↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
13/22

第13話『引退剣士が――環境を守る』

「それ……ダメですよ……そんなの……」


「あれれ? クルルちゃん知ってんの?」



迷惑系配信者のトッピーマンは石を指先でくるくると回す。



「インスピレーショーン! なんか女の子たちの良いリアクション撮れそうだし、この毒素石使って面白い動画にしようってとひらめいちゃったよー! あんたらの責任だよ!」


「ちょ、ちょっと待ってください! 何をするつもりですか!?」


「地底湖へ投げ込んだら、どうなるんだろうなぁ? クルルちゃんも興味あるでしょー?」



みもりが一歩踏み出した。



「毒素石はダンジョンの生態系を壊す危険物です! この地底湖が汚染されたら、毒系モンスターの繁殖源になってしまうんですよ!」


「面白そうじゃん。お、『投げろ!』『ビビんな!』だって。ほらほら、みんな期待してるし。っていうか俺はレベル48だよ? 毒系くらい怖くねぇし」



トッピーマンはみもりの顔は見ず、スマホでコメントを見ているようだった。


本当にこういう奴って腹が立つな。

……せっかくみもりが楽しみにしてた場所なのに。


俺が出て行くしかないか。

いつものローブを持ってきてれば良かったけど……しかたない。



いや――――まてよ。

たしかダンジョンの中で食べる予定のパンを入れていたアレが……。



トッピーマンは地底湖に向かって毒素石を大きく振りかぶる。



「それじゃ、投げまーす!」



――――その声とほぼ同時に。



ドゴォォォン!!



爆発のような轟音が迷宮中に響き渡る。

俺が放った衝撃波で地面が大きく揺れて、トッピーマンは尻餅をついた。



「な……何だぁ!? はぁ?」


「迷惑系配信者……どんどん過激さを求めるしかなくなって、行き着く先は逮捕や損害賠償請求なのがわからないのか? バカか? バカなのか?」


「なんだとぉ!」



俺の姿を見たトッピーマンは、次の瞬間、吹き出しそうな顔になった。


まあ、そうだろうな。

俺は、パン屋の紙袋に覗き穴をふたつ開けてかぶっているのだから。



「そんなバカみたいな見た目してるヤツがバカ呼ばわりするんじゃねぇ!、お前誰だよ!?」


「ただの通りすがりで引退中のクロウ・クロスボーンだ。そういう迷惑行為はやめた方がいいぞ」


「クロウ・クロスボーン? レベル999の?」



トッピーマンは大笑いした。



「クロウの偽物が説教しに来ちゃったよ! さっきのは爆裂石でも使ったのか? クロウだって証明できるのかよ? まじ笑える」


「じゃあ、もう一回だけ」 



発動【剣撃】RANK99+α



俺は地底湖に向かって剣を真下に振り下ろした。



ズバァァァァァッ!!



地底湖が真っ二つに割れた。

左右へ押し上げられた水は巨大な壁となって立ち上がり、湖底が一直線に姿を現す。


その異様な光景は、ほんの一秒。

次の瞬間にはずっと先にある壁に衝撃波が当たる轟音が響いた。


パラパラと落ちる水飛沫を浴びたトッピーマンは目を見開いたまま動けない。



「……うそだろ。いやいやいや、なんかの間違いだろ……リスナーも俺と同じ意見だよな?」



震えながらスマホを取り出して自分のチャンネルのコメントを確認したトッピーマンの顔がみるみる青ざめていく。

俺もスマホでトッピーマンの配信画面を開いた。



“え、湖が割れた”

“SUGEEEEEEEEE!!!!”

“本物だ”

“クロウだよ、トッピー諦めろ”

“マジ? マジ?”

“クロウの声だよな”

“なぜ紙袋……”

“あんな衝撃波クロウ以外無理だし”

“ただの通りすがりで引退中のクロウ・クロスボーンって……ww”

“伝説引いちゃったじゃん”

“クロウ師匠もしかして激おこ?”

“トッピー逃げろwwww”

“トッピーマン終わったw”



このコメントを見てるのなら、さすがにトッピーマンも毒素石を投げ込もうなんて思わないだろう。


だけど、今回だけじゃなく今後の迷惑行為もやめさせた方が良さそうだ。



「コラボしたいんでしょ? 最下層にヤバめのアクアドラゴンがいるらしいから一緒に行こうか。命の保証はしないけど」


「いや……あの……」


「さっきは猫屋クルルとコラボしたがってたよね? 俺ともコラボしようよ? なんでできないの? なぜなぜなぁぜ?」



俺は逃がさないように肩へ手を置いた。



「いや……あの……きょ、今日はもう帰ります! 毒素石は置いていきます!」


「ノリ悪いなぁ。まあ、もう迷惑行為はしないでね。もし次やったら本当に俺とコラボしてもらうから」


「……はい」



トッピーマンは一目散に走り去り、彼のドローンがそれを追っていく。

まあ、これでもう大丈夫かな?



“逃げたwwww”

“ビビってるw”

“さっきまでイキってたのに”

“レベル48さん逃走中”

“トッピーマン鼻水出てるwwwww”

“コラボ行けよwww”

“命の保証しないは草”

“紙袋で全部持ってかれた”

“世界最強の紙袋ww”

“今日の配信、神回じゃん”

“登録者増えるぞ、よかったなトッピー笑”

“一生ネタにされるやつ”

“ざまぁwww”



きっとこの俺の姿はまたネットでミーム化されるんだろうな。

クロウはミーム発生器になってる気がする。


猫屋クルルが深々と頭を下げてきた。



「ありがとうございました……!」


「いや、たまたま通りがかっただけだから」


「この地底湖が汚染されなくて本当に良かったです。ここ、水属性素材の宝庫ですし……何より、この景色が大好きなんです」


「うん、綺麗だよね」



俺は青い光を湛えた地底湖へ目を向けた。

水面は何事もなかったかのように静かに揺れている。


俺はみもりを見た。

みもりは少し離れたところで地底湖を嬉しそうに眺めている。


その顔を見ていたら、俺も少し嬉しい気分になった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。