここからちょっとした休憩の時間だ。


 今日はまだまだ気温が高いので、第4試合だが5回と6回の間に設けられた8分間のクーリングタイムを予定通り実施。


 ベンチ裏でアンダーシャツをサッと着替えてから、冷房の効いたクーリングルームでひと息つく。


 ここではドリンクだけでなくシャーベット状のアイススラリーも食べられるし、身体のアイシングも落ち着いてできるのだ。


「あ〜、涼しいっぴょ〜! シャーベットも冷たくて食べるのがやめられない!」

「食いすぎて腹壊すなよ〜。俺は試合の流れが途切れてリズムが狂うから好きじゃねえんだよな、この時間」


 楽しんでる奴もいれば不安を口にする奴もいて、賛否両論ってところだな。少なくともウチの場合は。


 まあ、始まってからまだ何年も経ってないし、まだ試行錯誤の部分もあると思う。


 そしてキッチリ身体を冷やしたオレたちは、終了3分前に部屋を出てストレッチでウォーミングアップを済ませてからグラブを持って守備位置に散らばる。


 さて、逆転した直後の相手の攻撃……ここをキッチリ抑えることで試合の流れを完全に引き寄せたい。


 だけど、そう簡単にはさせてもらえそうにないんだよな。


「まずはホームランで1点差に……どこでも投げてきなよ」


 右打席にはこの回先頭の発条はつじょうが早くも構えに入ろうとしている。


 初回、いきなり初球先頭打者ホームランを浴びせられた恐怖のトップバッター。


 得意ではないはずの外角低めを、しかも立ち上がりにしては力のこもった165キロストレートを猛烈な打球速度のライナーでレフトスタンドに突き刺されちまった。


 そしてあの時と同じく、獲物を狙うような目つきと気迫。


 この難敵にどうしたものかと悩む。どこに投げても打たれそうな気がしてならないのだ。


 ふう。と少し息を吐いて、何気なくアルプス席を見る。


 姉ちゃんは既に席について、相変わらず由香里さんと仲尾さんに挟まれて窮屈そうに、でも静かにこっちを見ている。


 まあ、正直なところ見たからといって何かあるわけでもないのだが。それでもなんとなく心が落ち着いてきたというか。


 それじゃあプレートを踏んで、しょーたとサイン交換をして。


 初球は……内角低め、ボール気味に!


「うりゃあああっ!!」


 ブォン!!


 ズバンッ!!


「……ストライク!」


 空を切る音でなんか凄いのが聞こえたんだけど……空振りしたってことだよな?


 バットは後ろに流れてフォロースルー状態だし。スイングがまともに見えない程の速さに、スタンドも両方がどよめいてる。


 オレの球速は163キロ……今回はコントロールに重点を置いて投げたので、まあこんなもんか。


 少しでもコントロールを誤るとすぐさま持っていかれそうな雰囲気を感じる。もう得意コースとかそういうのは関係なくて、打てると思ったら振ってくる、発条は今そういう状態なんだと思う。


 なので、こちらも最後まで最大限に集中して投げねば。


 2球目は……大胆なリードだな。いや、もっと単純な理由だろうか。


 まあここは素直に信じてそこへ投げよう。こちらに何か策があるわけでなし。


 それじゃ行くぜ、初球より少しだけボールゾーンへ動かしたボール!


 ズバンッ!!


「ボール!」


 うーん、普通に見送られた。ほんの少しボールにしただけなのに。


 さすがにこれ以上同じコースで攻めるのは危険だな。しょーたはどうする……まあそれが妥当かな。


 相変わらずの気迫でオレが投げるボールに全集中している発条からは、その狙い球が読み取れない。


 なので怖さはあるけど、自分のボールを信じて3球目を外角高めに投げ込む!


「うりゃあああっ!!」


 ブォン!!


 ズバンッ!!


「ストライク! カウント1−2!」


「またスイングがまともに見えなかった!」

「でもボールもすげーノビてきて、振り遅れたように見えたけど?」


 ふふふ。初回に打たれたのと同じ球速、165キロ……だがあの時よりもずっとノビるストレートで、遂にヤツのスイングを上回ったのだ!


 と浮かれるのは打ち取ってからということで、4球目はまた内角低めにあからさまなボール球を投げてカウント2−2。


 もちろん次の5球目に勝負をかける……そして必ず三振で仕留める。


 そして勝負球は、しょーたももちろんわかってるコースだ。


 ふうっと息を吐いてからノーワインドアップで始動して。


 右足を力強く踏み出して、スリークォーターで左腕を振り下ろす!


「うりゃあああっ!!!」


 ブォォン!!


 バコォーッ!!


 内角高め、166キロの渾身のストレート……ノビも最高に良くて仕留めたと思ったのに。


 その瞬間、これまでよりも大きな風切り音と共にバットが出てきて、セカンド側にポップフライを上げられちまった。


 まあでも完全に打ち取った当たりだと思っていたのだが。


「うわあ〜! 間に落ちそうです〜!!」


 セカンドのひょ〜ろくくんが後ろ向きに追いかけながら叫んだ直後、まさにセカンドとセンター、ライトの真ん中に打球がポトリと落ちたのだ。


 ちくしょう……内野フライだと思ったのに、あそこまで持っていかれたとは。


「ああ〜、なんとか命拾いしたよぉ〜」


 ファーストベース上で穏やかな顔つきに戻った発条が心底ホッとしたという口調で呟いたのが聞こえてきた。


 つまり発条も勝負は負けたと思っていたということ……こういう幸運、こっちにしたら不運な出塁はイヤな予感しかしない。


 いやいや、気にするのはやめよう。こういうのを幸いというのはなんだが、発条はひざの調子がイマイチでDH起用されている……つまり盗塁は考えなくていい。


 次の2番バッター、左打者の場者ばじゃをゲッツーに仕留めれば済む話なのだ。


「ここで同点ツーラン打ったら俺がインタビュー受けられるかな、うふふ。というわけでオージロウ、さっさと投げてきな!」


 なかなか強気だねえ。2番にこういうバッターを置いてるというのがこのチームの特徴っていうか。


 青懸巣学園は終盤に追い込まれたり延長線に突入しない限りは基本的に送りバントはしてこない。


 エンドランは無くはないが、場者も強打者なので普通に打たせる確率の方が高いはず。


 まあ、それでもランナーには注意を払って……左投手であるオレにとっては丸見えだ。


 リードは小さめだが念のため一度牽制を入れてから、日々の練習の成果で少しずつ速くなってるクイックモーションで初球を投げる!


 ズバンッ!!


「ストライク!」


「うわっ、外角ギリギリに糸引くようなストレートが!」

「あれはちょっと手が出せないな」

「いいぞオージロウ! ここからまた奪三振ショーだぁ!」


 うーむ、期待してくれるのは嬉しいのだが。


 この場面はさっきも言った通りゲッツーを狙っていくから……。


 だがその前に、明らかにインコース狙いの場者に対して外角高めギリギリに決めてツーストライクと追い込んで。


 3球目は、ここに渾身のストレートを投げ込む!


「うりゃあああっ!!」


「外角低め……だが今までより甘えぜ! とりゃあ!!」


 バシィッ!!


 さすがに追い込まれたあとなので、無理に引っ張らず見事なセンター返し。


 だが渾身のストレートに込めた球威で打球を上げさせず、それでも速いゴロでオレの右横を通過していくのだが。


「……あとは任せろ!」


 あらかじめセカンドベース寄りに守っていたショート大岡が難なくキャッチして終わり……。


「うあっ! ボールが跳ねた!」


 マジかよ……◯神園芸さんの神整備が終わった直後だというのに……あり得ないイレギュラーバウンドという不運が続き、あっという間にノーアウト一二塁のピンチ。


 そして迎えるは、青懸巣学園の中心打者で精神的支柱である3番バッター、鯨路げいろ


 抑えるのは至難のバッターだけど……なんとかこの回を無失点で乗り切りたい。




<あとがき>

いつも読んでいただいてありがとうございます

更新時に必ずPVが付いているのは連載の励みとなっております

次回更新は4月20日(月)の予定です

よろしくお願いします

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